檜垣 涼

はじめまして!檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説を書いている京都の大学生🌺 一話…

檜垣 涼

はじめまして!檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説を書いている京都の大学生🌺 一話数分で読める連載小説を投稿してます!

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  • 小説『君と明日の約束を』

    連絡小説『君と明日の約束を』のノートを集めます。

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『君と明日の約束を』 連載小説 最終話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家になりたい京都の大学生。 よろしくお願いします🌸 最終話です。 一つ前のお話はこちらから読めます↓  言ってから、ずっと左手に握っていた二枚の紙を彼女に見せる。  彼女は覚悟を決めた表情でそのチケットを受け取った。彼女は、それを僕からのお願いの対価だなんて考えない。 「だから」  僕は、彼女に向けて小指を出す。 「小説家になってください」  二人だけで海の底から周りを見渡しているような、そんな距離感で、僕たちは小指を絡め合

    • 『君と明日の約束を』 連載小説 第八十六話 檜垣涼

      檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家になりたい京都の大学生。 よろしくお願いします🌸 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。 そろそろ終盤に差し掛かってきています! 一つ前のお話はこちらから読めます↓  印刷された彼女の小説を持っている彼女の思考には、当たり前だけどその可能性は浮かんでいない。 「書いて欲しい」 「……は?」  思わず飛び出た呟きといった感じだった。 「この小説、ここまで君が書いたんだ」  彼女に誤解を与えないように、正確に伝える。

      • 『君と明日の約束を』 連載小説 第八十五話 檜垣涼

        檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家になりたい京都の大学生。 よろしくお願いします🌸 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。 そろそろ終盤に差し掛かってきています! 一つ前のお話はこちらから読めます↓ 「……なんで?」  呆気に取られたように首をかしげる慎一は、しばらくしてはっとしたように目を見開く。 「大学……?」 「そう。面談でちゃんと決めた。だから準備しないと」 「そっか……そっか! いいよ。受験までだったら貸し百くらいだな!」  彼は嬉しそうに

        • 『君と明日の約束を』 連載小説 第八十四話 檜垣涼

          檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。 よろしくお願いします🏵 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。そろそろ終盤に差し掛かってきてます! 一つ前のお話はこちらから読めます↓  その中で僕は、なぜか、日織の置かれている状況を落ち着いて眺めていた。心が驚くほど凪いでいた。  彼女が小説を書くことをどれだけ大切にしてきたか、そんなこと僕も分かっている。  それなのに、彼女が小説に関することを忘れてしまったことが、些細なこと

        『君と明日の約束を』 連載小説 最終話 檜垣涼

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        • 小説『君と明日の約束を』
          87本

        記事

          『君と明日の約束を』 連載小説 第八十三話 檜垣涼

          檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。 よろしくお願いします! 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。そろそろ終盤に差し掛かってきてます! 一つ前のお話はこちらから読めます↓  彼女の遺書を読んだ後、彼女の病気を調べていた。彼女が言っていた成功率を知りたくて、ネットに病名を打ち込んだ。  手術成功率。  それに気を取られて見過ごしていた文字列が今になって鮮明に頭の中に浮かび上がった。 ――手術合併症。 「日織?」

          『君と明日の約束を』 連載小説 第八十三話 檜垣涼

          『君と明日の約束を』 連載小説 第八十二話 檜垣涼

          檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。 よろしくお願いします! 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。そろそろ終盤に差し掛かってます💠 一つ前のお話はこちらから読めます↓  バイトを終えて、病室に行くと、日織はベッドのリクライニングを朝より少しだけ起こし、そこに仰向けになっていた。  視線は一点を見つめていて、僕は彼女のその格好を知っていた。  昔、彼女が入院していた時。あの時も彼女はいつも真顔で天井の一点を眺めてい

          『君と明日の約束を』 連載小説 第八十二話 檜垣涼

          『君と明日の約束を』 連載小説 第八十一話 檜垣涼

          檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。 よろしくお願いします 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。 一つ前のお話はこちらから読めます↓  次の日の朝、僕が病室に行くと、日織は布団の中で目をつぶっているように見えた。  駆け寄り耳をすませると、呼吸の音が確かに聞こえていて、一安心する。 「朝一度起きたんだけどね、まだちょっと体力回復してないみたいで」  日織のお母さんは「ごめんね、わざわざバイト前に来てもらったのに」

