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けがれた者達の歌 冬景

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冬の季節に書いた 冬の詩と物語の在り処 #雪ん子 #お化けの子 #妖 #柊 #白い狼
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#呟怖

白影法師

白影法師

うつらうつらと

眠くなって…

気が付くと

灰色の薄暗い景色の中に

私は立っている

私は何時も

何も出来ない

ただ

流れる時を眺めてるだけ

時折

私が視える人がいて

避けて歩く人がいる

私は

自分が目を覚ますまで

此処に居るだけの

白い影法師だ

廃村

廃村

今はもう

人が居ない

人が住まう住居が

朽ちて点在するだけの廃村

どの家も

木々や草花に埋もれ

蔦に覆われた家ばかり

もう暗い時間に

此の村の道路を通ると

道路脇の家に居た

老爺の前を

何回も何回も通るんだ

陽が登るまで

此の村から

出る事が出来ない

妖

此の白い仮面の下

見つめる視線があるの
気付いているのか

お前の影に潜み夢に潜り
密かに側をすれ違う

身体に原因の分からぬ
引っ掻き傷に
気付かなかったか?

近頃は僅かな血の味では満足できぬ

此の白い仮面の私と
視線が合ったなら

覚えの無い傷から
血が流れ出てるはずだ

妖

我、封じられし者

暫しの間
眠って居たのだ

あと数日で目覚める者なり

赤目の鬼

赤目の鬼

赤目の鬼①

姿を隠して身を潜めて居ても

どんな暗闇に居ても

此の赤い眼は

赤色のままだ

鬼の隠せぬ赤目

感情のままに

暴走せぬ様に

静かに闇に溶け込んでみせる

今は静かに

鬼は何処にも居らぬと

思う程に…

夜になれば      #呟怖

夜になれば     #呟怖

目に見えぬ者の気配が
足元からする

影の中から
外の様子を伺いながら
何者がの息遣いが
聞こえている気がする

その気配は夜を
待っているみたいで

夜になれば

巨大な闇の者が現れ
足元に居る人間を
見下ろしている

暗い頭上から
闇の者の巨大な目が
人間を見ているのだ

在庫         #呟怖

在庫        #呟怖

見えない人が変に思う

「此処にある在庫
全く減らないよね
仕入れたのに」

見える人が言う

「あぁ!その在庫の上に
居座ってる子が居るから
減らないよ
ずっと居るもの!」

「見えてるの?そんな事ある?」

「あるよ。其の子がいる限り減らないよ」

それ以来
スペースを空け
物を置かなくなった

マンホール

マンホール

夜道で
マンホールを
踏み越え進むと

気のせい…か?

何かの気配がした
気がして
振り返ると

マンホールから
首の長い獣が出て
涎を垂らしながら
此方を
ジッと見ている

足元からは
まだ出て来てない
獣の身体を
引き摺る様な音が聞こえている

妖精の残骸

妖精の残骸

冬籠りの時期に現れる

妖精狩り

其の身体は

余程、美味いのか?

肉片も血も無く

残るのは

骨と羽根だけだ

其の残骸が

無造作に捨て置かれている

迷子

迷子

森の妖精は顔を隠し
あやかしの子の姿に扮し
森に迷い込んだ
人間の子を揶揄う

「僕達ウサギさんだよ」
「ほら足元に蛇が居るよ」
「鬼さん、だ〜れ」
「楽しいねえ」

と、笑いながら
子供が奥に行かぬ様にする

森の奥には
目覚めの悪い
春の精霊が眠っている

春の精霊⤵️

残り火

残り火

手に有る刄は
命を次々と斬り付け
血が錆びになり
骨は刃を綻ばせた

此の身体が

傷だらけになろうとも

骨が砕けようとも

身が腐り悪臭を放とうとも

此の身や骨が
一片でも残る間は
刄を振り続ける

此の身から
血が飛び散り
赤く染まった木の葉が

この地から
消えるまでは…。

黄昏時

黄昏時

朱色の黄昏時
吹雪で薄く霞んだ景色
春を待たずに
腹を減らした者が目覚める

飢えているからか
神経が研ぎ澄まされ
美味しそうな者は匂いで分かる

眠っている間に伸びた爪

空になった腹が

狙った者の
全てを喰い尽くせそうだ

喰い尽くした
次の日は
錆びた赫色の夕日に染まる

赤い森

赤い森

森でズルズルと音がする

何かを引き摺りながら
来るモノが

森の妖精だ

森の妖精が言う

「死にたがっている
人間なんて幾らでも居るだろ
そいつ等を拝借するだけさ」と

引き摺って来た
屍を無造作に
穴に投げ入れた

直ぐに染まった
真っ赤な紅葉は
人の血の匂いがする

赤い花

赤い花

埋もれる事の無い
鮮やかな赤

瑞々しさを纏い
他よりも
輝いて見える

雪にも
染み入る様な赤色

静けさの中に
凛と咲く
艶やかな赤い花