令和時代の新たなリーダーシップ像
リーダーシップに物思う
会社員をしていると、ふとリーダーシップについて物思うことがあります。
最近の職場は、団塊世代の方々が徐々に引退され、団塊ジュニア層(1970年代前半)、ロスジェネ層(1975年〜1981年)、ゆとり層(1987年〜2003年)が混在した、まるでグラデーションのような価値混在型の組織で、リーダーシップが求められています。
参考:日本経済新聞 「団塊」「バブル」「ロスジェネ」「ゆとり」… サラリーマン世代論 解を探しに・引き算の世界(1)
安易に誕生年でカテゴライズしたラベルは忌避感を感じますが、少なくても競争や勝ち負けにこだわる世代(受験戦争や就職氷河期を経験)と、自分らしさ追求、無駄消費をしない世代(デフレやデジタルがあたり前の日常を経験)が混在した環境は複雑化した組織と言えます。
そんなこんなで、異なる価値観が混在する組織で、改めてリーダーシップの役割とは?と、物思うわけです。
新しいリーダーシップ像が求められる時代
個人的な見解ですが、国内でマネジメントと聞くと、管理職とリーダーシップの役割が重なっているように感じます。
参考:PRESIDENT Online 管理職とリーダーの「決定的な違い」とは
一般的には、以下のような定義となります。
管理職
・計画立案や予算策定
・組織化と配置
・進捗管理や問題解決
・秩序を保つ
リーダーシップ
・方向を定める
・ベクトル合わせ
・動機づけと鼓舞
・大規模な変革
単語の通り、管理職であれば、組織コントロールや定量的判断と実行が主となり、リーダーシップであれば、組織の牽引やメンバーの士気を高めるような、定性的役割が中心として定義されています。
管理職なのか?リーダーシップなのか?という役割については、正直曖昧で良いと思うのですが、昔の製造業のように、先輩がすべて答えを知っていて、そこを吸収することで成立する管理型マネジメントや、上司が部下に権力を誇示し、一方的な指示で行動を促すようなリーダーシップは、通用しない社会が到来しています。
働く世代の価値観が変わったからこそ、新たなリーダーシップ像が求められる時代なのだと思います。
最近話題のティール組織とは
2014年にベルギー人である、フレデリック・ラルー氏が「 Reinventing Organizations(組織の再発明 ) 」を出版し、国内では2018年に翻訳された「ティール組織」が出版され話題となりました。
ティール組織の大枠をザックリ説明するならば、「管理者不在でも、組織の目的達成に向けて、メンバーが自発的に推進し、高いパフォーマンスを出し続ける仕組み」です。
5つの組織とカラー
ティール組織で述べられる組織形態は5つに分類され、それぞれのカラーが決まっています。
レッド…狼の群れ
特定の個人によって支配的に運営する組織
アンバー…軍隊
支持命令系統が明確で、階級による序列組織
オレンジ…機械
アンバーと同様に序列組織だが、階級は成果を上げたメンバーに与えられ、競争と変化によって成り立つ組織
グリーン…家族
階層構造は一定残しつつ、文化や価値観を残しながら、積極的に現場に権限移譲がなされ、多様性が尊重される組織
ティール…生命体
支持命令系統はなく、全員が信頼に基づき独自ルールや仕組みによって、組織運営を行う組織
ティール組織を読んで参考になる点は、どの組織形態が良い・悪いではなく、企業によってカラーが重なっていたり、業種、業態、企業文化によって、適合する組織形態が異なるという前提です。(ティール組織が最も良いとか、組織論を強制するものではない)
ホラクラシー組織とは
ティール組織の形態に、ホラクラシー組織というものがあります。
参考:ITMedia 理想の職場か、それとも幻想か:予算は社員の自由? 上司の命令がない? 謎の組織「ホラクラシー」に迫る
ホラクラシー組織には役職という概念はなく、ロールという役割によって運営がなされます。また、組織を生命体と捉えることで、この生命体がどんな進化を目的とするか?という概念を中枢にしながら、組織運営を進めていきます。
その他、従来では想像もつかないような、まったく新しい組織運用ルールが体系化され、役職という概念はなくなり、メンバーが自主的に経営やロールに携わりながら、進化を続ける仕組みが成立するとしています。
詳細は割愛しますが、乱暴に表現するなら、皆でボードゲームを進めるような組織運営手法が、ホラクラシー組織と言われています。
日本企業でティール組織が成立するか
社長、部長、課長など、階級制度による序列型組織構造が長い日本企業が、突然フラットなティール型組織にパラダイムシフトをすることは相当困難です。
しかし、平成という30年間で米国を中心とした大手IT企業が、世界時価総額ランキングの上位を埋め尽くし、第4次産業革命に転換されたグローバル競争において、日本企業の進化が問われています。(トヨタ自動車でさえ、上位35位)
参考:週刊ダイヤモンド 2019年4月27日・5月4日合併特大号「昭和という「レガシー」を引きずった平成30年間の経済停滞を振り返る」
今後、テクノロジーの進化によって、加速度的に既存産業の産業構造が破壊・上書きされていく時代です。そして、日本企業がこの先、これ以上グローバル競争で遅れをとらないために、ティール組織までのパラダイムシフトではないにしても、日本らしい組織変革は重要ファクターとなります。また、同時に新たなリーダーシップ像が求められていると感じます。
令和時代の新たなリーダシップ像とは
ソフト面やアイデアを形にする力(ゲーム・アニメ・漫画など、日本独自の強みはあります)で後れを取っている日本で、今後は既存産業に囚われず、クリエイティブな発想、多様性を受容することで生まれる高い次元でのアウトプットが求められています。
ティール組織の強みは、一人一人の強みを活かし、組織の存在目的にコミットして主体的、分権的に行動していけることにあります。また、上司・部下の関係がなくなる分、恐れによるマネジメントや、繰り返しの情報共有、無駄な決裁がなくなり、メンバーそれぞれの強みを惜しみなく出し合える組織が構成されるのです。
このティール組織の強みの中でも、例えば「多様性」に着眼し、リーダーがメンバーの多様性を受容することで、ティール組織に近い組織運営ができるのではないか?と考えています。
そして、令和時代に求められる新たなリーダーシップ像は「組織の目的とメンバー個人の目的の繋がり度合いの向上をサポートする」そんな能力が求めらえていると感じます。
もう少し、ブレイクダウンすると、多様性の受容と発揮を実現するための、定期的な1on1です。ここでは、メンバーそれぞれに合わせてサポートする力や、コーチング力が求められます。
この活動によって、メンバー個人の目的に寄り添い、組織の目的と重なる点を接合し、メンバーの目的達成が組織の目的達成に繋がるように調整をしていきます。
また、リーダーがリーダーシップを一人で抱え込む必要はありません。例えば、動機付けに長けたメンバーがいるのであれば、そういった業務をアウトソースすることも可能です。リーダーがリーダシップの中で、積極的に権限譲渡をしていけば良いのだと思います。
とはいえ、サポートやコーチングに翻弄されるだけでは、組織は強くなりません。やはり、リーダーシップの中核は未来ビジョン設計とビジョンの浸透にあるのではないでしょうか。メンバーが増えれば増えるほど、未来の方向性を定義し、そこに多様性を受容した強いメンバーを導くことがリーダーシップの重要な役割だと感じています。
ザツに言うのであれば、リーダーは「未来ビジョンを本気で考え、それを浸透させ、そして徹底してメンバーを下からサポートする」そういったリーダシップが令和時代の最初に求められるリーダシップなのでは?と勝手に物思っている次第です。