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やさしさが滞りなく流れていくために

前回のnoteでさらっと書いてしまった「30人分のドリンクを先払いいただいた件」このnoteではその背景を、物語を伝えたいです。先にこの話のオチを言うと、最終的には100名分のドリンクが先払いされることになります。逃げBarはいよいよお金不要な逃げ場になりました。

逃げBar White Out店内

まず、本当はこの先払いいただいた方の紹介をしたい気持ちでいっぱいなのですが、本人より「匿名希望」と承っており、言えません。

これは、とあるプロジェクトでデザインの発注をさせていただいたことがきっかけでした。

いつも通り事前にお見積もりをもらい、制作を進めていただき、素晴らしいロゴを仕上げて納品いただきました。

そしていざお支払いをするべく請求書の依頼を出しました。すると「その謝礼額をすべて逃げBarにまわしてください」とのこと。

然るべくクリエイティブには然るべく報酬をちゃんと支払いたいとごねたのですが「寄附をしたい」とのこと。

じゃぁせめてお名前やHPなどPRに繋がるようにクレジットさせてください!と打診したのですが「寄付はできるだけ匿名でしているので」と。

更にはそのプロジェクトの世界へ逃げ込めるようにとご提案いただき、そのプロジェクトにまつわるQRを貼ろうということになりました。

そしてこの画像のように、未来から届いた逃げのチケットができたわけです。

このチケットは逃げBarの店頭に張り出していて、それを持ってくれば誰でも無料で注文することができます。

もって帰って、逃したい誰かにお渡ししても良いです。じぶんじゃ逃げられないけど、だれかが背中を押すことで逃げられることってあるので。

少し大袈裟にいうと、どんな時代にもこういうアンサングヒーローがいて、名は語られずともだれかの記憶にはずっと残っていて、そんな物語も知らないだれかにやさしさが循環して今に繋がっているのだなぁ、と

そういう輪廻の上に逃げBarがあって、じぶんがいて、だからずっとまわしつづけられるように頑張ろうって思いました。

そして繋がる、逃げの贈与

実はこういった取り組みはまだ逃げBarが昼のランチ営業をしていた頃にもやっていて、次の方のランチ代を先払いしておくことができる、いわゆる「カルマキッチン」と呼ばれる仕組みを導入していました。

その頃も何名かの方にランチ代を次の方や、あるいは次の次の次の方の分まで先払いしていただくことがあって、あえてチケットを使ってランチを食べて、そのまま帰ってもいいものの次の方のランチ代を先払いしておくなんてお客様もいらっしゃいました。

コロナの到来をきっかけにランチ営業ができなくなり、夜のみのバー営業になってからはその仕組みもしばらく閉じていたのですが、今回のことで再び思い出すきっかけにもなり、ちょうど実施していたクラウドファンディングの追加リターンとして、このような取り組みを追加してみました。

するとなんと、4名の方に合計7口のご支援をいただき、無料のドリンク券エスケープチケットは更に70枚増えました。

しかも前述の方を含めて合計80枚分はクレジットも無しで、匿名でした。

ということでなんと、何も持たず、身1つで、100名が逃げ込めるようになりました。

世は相変わらず不景気で、楽に生きられている人なんて滅多にいないだろうに、それでも世はまだこんなにも分かち合うことができる、ようなのです。

その事実が何より嬉しい。 

この世はまだ逃げるに値するみたいです。 

なので皆さん、逃げたくなったらいただいた逃げのギフト、ぜひ使ってください。贈って逃すことも尊いけど、使って逃げることもまた尊いので、ぜひ使って、受け取ってください。

お金がなくて、家がなくて、居場所がなくて、困っている人がいたらぜひ教えてあげてください。困っていれば1人何枚でも使っていただいて大丈夫です。ドリンク1杯で閉店まで何時間でもいていただいて大丈夫です。気持ちが落ち着くまで連日店に逃げていただいて大丈夫です。 

逃げBar店内

逃げBarの空間にいるだけで、思考がクリアになる、気持ちが落ち着くという声をたびたびいただくので、たぶんただいるだけでも、少し楽になると思います。

棺桶もあるので、この中に閉じこもってみて、死後の世界から今を内省してみるのも良いかもしれません。

白葬を使えば貸切でセルフ生前葬をすることもできます

最近は季節の変わり目や、決算期ということもあってか、周囲で過労や心労の声が日々聞こえててきます。本当にやばくなった時はもう逃げる気力も失せている場合があるので、どうかやばくなる前に早めに逃げてください。これはある種の義務として。慌てず、冷静に、能動的に逃げて参りましょう。

