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記事紹介:新型コロナ後遺症、主因は「迷走神経」の損傷か

今日は表題の記事を見掛けたので論文と併せて紹介しよう。
記事は以下のものである。

また、この記事で語られている元の論文は恐らく以下のものである。

「Vagus Nerve Dysfunction in the Post-COVID-19 Condition」
(Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=4479598

これはPreprintだが、調べてみると以前から類似の話は複数あるようだ。興味があれば色々見てみるとよいだろう。

さて、本題に入るが、記事では新型コロナウイルス後遺症の要因として「迷走神経の損傷」を提示している。迷走神経は中枢(いわゆる脳)と末梢の組織を繋ぐ重要な神経経路であり、さまざまな末梢器官に広く分布して循環器系、消化管系を始めとして多くの機能を司っている。その分布は複雑であり、それ故に「迷走神経」と呼ばれている。副交感神経を司る主な神経経路であり、関連する生理機能において重要な意味を持っている。また近年では、迷走神経が末梢の器官の制御だけではなく、精神疾患症状と関連することも示唆されている。

詳細は記事の内容に譲るが、これらの研究では新型コロナウイルス後遺症の大部分が迷走神経に関連した症状であることや、それらの後遺症患者では神経炎症に起因すると思わしき迷走神経の異常が認められたとしている。記事では呼吸器症状であっても肺による損傷より迷走神経の異常が関連しているだろう事も示唆されており、思った以上に新型コロナウイルスによる神経系の異常は重大な問題なのであろう。

私は新型コロナウイルス感染拡大の最初期から一貫してそのウイルスの最大の危険性として神経系への影響を訴え続けてきた。論文などをきちんと追っていればその可能性を危惧するのは当然だったからだ。そして、その長期的影響こそが新型コロナウイルス感染最大のリスクであり、感染対策を徹底すべき最大の理由なのだ。記事の終わりにも以下の一文がある。

迷走神経に刺激を与えることが全身に起きる炎症の抑制につながるとみられることは、すでに以前から報告されている。だが、この神経が受けた損傷が長期的にどのような影響をもたらすかについては、ほとんど明らかにされていない。

大事なことなので何度でも繰り返すが、新型コロナウイルスの神経系への影響はこのウイルスに特有の変異に起因しており、それらはワクチンで防ぐことも難しい。徹底した感染対策だけがこのリスクを下げることができる。呼吸器症状が弱まったからと言って、神経系へのリスクは全く下がっているという証拠がない。むしろ神経系へのリスクは上がっているとすら見える。今一度これらの事実を確認し、各自で適切な対応を考えてもらいたい。

一方で、迷走神経の異常が後遺症の大半を説明する機序であれば、迷走神経に対する治療法が後遺症の改善に繋がる可能性がある。この様な基礎的な機序の研究が進む事は非常に重要である。個人的には中枢神経系への直接的な感染が否定出来ない以上はそれが最大の問題であると考えているが。いずれにしても、新型コロナウイルスの感染拡大が問題にならない状況に至る為には、これら神経系症状の解決が必須である。

(参考)


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