夜野綾

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夜野綾

朗読・音読に利用できる作品を投稿中です。本文は全文無料で公開中です。100円は差し入れ用となっております。 利用する際は、規約をご確認ください。 https://lit.link/humiomatsuyo

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記事一覧

言の葉の剣 第3話

 外は夜が始まっていた。明るい街の中を人々は思い思いに歩いている。  どうしよう。  帰らないといけないのはわかっている。母さんも心配しているだろうし、何も考えず…

夜野綾
9か月前
1

言の葉の剣 第2話

 警察署の廊下に座って、オレは天井を見上げていた。  悲しみに唇を引き結んだ人々が慌ただしく広い講堂に入っていく。ドアが動くたびに中が見える。そこには死が満ち、…

夜野綾
9か月前
1

言の葉の剣 第1話

 電車の外には、5月なのに気の抜けた青空が広がっていた。  あ~、海に行きたい……。  ありきたりのことを考えてから、オレは視線を電車の中に戻す。日曜日の午前中、…

夜野綾
9か月前
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言の葉の剣 あらすじ

5月の日曜、美園樹殊波は電車で塾に向かっていた。サボらないのは好きな春島美祝が一緒だからだ。殊波は隣の青年の本に気を取られ、青年は本を渡して降車する。直後に電車…

夜野綾
9か月前

教会

 教会に辿りつけない。  彼は窓の外にぼんやり目を向けた。ホテルの窓からは石造りの街並みが見渡せる。教会の尖塔は街の真ん中に、壊れたベッドのスプリングのように突…

100
夜野綾
10か月前
2

新しい鯨骨生物群集、現在配信中です。よろしくお願いします。
今回のテーマは「運」。

セブンイレブン/46276503(~7/10 23:59)
ローソン,ファミマ/B9X423A7N7(~07/24 19時頃)

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夜野綾
1年前
1

お支払いには電子マネーもご利用いただけます。

 そういやあんた、聞いた? ノキさんとこの旦那さんが、夢に手を出したって。いやいや、ほんとさ、最近色々あったからねぇ。え、どこで夢が手に入るのかって? それがさ…

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夜野綾
1年前

二度寝しない方がいいよ。(全文無料)

 朝の誰もいない教室で見知らぬ少女が私に向かって手を伸ばす。握られた手の平がゆっくりと開かれる。手の平の上に何かがある。柔らかく小さく温かく甘い。その何かが何で…

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夜野綾
1年前
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さざんか (全文無料)

 さざんか さざんか さいたみち  恭一は振り向いた。今すれ違った女性。赤いセーターの背中が遠ざかり、垣根の向こうを曲がるところだった。黒く長い髪が名残のように…

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夜野綾
1年前

なでしこ (全文無料)

 彼女は高校時代から、なでしこのような人でした。秋の七草に数えられるなでしこ。「可憐で貞淑」。簡単に手折れそうな肩と柔らかい頬の線を、私は愛しました。綺麗に結い…

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夜野綾
1年前

向日葵 (全文無料)

 向日葵の首を切るのよ、と恵子は言った。  屈託なく太陽に顔を向けている花に向かって、ずいぶんと残酷なことを言う。陽一はそんなことを思いながら、恵子の横顔を見て…

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夜野綾
1年前
1

新生活 (全文無料)

 さて、こうして俺は桜の樹の下に座っているわけだ。  桜の樹の下には死体が埋まっている、なんて気取ったことを言ったのはどの作家だったか、俺はてんで思い出せない。…

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夜野綾
1年前

この間、人形いらないかって言われたんです。  (全文無料)

※前半は私が実際に体験した話です。考察からは私が勝手に考えたことです。    コンビニに行こうと思ったんです。私の住んでるボロアパートから坂をのんびり下りて、国道…

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夜野綾
2年前
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言の葉の剣 第3話

言の葉の剣 第3話

 外は夜が始まっていた。明るい街の中を人々は思い思いに歩いている。
 どうしよう。
 帰らないといけないのはわかっている。母さんも心配しているだろうし、何も考えずに眠りたい。眠れればの話だけど。
 でも何もない状態じゃ、歩いて帰る他ない。それも困る。疲れ切っているし、またリベルがやってきそうだ。なんだか瞬間移動しそうな不気味さが奴にはある。
 仕方なく戻ろうとして、オレは立ちすくんだ。
 警察署に

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言の葉の剣 第2話

言の葉の剣 第2話

 警察署の廊下に座って、オレは天井を見上げていた。
 悲しみに唇を引き結んだ人々が慌ただしく広い講堂に入っていく。ドアが動くたびに中が見える。そこには死が満ち、泣き声が聞こえてくる。
 誰かが隣に座る気配がしたけど、オレは動かなかった。動けなかったのだ。心も体も、この世界から切り離されたみたいだった。現実感がなくて、そのくせ手を動かすのも億劫なほど疲れていた。
「御園樹」
 呼ばれて、オレはのろの

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言の葉の剣 第1話

言の葉の剣 第1話

 電車の外には、5月なのに気の抜けた青空が広がっていた。
 あ~、海に行きたい……。
 ありきたりのことを考えてから、オレは視線を電車の中に戻す。日曜日の午前中、早くも遅くもない時間は、別にそこまで混んでないし、かといって空いてもいない。
 渋谷にでも遊びに行くらしい女子高生3人連れ、デートという感じの大学生っぽい男女、外国人観光客に、休日出勤のサラリーマン。
 人々の隙間から、オレは斜め向かいの

