見出し画像

記事紹介:新型コロナに感染すると「高血圧」のリスクが上がる

今日は新型コロナウイルス感染と高血圧の関係について考えてみたい。最近の記事で下記の様なものを見掛けた。

記事では『Hypertension』という学術誌に掲載された研究から、新型コロナウイルス感染者とインフルエンザ感染者を比較して、長引く非常にやっかいな高血圧を発症することを紹介している。元の論文は恐らく以下のものである。

「Incidence of New-Onset Hypertension Post–COVID-19: Comparison With Influenza」(Hypertension. doi:10.1161/HYPERTENSIONAHA.123.21174.)

大前提として、新型コロナウイルスと高血圧の関係は早くから指摘されている。新型コロナウイルスの感染受容体はACE2というタンパク質であるが、このACE2は血圧に関係が深い分子でもあり、様々な視点から考察が進んできた。ACEとはアンジオテンシン変換酵素の略であり、ACE1という分子は血圧を上げる物質のアンジオテンシンIIを生成して高血圧を誘導し、ACE2はこれを分解して血圧を下げる機能を持っている。一般的な高血圧に対する薬としてACE阻害剤が多く用いられているが、これはACE1を阻害して血圧を下げるために使われている。新型コロナウイルスやそのSタンパク質がACE2に結合して細胞内に侵入するということは初期から分かっており、
①高血圧やそれに対する薬の作用、ACE2の発現量などの関連とウイルス感染の関係
②ACE2にウイルスやSタンパク質が結合することによるACE2発現・機能や血圧との関係
というのは当然ながら興味を持たれるテーマとなっていた。詳細は省くが、ウイルス感染そのものとACE2の機能などについては大きな影響として報告されている状況ではないように思う。一方で、ウイルス感染による結果としてン高血圧はこの記事でも紹介されている様に、実際の症状として報告されている。

記事でも「新型コロナ感染者で新たに「高血圧になりやすい人」が増える理由は正確にはわかっていない」とされている。推測として、「新型コロナウイルスが血圧を調整するホルモン系を刺激して、高血圧になるのではないかと私たちは推測しています」という仮説が述べられている様だ。この血圧を調節するホルモン系というのは言うまでもなく自律神経の事である。以前の記事でも、新型コロナウイルス感染症と自律神経の一部である迷走神経異常の関連を書かせてもらっている。

繰り返しになるが、新型コロナウイルス感染最大のリスクは神経系の異常である。仮に血圧の異常が血管系への直接的な障害だけでなく神経系への異常にも起因するのであれば、やはり長期的影響に関する危険性の考察はより慎重に行われなければならない。また、記事では「仮説」としてワクチン接種による予防効果を期待しているが、これも何度も繰り返している様に神経系への影響が主体であればワクチンの効果は限定的と予想できる。また、Sタンパク質そのものの影響があれば、それは感染とワクチン共通の機序として考える必要もあるだろう。一応、ワクチンの種類を問わず短期的に高血圧になる症例はあるらしく、その様な機序についての考察もなされている(Eur J Intern Med. 2023 May; 111: 27–29.など)。まだまだ分からない事の多い新型コロナウイルス感染症であり、その変異の繰り返しは常に最新の情報を追う必要性を高めている。少なくとも確実に有効な対策は基本的な感染症対策の徹底であり、それこそがあらゆる点で最善かつ賢明な行動である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?