マガジンのカバー画像

小説『君と明日の約束を』

87
連絡小説『君と明日の約束を』のノートを集めます。
運営しているクリエイター

#連載小説

『君と明日の約束を』 連載小説 第七十四話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第七十四話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。
よろしくお願いします🌷
一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

 咄嗟に何か言おうとした彼女だったが、僕の空気を察して黙ってくれる。それに甘えて僕は話を続けた。

「日織が病気だと知ってたはずなのに。だから無理させてはいけなかったのに無理させるようなこと言って。体に

もっとみる
『君と明日の約束を』 連載小説 第七十二話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第七十二話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。
よろしくお願いします🤲
一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

 病院のエントランスを抜け、そのまま以前の病室に行く。

 病室に近づいて、ぎょっとした。彼女の名前が書かれていなかった。慌ててメッセージを確認すると、彼女からの文章の最後に、部屋の番号が記されていた。

もっとみる
『君と明日の約束を』 連載小説 第七十一話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第七十一話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。
よろしくお願いします🌸
一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

 ミツ君には詳しいことは分からない、と言ったけれど、先生に全て教えてもらっていた。ほとんどの手術が成功しているけど、一部では術中に亡くなった事例もある。それに、四肢の麻痺、など後遺症が残った例も少なくな

もっとみる
『君と明日の約束を』 連載小説 第七十話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第七十話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。
よろしくお願いします💠
一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

 病気に罹ってから、私はお母さんにできるだけ学校であった話を伝えるようにしていた。それは初め、私が病気に罹っているせいで友達とうまくいっていない、とお母さんに思わせないためだったのだと思う。
 喘息に病

もっとみる
『君と明日の約束を』 連載小説 第六十九話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十九話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。
よろしくお願いします🌹
一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

 でも、そんな楽しい時間はすぐに過ぎてしまう。数週間して、私はやっと本を読み終えた。

 そして次の日から、その男の子は私の病室に来なくなった。
 看護師さんに聞くと、何となく口を濁された。幼いなりに、

もっとみる
『君と明日の約束を』 連載小説 第六十八話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十八話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。
よろしくお願いします🌷
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

 その子が現れたのはそんな時だった。彼は同じ年齢の男の子で、お父さんが入院することになったらしく、そのお見舞いで病院を訪れたらしい。

 彼が私の病室を覗いたのはたまたまだったのだろう。後から聞いて

もっとみる
『君と明日の約束を』 連載小説 第六十五話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十五話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。
よろしくお願いします💠
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

 二人とも布団に入ったのを確認すると慎一がリモコンを操作して、明かりを消した。遮光性の高いカーテンのおかげで部屋の中は真っ暗になる。

「慎一、起きてる?」
「ああ」

 自分から話しかけたのに、言

もっとみる
『君と明日の約束を』 連載小説 第六十三話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十三話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。
よろしくお願いします🌺
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

 梅雨の名残か、鬱屈とした厚い雲に覆われた天気の中、僕は学校へ向かう電車に乗っていた。時間はいつでもいいけど十時ごろと言われていたのでその時間に合わせていつもより遅めの電車に乗っていた。
 他の学校

もっとみる
『君と明日の約束を』 連載小説 第六十話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。
よろしくお願いします
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

 静かな病院の廊下に、僕とお母さん二人の足音だけが響く。いっそのこと音がなかったらいいのに、いろんなところから足音が聞こえるみたいで、気持ち悪い。

 進む先に、一つ光が漏れている部屋があった。お父さん

もっとみる
『君と明日の約束を』 連載小説 第五十八話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第五十八話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。
よろしくお願いします🌺
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

「あ、いや……ごめん。でも本当に大丈夫だから。絶対。だから、ね、行こうよ」

 小説の話をして、楽しくなって。そんな興奮が全て彼女の体を蝕む原因になっていたという可能性は否定できない。僕が彼女の手伝

もっとみる
『君と明日の約束を』 連載小説 第五十七話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第五十七話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。
よろしくお願いします🌸
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

 日織の母親も、僕に対して非難したい気持ちがあることは彼女の目を見ていたらわかる。だったらなんでその言葉が出てくる。

「いつも日織が嬉しそうにあなたのことを話すの。こんな子だけど、これからも一緒に

もっとみる
『君と明日の約束を』 連載小説 第五十六話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第五十六話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。
よろしくお願いします💠
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

「大丈夫だよ。経過観察しながら、手術できるタイミングまで待ってただけなんだから。だから心配しないで」

 その時、僕の背後の扉が開かれる音が耳に入った。

「日織……あら?」

 振り向くと、疲弊し

もっとみる
『君と明日の約束を』 連載小説 第五十五話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第五十五話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。
よろしくお願いします!
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

「脳の病気でね。詳しいことはわからないんだけど、脳の細胞の一部に異常な反応があって、それを取り除くために手術しなくちゃいけないって言われてて」

 取り除かないままだと、いずれ身体中が麻痺するから手術

もっとみる
『君と明日の約束を』 連載小説 第五十四話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第五十四話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。
よろしくお願いします!
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

 ほっとした表情で頷いた後、彼女はとってつけたように饒舌になった。本当に、とってつけたように。

「昨日の夜頑張って書いてたら、ちょっと体調崩しちゃって、別にそれだけだよ。集中力が裏目に出ちゃったかな

もっとみる