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トップ固定記事・2023年までのまとめ

ここでは2023年のアップデートを中心に今までの流れをまとめています。
2022年までのまとめや、免疫学の基礎知識については下記を先にご覧ください。

核酸ワクチンと自己免疫疾患について

核酸ワクチンの接種から、これまでずっと一貫して訴えている重要な問題は核酸ワクチンによる自己免疫疾患リスクの上昇である。核酸ワクチンはその特有の分子生物学的機序と免疫活性化機序によって明らかに他のワクチンモダリティとは異なる危険性を有している。これは初期の記事からずっと説明している通りである。

実際に昨年も多くの研究が、核酸ワクチンの自己免疫疾患リスクについて言及している。PubmedでRNA vaccine autoimmuneなどと検索すると多くの論文がヒットすることは以前説明した通りだが、興味深いものはこのブログでもいくつか紹介してきた。

当初はこのテーマの論文は症例報告が多かったのだが、昨年はより発展的な研究も見られるようになってきている。そして、核酸ワクチンに特有のリスクは明確に示されていると言っていいだろう。特にあらゆる細胞において、細胞内抗原がMHC-Iに提示されるという通常のワクチンでは起こり得ない現象は、あらゆる組織に対してのCD8T細胞活性化を引き起こし、臓器特異的自己免疫反応の引き金となる。上記最後の論文などは、症状が無くても核酸ワクチン接種によって心筋に炎症が生じている可能性を示しており、長期的なリスクを甘く見ることがどれほど危険か理解させてくれる。心筋炎や自己免疫性肝炎を始めとする臓器特異的自己免疫反応は核酸ワクチン特有の明白なリスクだと考えて間違いない。

リスクベネフィット比較・新型コロナウイルスの危険性について

上記の様な核酸ワクチン特有の炎症性リスクは、ワクチン推進派も否定出来なくなってきている。一方で、その様な連中は常に「リスクベネフィット比較」を訴えている。それ自体は間違いではないのだが、リスクベネフィット比較に用いる理論が根本的におかしい場合が殆どである。彼らは「新型コロナウイルスによる心筋炎のリスクはワクチンより大きい」「新型コロナウイルスによる炎症性疾患のリスクはワクチンより大きい」ということを理由にワクチンが有効だと訴えるが、これは誤謬を含んでいる。その内容自体は正しいのだが、リスクベネフィット比較の場合は新型コロナウイルスに感染する確率を感染後のリスクに掛け合わせなければならない。なぜなら核酸ワクチンを接種するという事象は(希望するなら)100%の確率で起こるからだ。そして、大前提として新型コロナウイルス(に限らずあらゆるウイルス)の炎症性疾患発症リスクはそもそも徹底して回避すべきものであり、感染対策を徹底するというのは自己免疫疾患予防の観点から言っても当然のことなのである。また、後述の通り、神経系感染や神経系症状に対しては尚更であり、新型コロナウイルスに対する大前提の対策は感染防御の徹底である。そしてリスクベネフィット比較に際してはその前提を踏まえての議論が必要であり、感染対策を徹底している条件下においては明らかに核酸ワクチンのリスクはベネフィットを上回るのだ。

さて、いつも言っていることだが、新型コロナウイルスに関する最大の問題点は神経系感染・神経系症状である。これに関する研究や情報も多くまとめてきたが、新型コロナウイルスは明らかに他とは異なる神経系関連の特徴を有するウイルスである。そもそも私は新型コロナウイルス出現当初から神経系感染のリスクを訴えていた。それは分子生物学的に明らかな特徴があったからである。最初に戦慄したのは新型コロナウイルスのSタンパク質が神経や血管に多く発現するタンパク質「NRP1」に結合することが示唆された時だ。私はその報告の時点でこのウイルス最大の危険性が神経系感染にあると確信し、自分自身においても感染対策を最大レベルに強化したのだ。その後、実際に機序としてのNRP1を使った細胞への感染(Science 2020, 370, 856–860. など)やin vitroでの神経細胞への感染は多く証明され(Lancet Microbe 2020, 1, e14–e23.;Cell Res. 2020, 30, 928–931.など)、実際の臨床における神経系症状の多さも相まって、そのリスクはほぼ確実となった。私を含め、賢明な者は2020年の時点で新型コロナウイルスの危険性を正しく認識し、そしてそれは今も全く変わっていないのだ。

新型コロナウイルスと神経系症状

新型コロナウイルスと神経系に関する研究もこの1年で更に進んできている。このブログでも多くの研究を紹介してきた。

新型コロナウイルスの神経系に対するリスクは次々と明らかになってきている。殆ど調べられていないからデータが少ないだけで、中枢神経系感染を調査した多くの研究で、脳組織や髄液からのウイルスRNA検出が報告されていることから、実際には相当な割合で中枢神経系感染、最悪の場合は潜在性持続的感染が生じていると考えるべきだろう。また、脳のMRI検査によると呼吸器症状の程度に関係無く、中枢神経系への影響が出ていることも伺える。またオミクロン株の研究も進み、呼吸器症状が弱くなった変異株でも神経系症状が弱くなっているというデータは出てきていない(むしろ神経系の影響の方が出やすくなっている?)。総じて、新型コロナウイルスは神経系に感染する能力を持つ明確に他の多くのウイルスとはことなる病原体である。そして、神経系感染に対してはT細胞やB細胞による獲得免疫応答は殆ど意味をなさない。中枢神経系は免疫特権器官だからである。実際にワクチンによって神経系症状は基本的に防げないというデータが多く存在する。

これは神経系感染を防ぐためには粘膜上での「感染そのもの」を防ぐ必要があるのに対し、実際の獲得免疫応答で防いでいるのは「ウイルスの増殖」であるという違いが原因である。本当の意味での「感染防御」には粘膜上におけるIgA産生が必要となるが、核酸ワクチンでは粘膜IgAが十分に誘導されないことが示されている。そのため、現在のワクチンで見られる有効性というのは「ウイルスが侵入した後の増殖を防ぐために、見かけ上感染がしにくく見える」というものなのだ。その為、実際の有効性については「重症化」に焦点を当てる場合が殆どであろう。

正しい感染対策

つまり、新型コロナウイルスの危険性に対して現状唯一の手段は徹底した感染対策ということになる。その他の方法では新型コロナウイルスのリスクは排除されない。最後に、適切な感染対策に関して過去の記事をまとめておこう。

そして、その条件下においては核酸ワクチンのリスクはベネフィットを上回る。「新型コロナウイルスは危険」だから感染対策をする。「核酸ワクチンは危険」だから、リスクの方がベネフィットを上回るなら回避する。これは論理的に明確な真実である。

これらを否定する者は「新型コロナウイルスは呼吸器症状さえ出なければ神経系への影響なんてどうでもいい」という無知蒙昧、「新型コロナウイルスが怖いけどワクチンで対策できる」と考える無知蒙昧、「核酸ワクチンは安全」という大いなる愚昧、「感染対策なんてやりたくない」という自己中心的で低俗な存在、そういった者達であろう。正しい科学的知識と理解があれば、上記の理論は当然に導かれるものだからである。また、一部の利害関係を持つ者は「どうせ一般人は難しいことを理解出来ないし感染対策もしないからワクチンを打たせればいい」と考えている。これは最早科学とは関係無い、政治や経営、社会の話である。私は賢明な人間は常に科学的真実のみに傾倒し、事象や状況を理解し、適切に行動を選択するべきだと考える。ここでは賢明な読者諸氏の一助となる情報を提供し、一人でも正しい科学的判断を行える人間を増やしたいと考えている。

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