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総説紹介:mRNAワクチンの潜在的なリスクについて

私は以前から核酸ワクチンの持つ分子生物学的特殊性と、それによる免疫系の異常な活性化や免疫疾患リスクについて述べてきた。これは「まともな免疫学者」なら誰でも思い付くべき「潜在的かつ論理的なリスク」であり、それについてのまともな検証が長期に渡ってなされるべきであるというのは言うまでもない。

さて、今日は私と同様に核酸ワクチンの分子生物学的特殊性を考察し、それが有する潜在的リスクについて考察・総説したレビューを紹介しよう。専門的な内容ではあるが、細かい実験の報告などをまとめながらそれなりにまとまっているので勉強したい人は読んでみると良いだろう。

参考の文献は下記の通りである。
「Potential health risks of mRNA-based vaccine therapy: a hypothesis」
(Med Hypotheses. 2023 Jan 25;111015.)

著者らによると、mRNAの生体内分布、細胞への取り込み、エンドソームからの脱出、翻訳速度、機能的半減期、不活性化速度、異なる細胞種におけるワクチン誘発抗原発現の速度および時間に関する研究は発表されていないとされている。これらの中で免疫学的観点から私が特に重要視するものは「エンドソーム脱出」である。ウラシル修飾合成RNAが自然免疫活性化をしにくいという理論はエンドソーム上に於けるTLR認識を回避しているからというのが一つの機序であるが、翻せばエンドソーム脱出後に細胞質内に於ける核酸認識受容体に関しては研究が不十分なのだ。と言うか、基本的にはそれらの核酸認識シグナルを活性化するとされている。本文にもあるが、RIGなどの核酸認識受容体が活性化し、I型インターフェロンを産生するなど強い免疫応答が起こる事は明白なのだ。この様な「核酸ワクチン独自の免疫活性化」は常に免疫疾患の潜在的リスクとなる。

また、本論では核酸分子の細胞内クリアランス能の個人差を踏まえ、遺伝子への影響についても触れている。個人的にはこれがどのくらいの頻度で起こるリスクなのかは疑問だが、要旨を訳すると以下の様に述べている。

さらに、治療用合成mRNAがゲノムに統合される可能性はないとされているにもかかわらず、ワクチンmRNAとトランスフェクト細胞のゲノムとの相互作用を調べた最近の研究は1件のみで、内因性レトロトランスポゾンであるLINE-1がmRNAの細胞への侵入後に沈黙し、完全長のワクチンmRNA配列の逆転写と核侵入に至ることが報告されています。この発見は、合成mRNAに起因するエピジェネティックおよびゲノム修飾が生じる可能性を考慮すると、安全性に関する大きな懸念となるはずです。

この様なクリアランスの問題も踏まえ、免疫の活性化と免疫疾患リスクについて以下の様に続く。

我々は、感受性の高い個体では、ヌクレオチド修飾合成(nms-mRNA)の細胞質クリアランスが阻害される可能性を提案します。nms-mRNAが細胞質内に持続的に存在すると、内在性のトランスポゾーン(TE)が活性化され、mRNAの一部が逆転写されます。nms-mRNAと逆転写されたcDNA分子の細胞質への蓄積は、核酸認識経路を活性化することに加え、活性化されたTEも、非自己の核酸に対する自然免疫応答を活性化し、強力にI型インターフェロンと炎症性サイトカインの産生を促し、これが制御されないと自己炎症と自己免疫状態を引き起こす。

ついでに先に述べた様な遺伝子への影響が考察されている。

一方、活性化されたTEは逆転写分子の挿入変異誘発のリスクを高め、コーディング領域を破壊し、腫瘍抑制遺伝子における変異のリスクを高め、持続的DNA損傷を引き起こす可能性があります。そして、感受性が高い人は、DNA損傷、慢性的な自己炎症、自己免疫、および癌のリスクが高まることが予想されます。

そして、最後の段落が著者らが言いたい事の全てだろう。

現在、nms-mRNAワクチンの大量投与が行われていますが、合成mRNAの細胞内への取り込みによって始まる細胞内カスケードと、これらの分子事象の結果について十分に理解することが不可欠かつ緊急の課題となっています。

これは私もそう思う。核酸ワクチンは、既存のワクチンと比較して「明確に異なる分子生物学的特殊性」を複数有しているのは確固たる事実なのだ。それを無視して安全性やリスクベネフィット比較の議論をする事は愚の骨頂なのである。私が多くの人に望むことは、「科学的に核酸ワクチンの分子生物学的特殊性を理解する」ことと、その為に必要な知識を身に付けてもらうことである。それによって少しでも良い世界になることを祈っている。


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