逃げBarは今回いただいた100枚の逃げを大切に、大切にまわしていきます。
クラファンは合計171名の方にご支援いただき、本当に多くの方のお陰で存続することができています。

ご支援いただいたの中には気軽に逃げては来れない遠方の方もいて、御礼のご連絡をしたところこんなお返事をいただきました。

“どうしても逃げたくなったとき、わたしには行く場所がある” と思えることは、じつはじわじわとわたしたちの支えになっているなと今回、心から思いました。(中略) 受け入れてくださる場を、この世界に作ってくださってありがとうございます。

その他にも数々の心温まる応援コメントをいただきました。

逃げBarがあることで救われています。ほんの少しのお返しですが、いつまでも応援しています。

知人のSNS投稿から、今日はじめて逃げBarを知りました。私もこれまでの人生、たくさん逃げ続けた結果、今の幸せがあります。逃げることを悪だと思わず、自分が求めるものに向かう然るべき道だと、逃げを肯定できるしなやかな人が増えてくれたらいいなと思います。
この世界で一番やさしい場所が守られますように。微力ながら応援しています。

『どうか、あの一画をのこしたい。』
『あの場所は、まだまだわたし達には、必要だ。』
そういう音がこだまして、世界をふるわす響きとひろがることと感じます。
必要なんだ。
切なる響きがこだまします。
どうぞ、そのひと滴とならんことを。

みんなの逃げ場として、可能な限り応援していきたいです。
関わってくれている全ての店長さん、逃主さん、いつもありがとうございます。

ささやかながら応援させていただきます!
素晴らしい活動をずっと続けていてくれて、ありがとう。

今は私も苦境に立っているのでお互いに頑張って行きましょう

逃げbarの取り組み、とても共感いたしました。
私自身も誰かが逃げたい時、ほっとできる宿木のような存在になれるよう、歩みたいと思っています。
応援させていただきます。
一緒に優しい世界を創っていけたらいいですね。

本当はぜんぶをご紹介したいところですが、一部抜粋をさせていただきました。

クラファンをする度に思うのですが、ご支援いただいている方の中にはむしろその方の方が支援が必要なことがあって、むしろ経済的にちょっと苦しそうな人ほど、支援をしてくれているのです。

ありがたいのですが、なんとも複雑な気持ちにもなります。
日々使うものなので忘れがちですが、お金は気持ちの受け渡しであって、今では親指を何回か動かすだけで数字が動き、商品と対価の交換が成立しますが、本当はもっと交歓できる営みで、いただいて、ささげられるものなのだと思います。

クラファンでのお金の動きは、そんなことを思い出させてくれるきっかけにもなっていて、ただ数値の変化があっただけではなくて、ちゃんといただくことができているかどうか、自分の胸に問いただしながら、ご支援を噛み締めています。

この恵み、流れを、今度は自分が、逃げBarがどこにどうやって流せるか、鳥の視点からこの社会を1つの生命体のように見つめて、考えます。僕らは1つの生命体で、ヘモグロビンでもあって、血液サラサラで滞りなく全体に行き渡った方が、健やかで、調子がいいはずです。

これからも逃げBarでは「逃げ」と社会を繋いでいきます。

逃げることは恥でもなければ後退でもない、退化でなければ負けでもない。僕らを僕らたらしめる行為として尊重して、普通に選択できる選択肢としてパブリックとリレーションしていきます。

遍く人々の逃げ場として開き続け、やさしさが滞ることなく循環し続けられるための舞台装置として、機能し続けます。

PS.
エスケープチケットの仕組みは店内とオンラインの両方で常にご寄付いただけるようにしました! 逃げたい時は花束を受け取るように遠慮なく使い、ちょっと余裕がある時は受け取った方が羽ばたく姿を想像しながら贈っていただけますと幸いです。

エスケープチケット特設サイト: https://www.nigebar.com/escape-ticket


逃げBar White Out
https://www.nigebar.com/

「こんな未来あったらどう?」という問いをフェスティバルを使ってつくってます。サポートいただけるとまた1つ未知の体験を、未踏の体感を、つくれる時間が生まれます。あとシンプルに嬉しいです。