見出し画像

論文紹介:核酸ワクチンの長期的な影響

今回は核酸ワクチンの長期的な副作用に関する研究を紹介しよう。論文の情報は以下の通りである。

「Delayed adverse events following COVID-19 vaccination in patients with systemic sclerosis and other autoimmune diseases: a substudy of the COVAD-2 cohort」
(Rheumatol Int 2023 Sep 15. doi: 10.1007/s00296-023-05441-z.)

この論文では特に全身性硬化症(SSc)患者における遅発性有害事象(ワクチン接種後7日以上経過してから発生するもの)について焦点を当てている。全身性硬化症・強皮症は自己免疫反応が原因と考えられる難病の一種である。機序や症状も複雑であり、全身性の自己免疫疾患の類だと言われている。

COVID-19ワクチン接種の短期安全性に関するデータは、さまざまに調査されてきているが、長期的な悪影響やその特徴は十分に明らかにされていない。この研究では、2022年に実施された2回目のワクチン接種調査のデータを用いて、SSc患者、その他の全身性自己免疫疾患・炎症性疾患(SAIDs)患者および健常対照者(HC)におけるCOVID-19ワクチン関連の遅発性有害事象を分析している。

この試験は、2022年2月から6月にかけて実施された横断的、患者自己報告のグローバルe調査である。人口統計、SSc/SAIDの疾患特性、COVID-19感染歴、およびCentre for Disease Controlが定義する遅発性有害事象を含むワクチン接種の詳細に関するデータが取得され、分析されている。17,612人の回答者のうち、COVID-19の完全接種を受けた10,041人が解析の対象となった。このうち2.6%(n = 258)がSSc、63.7%がその他のSAIDs、33.7%がHCであった。最も多く接種されたワクチンはBNT162b2ファイザー(69.4%)、次いでmRNA-1273モデナ(32.25%)、ChadOx1 nCOV-19 オックスフォード/アストラゼネカ(12.4%)であった。

SSc患者では、18.9%が軽度のADEを報告し、8.5%が重度の遅発性ADEを経験し、4.6%が入院を報告した。これらの頻度は、他のSAIDs患者およびHCが報告したADEと同程度であった。しかし、SSc患者はHCよりも呼吸困難の頻度が高いと報告した[OR 2.3(1.0-5.1)、p = 0.042]。呼吸困難はSScの特徴的な症状のひとつでもあり、疾患に応じた症状の悪化が引き起こされている可能背がある。

びまん性皮膚SSc患者は、限局性皮膚SSc患者よりも軽度のADE[OR 2.1(1.1-4.4), p = 0.036]について頻度が高く、特に疲労[OR 3.9(1.3-11.7), p = 0.015]をより頻繁に経験した。また、筋炎を合併した全身性硬化症患者は、SSc単独の患者よりも筋肉痛の頻度が高く[OR 3.4(1.1-10.7), p = 0.035]、甲状腺疾患を合併した患者は、SSc単独の患者よりも関節痛[OR 5.5(1.5-20.2), p = 0.009]、めまいの頻度が高かった[OR 5.9(1.3-27.6), p = 0.024]。やはり特徴的な症状について炎症の促進が悪影響を及ぼすという可能性が考えられるのではないだろうか。

総合的にSScについては、他のSAIDsおよびHCと比較して、COVID-19ワクチン関連の遅延有害事象リスクを高くはしなかったが、びまん性の皮膚表現型および筋炎や甲状腺疾患を含む自己免疫疾患の併存は、軽微な有害事象のリスクを増加させる可能性があった。筆者らは、これらの患者についてワクチン接種前のカウンセリング、綿密なモニタリング、およびCOVID-19ワクチン接種後の適切なケアの早期開始が有益であると考えられるとしている。

今回の研究では、ワクチン接種者のみを対象としているため、例えばワクチンを接種しない場合と比べて同じ様な自己免疫疾患患者においてどの程度の差があるかということは不明である。シンプルに言えば、それぞれの患者についてワクチンとは関係無く悪化した頻度が結果に現れている可能性もある。ただし、今回の様に長期的な悪影響を様々に評価している研究は始まったばかりであり、特に本研究の様な自己免疫疾患を中心とした長期的影響の評価は今後も継続されるべきであろう。以前から繰り返して述べている通り、核酸ワクチンによる免疫バランスの崩壊は特に炎症性疾患の高リスク群において長期的に発症・悪化の積み重ね原因の一つになり得る。その点を正しく認識し、長期的影響を懸念しなければならない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?