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文字を書くことって早く教えるべきか否か

年長までに自分の名前が書けるように

 これは就学時検診の説明会で保護者が教員にお願いされていることの一つです。保護者は文字を書くことを「勉強」とみなしている方が多くいるので、文字をかけないと「うちの子勉強出来ないのかも」と不安になるのです。

 描画の時間に絵を描いた後にお友だちの名前を自分で書く子がいます。それが展示されると保護者は「もう書けるの?」とその子を褒めます。
すると「文字を書くと褒められる」とその子は学習します。そしてどんどん文字を書くようになるのです。文字に興味を持つと絵本を読めるようになり、一人で読むことも増えるでしょう。

 しかし、同じ絵本でも
・絵本の読み聞かせで聞いた場合
・自分で絵本を読んだ場合
 ではイメージの膨らませ方が違います。

文字を読む=文章の理解?

 文章を読めたから伝わっているだろうと思う方もいるのですが、子どもが一人で読んでいる絵本は文字をたどっているだけで、内容への理解は出来ていないことが多いです。

例えば
「 ねこたちはねぐらをさがしにいきました 」という一文があったとして、
○読み聞かせでは…
 「 ねこたちは ねぐらを さがしにいきました 」と読むでしょう
○子どもが自分で読む場合
 「 ね こ た ち は ね ぐ ら を さ が し に い き ま し た 」と読むでしょう

 まだ、文字を固まり読みすることが難しいので単語を捉えづらく一文字ずつ読むことになります。

福音館書店の絵本の裏に

デデン!

読んであげるなら 4才〜
自分で読むなら 小学校初級むき

と書いてます。

 福音館書店が考える絵本とは

 何よりも絵本は「子どもに読ませる本ではなく、大人が読んであげる本」だと考えました。「大人がくりかえし読んであげることで、はじめて子どもたちは絵本の世界をたっぷりと楽しむことができ、心を豊かに育てることができる」と考えたからです。

 子どもたちの心に長く生きる絵本をと考えているので、絵本を知育としていないのが福音館書店の考えです。

ではそんな福音館書店が考える文字を覚えるということは…絵本の選び方ガイドにこんなものがありました。

Q.早く字を教えて、絵本を自分ひとりで読めるようにしたほうがいいの?
絵本は大人が子どもに読んであげる「本」です。
A.小さな子どもにとって、自分ひとりで絵本を読むのと、お母さんやお父さんに読んでもらうのとでは、どちらがお話の内容を理解できて楽しいでしょうか? もちろん、お母さんやお父さんに読んでもらうほうが楽しいに決まっています。私たちは、絵本は大人が子どもに読んであげる「本」だという考え方をもって、絵本を子どもたちに届けています。
小さな子どもの読書でいちばん大切なことは、「絵本(本)は楽しいものだ」ということを徹底的に感じることです。もし「絵本(本)は難しくて嫌なものだ」なんて思ってしまったら、子どもは読書から遠ざかってしまいます。まだすらすらとは文が読みとれない小さな子どもに、無理に字を教えて絵本をひとりで読ませることは、子どもを絵本(本)嫌いにさせる一番の方法です。ですから、「字を教える」などということはいったんどこかにおいて、ひたすら一緒に楽しい時間をすごしながら、読み聞かせてあげることに徹してください。
もし、そうした中で、子どもが自分から文字を追って文を読もうとしたときは、励ましの言葉をかけてあげて、その子のペースで読んでいくことを見守ってあげてください。「最後までちゃんと読みなさい」なんていうプレッシャーはぜったいに禁物です。読めたところまで、読みたいところまででいいのです。そうした繰り返しが、読書に対する自信をつけることにもつながっていきます。

 子どもにとっては楽しい先に学習があると思います。楽しいから覚える。こちらの意図を押し付けては楽しめないのは大人自身が自分たちの経験からわかるはずです。

なんで文字を覚えたり書いたりするんだっけ?

 ここを忘れてはいけません。学齢期を終了して社会に出ると文字は何のために使われているでしょうか?
もちろん、勉強のためではありません。
相手に何かを伝えるため、またそれを受け止めるためではないでしょうか。

 では伝えるものとはなんでしょうか?

 小さい子どもにとっては感情や出来事です。泣いて教えていたのを「お腹すいた」「今日こんなことがあって嬉しい」など、共感を得るためや困り感を解消するために言葉があり、伝達する術として文字があるのです。
 まずはそのうちに秘めた感情を育てることが、文字を使うことへの第一歩となります。そして、それを言葉で話す。それがあって文字として表す。

文字を早く覚えることは勉強できる子の証明ではありません。

 「うさぎ」と聞いて頭に
 ・白いふわふわの丸いしっぽの動物を浮かべるか
 ・う さ ぎ という文字を浮かべるか

 文字を書くことの他にも同じくらい大切なことが
 学習の土台としてあるのではないか?と
 考えるこの頃です。

お掃除係の実習を体験した保育士さん、きちんとした指導・教育を受けられずも頑張る支援者さん…など現場に困り感を持っている方へサポートすることで、子どもたちに還元されるものがあるのではと信じています。よろしくお願いします。