足利尊氏へのタブー視

室町幕府の開祖、足利尊氏(1305-1358)。

知名度が高いわりに、フィーチャーされることが少ない。

やはり、後醍醐天皇(1288-1339)を裏切った「朝敵」というイメージが強いからだろうか。

 

その昔、歴史学者の辻善之助(1877-1955)は、論文「足利尊氏の信仰」(1917)で尊氏擁護論を展開した。

それが後に、右翼の蓑田胸喜(1894-1946)らに攻撃され筆禍事件に発展している。

さらに遡れば、江戸後期の尊皇主義者・高山彦九郎(1747-1793)は尊氏の墓をムチ打ったとされる。

 

このようなことが、今でも起こらないとは限らない。

蓑田や高山のような、戯画的なほどファナティックな右翼は今どき居ないだろうが。

 

 

【参考文献】

池田智文「近代「国史学」における辻仏教史学」『日本思想史学(49)』日本思想史学会、2017

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