新型コロナ感染した1年後、56%に後遺症あり
表題・下記の記事において、Long-COVIDに関する大阪公立大学の研究が紹介されている。国内の研究という意味でも、参考になるだろう。
この研究は既にScientific Reportsに掲載されている(Sci Rep. 2022 Dec 27;12(1):22413.)ので、そちらを参照すれば詳細を知る事が出来る。
対象者のうち半数以上(56%)の人に、少なくとも 1 つ以上の後遺症状が残っていることが明らかとなりました。無症状者や軽症者では、倦怠感や抜け毛、集中力・記憶力の異常、睡眠障害が多く残り(10%以上)、比較的重症の人では、倦怠感、呼吸困難感、味覚障害、抜け毛、集中力の異常、記憶力の異常、睡眠障害、関節の痛み、頭痛が多く残っていた(10%以上)ということです。 つまり、『倦怠感』や『味覚・嗅覚の異常』『抜け毛』『睡眠障害』などは、新型コロナウイルスに感染した際の重症度と関係なく後遺症状が残ってしまう可能性があることが明らかになったとしています。
記事から転載したものだが、同時に上記が論文の概要となる。今回の論文で確認された事の中で重要な点は(ずっと神経系感染の危険性を訴えている私からすれば当たり前の事だが)、神経症状は重症度と関連が薄いという点である。論文でも喀痰、胸痛、呼吸困難、咽頭痛など一般的に皆が気にする呼吸器症状などに関する長期的影響は重症度との相関が強いのに対して、記憶障害や頭痛、認知障害、不眠などは重症度とも、何なら年齢とも相関が薄い。つまり、一般人が考える「症状」が弱くても、呼吸器症状についての重症化リスクが低くても、「神経系感染」や「神経系症状」は全く別の問題だという事が分かる。
重要な事なので何度でも言っておこう。下記に示した通り、新型コロナウイルス最大の危険性は「神経系感染」する能力を獲得している事である。
これは他のウイルスとは明確に異なる危険性であり、このウイルス最大の脅威なのだ。それに加えて、中枢神経系に対しては基本的に獲得免疫応答が無効であり、ワクチンなどの効果は極めて限定的になる。事実として中枢神経系症状に対してはワクチンの効果が殆ど見られない事は過去の記事で紹介した通りだ。
また、最近はウイルスが長期に残留しているという研究も進んでいるが、事実として呼吸器系でウイルスが検出されなくなったとしても(一般にはこの検査で陰性とされる)、他の臓器にウイルスが残っていて、後々に検出されるという事例は存在する。中枢神経系に関しても同様である。調べるのが極めて困難だから大規模に調べられていないだけで、中枢神経系についてウイルスの残留を調べた事例ではかなりの割合で検出されている。後遺症の残る割合などを踏まえても、2桁%以上は中枢神経系にウイルスが残っている可能性を危惧すべきだ。事実として、今回の研究でも、呼吸器症状の後遺症に比べて中枢神経系症状の後遺症は回復に長い時間がかかっている(または1年以上かかって治っていない)事が分かる。つまり、ウイルスが残り続け、神経系症状が全く回復しないという事象が十分あり得るのだ。他のウイルスの事例を踏まえれば、中枢神経系に残ったウイルスが体内の免疫状態の変化に起因して再度末梢で増殖し、呼吸器症状を再発するというケースも考えられる。この様な現象が全て明らかになるのは10年以上の研究が必須であり、現時点で新興ウイルスの危険性について楽観視する事は全く得策ではない。ましてや、これだけ分子生物学的に明確な機序が提示できる事象については。
一般人は呼吸器症状が弱くなって致死率が低ければ問題無いと勘違いする。もっと愚かな集団は中枢神経系症状が精神的要因によるものだと思いたがる。そこまで科学的事実を押し曲げて自身の欲求に忠実に生きようとするのは逆に凄いと思うが、この様な集団はこのウイルスに対する正しい対策を模索する上で最も危険な集団である。
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