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言の葉の剣 あらすじ

言の葉の剣 あらすじ

5月の日曜、美園樹殊波は電車で塾に向かっていた。サボらないのは好きな春島美祝が一緒だからだ。殊波は隣の青年の本に気を取られ、青年は本を渡して降車する。直後に電車はドラゴンに襲われる。春島ほか多くが犠牲となる中、殊波は謎の力で本から剣を出しドラゴンを撃退する。青年は特別な本と実体を引き出す殊波の力を説明し、襲撃者を探してほしいと言う。殊波は断るが春島の遺体のある警察署が巨大な蛇に襲われ、春島の兄紡と

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教会

教会

 教会に辿りつけない。
 彼は窓の外にぼんやり目を向けた。ホテルの窓からは石造りの街並みが見渡せる。教会の尖塔は街の真ん中に、壊れたベッドのスプリングのように突き出ていた。
 風雨にさらされた灰色の街も教会も、それなりに無骨な美しさがある。だが彼は詩心もなければ、風景を紙に写し取る指もない。代わりに彼はこの二週間ずっと歩き回っていた。
 いつか母の病院の待合室で見た雑誌の写真を思い出し、彼は有り金

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新しい鯨骨生物群集、現在配信中です。よろしくお願いします。
今回のテーマは「運」。

セブンイレブン/46276503(~7/10 23:59)
ローソン,ファミマ/B9X423A7N7(~07/24 19時頃)

A3サイズ,2頁,白黒

お支払いには電子マネーもご利用いただけます。

お支払いには電子マネーもご利用いただけます。

 そういやあんた、聞いた? ノキさんとこの旦那さんが、夢に手を出したって。いやいや、ほんとさ、最近色々あったからねぇ。え、どこで夢が手に入るのかって? それがさぁ、噂だと、コンキエ通りの裏にある、なんとかっていう飲み屋で買えるらしいのよ。他にもいくつか、そういう店はあるんだって。
 ひどい時代だよまったく。それにしたって、旦那さん夢なんか買う金どこから調達してんのかね。だってさ、あれでしょ、夢なん

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二度寝しない方がいいよ。(全文無料)

 朝の誰もいない教室で見知らぬ少女が私に向かって手を伸ばす。握られた手の平がゆっくりと開かれる。手の平の上に何かがある。柔らかく小さく温かく甘い。その何かが何であるか私は知っている。なぜ知っているのかは知らない。食べて。そう少女は言う。私は恐怖し逃げ始める。廊下に飛び出し走る。まっすぐまっすぐ行った先には何人もの人がガヤガヤといて、不意に私に気づき一斉にこちらを向く。先頭にいて満面の笑みを浮かべて

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さざんか (全文無料)

さざんか (全文無料)

 さざんか さざんか さいたみち
 恭一は振り向いた。今すれ違った女性。赤いセーターの背中が遠ざかり、垣根の向こうを曲がるところだった。黒く長い髪が名残のようにひらりと消えた。彼女は囁くように歌っていなかったか?
 懐かしい童謡だ。目の前を花びらが横切り、顔を向ける。傍らの民家の庭に赤い山茶花が。そうか、だから歌を。
 彼女は笑んでいたか? あぁそんな気がする。
 恭一は同じように笑んだ。垣根を曲

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なでしこ (全文無料)

なでしこ (全文無料)

 彼女は高校時代から、なでしこのような人でした。秋の七草に数えられるなでしこ。「可憐で貞淑」。簡単に手折れそうな肩と柔らかい頬の線を、私は愛しました。綺麗に結い上げた髪の、うなじに落ちる遅れ毛が愛しく、私はよく指先でふわふわと遊んだものです。
 彼女はその美しい見た目のせいで、いつも嫌な目に合っていました。男の人に言い寄られたり、不躾な目で見られたり。都電の中でふしだらなことをされたと、目に涙を浮

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向日葵 (全文無料)

向日葵 (全文無料)

 向日葵の首を切るのよ、と恵子は言った。
 屈託なく太陽に顔を向けている花に向かって、ずいぶんと残酷なことを言う。陽一はそんなことを思いながら、恵子の横顔を見ていた。縁側で、恵子は絹さやの筋を取っている。ぷちん、ぷちん、という音が、セミの鳴き声に時折混じる。
 恵子は手元から顔を上げず、説明を続けていた。もっと枯れてしまうまでは、あそこに立っているままにしておいて。種ができたら、首を切って乾かすの

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新生活 (全文無料)

新生活 (全文無料)

 さて、こうして俺は桜の樹の下に座っているわけだ。
 桜の樹の下には死体が埋まっている、なんて気取ったことを言ったのはどの作家だったか、俺はてんで思い出せない。ただ、花びらがヒラヒラ落ちてくるたびに、その色の薄さにどきんとするだけだ。
 花が群れているときには色はちゃんと見えているのに、花びら一枚一枚のこの儚くて弱い感じは不思議だ。頭の上に広がる狂ったような可憐さは、地面に落ちるとただの汚れたシー

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この間、人形いらないかって言われたんです。  (全文無料)

この間、人形いらないかって言われたんです。  (全文無料)

※前半は私が実際に体験した話です。考察からは私が勝手に考えたことです。
 
 コンビニに行こうと思ったんです。私の住んでるボロアパートから坂をのんびり下りて、国道から一本外れた通りを歩いてました。晩ご飯作るのが面倒だからお弁当買って、ついでにチョコアイス食べたいな~とか思いながら。そこは一方通行で、車がまぁ朝とか夕方とかはけっこう通るんですが、それ以外はあんまり通りません。昔は賑やかだったっていう

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