          『君と明日の約束を』 連載小説 第八十一話 檜垣涼

          『君と明日の約束を』 連載小説 第八十話 檜垣涼

          檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。 よろしくお願いします🏵 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。 一つ前のお話はこちらから読めます↓  ゆっくり歩いていき、目を瞑っている彼女を確かめる。見ると、管は繋がれているけれど、日織に掛けられている布団が上下に動いていて、ちゃんと彼女が呼吸をしているのがわかる。生きている。身体中の強張りが弛緩し僕はそのままその場にへたり込んだ。 ***  徐々に目の中に光が入り込んでくる

          『君と明日の約束を』 連載小説 第八十話 檜垣涼

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十九話 檜垣涼

          檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。 よろしくお願いします🌹 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。 一つ前のお話はこちらから読めます↓  目を合わせない僕を覗き込んだ彼女の目が、心配の色に染まる。  それでも可能な限り力強い声で「大丈夫です」と返すと、あまり深く聞かずに頷いてくれる。 「じゃ、私これからバイトだから」  彼女が背を向けてエスカレーターの方に進んでいった。  ――と思った。 「また連れてきなよ、ガ

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十九話 檜垣涼

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十八話 檜垣涼

          檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。 よろしくお願いします💐 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。 一つ前のお話はこちらから読めます↓  夜、母親と進路の話をした。ちゃんと話すのは初めてだったのかもしれない。そして、風呂に入って寝た。朝起きてすぐに病室に行き、彼女と顔を合わせ、彼女を手術室に送り出し、そのまま朝食を食べず、学校に行き母親と合流、そして田内と面談をする。そんなことが、淡々と行われていた。というか、多分実

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十八話 檜垣涼

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十七話 檜垣涼

          檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。 よろしくお願いします🌻 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。 一つ前のお話はこちらから読めます↓ 「大丈夫だよ、私はそんな理不尽なことはしないって決めてるから」  それは彼女の書いている小説の話を言っているのだろうか。  それとも、彼女自身のことだろうか。  彼女が僕に向かって小指を出す。 「約束。明日のこの時間もまた会おうよ」  多分、どっちもだろう。 「わかってる。

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十七話 檜垣涼

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十六話 檜垣涼

          檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。 よろしくお願いします🌺 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。 一つ前のお話はこちらから読めます↓  ずいぶん広いスペースの中で、ベッドと隣に置かれた机付きの棚が目に入る。机の上には彼女が母親に頼んで家から持ってきてもらったらしい小説が所狭しと並べられていた。  しばらくして、彼女は身震いをしたかと思うと、膝のあたりまでかけていた毛布を引き上げた。 「ミツ君。来てくれたんだ」

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十六話 檜垣涼

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十五話 檜垣涼

          檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。 よろしくお願いします💠 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。 一つ前のお話はこちらから読めます↓  言うつもりはないらしい。考えてみればそうだ。僕と関わってから今日まで、ずっと彼女は嘘をつき通している。  彼女が切望にも似た表情を浮かべているのを見て、僕は彼女の嘘に乗るべきか考えてしまった。もし乗らなかったら彼女はどうなるだろう。僕が彼女の遺書を鞄から取り出したら、彼女は動揺を

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十五話 檜垣涼

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十四話 檜垣涼

          檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。 よろしくお願いします🌷 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。 一つ前のお話はこちらから読めます↓  咄嗟に何か言おうとした彼女だったが、僕の空気を察して黙ってくれる。それに甘えて僕は話を続けた。 「日織が病気だと知ってたはずなのに。だから無理させてはいけなかったのに無理させるようなこと言って。体に負担をかけさせて」  あの時バイト先でジャンキーなものを勧めたせいで店長が彼女に

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十四話 檜垣涼

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十三話 檜垣涼

          檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。 よろしくお願いします💐 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。 一つ前のお話はこちらから読めます↓  初めて会った時のことを思い出しながら言うと、 「気づいてたんだ」 「うん、先週ここで日織に会った時に」 「ごめんなさい」 「だから何で日織が謝るんだよ」  彼女の意図が汲み取れない。謝るべきなのは僕の方だろう。  彼女は、「あ」とか「え」とか何か言おうとしては口を閉じ、なかな

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十三話 檜垣涼

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十二話 檜垣涼

          檜垣涼(ひがきりょう)と申します。 小説家を目指して小説を書いている京都の大学生。 よろしくお願いします🤲 一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。 一つ前のお話はこちらから読めます↓  病院のエントランスを抜け、そのまま以前の病室に行く。  病室に近づいて、ぎょっとした。彼女の名前が書かれていなかった。慌ててメッセージを確認すると、彼女からの文章の最後に、部屋の番号が記されていた。彼女はあの後でも僕が病室に来られるようにしたのだ。  すぐさま渡り廊下を渡り、エ

          『君と明日の約束を』 連載小説 第七十二話 檜垣涼