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考えごと

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#日記

踊り場のトンボ

踊り場のトンボ

 中学生のとき、理科の参考書に出てきたトンボの画像。顔のどアップだった。まあるくて大きくてぎょろぎょろとした、複眼。はじめは何が写されているのか分からず、しばらく見つめていたが、理解したとたん、体が震えて寒気がした。鳥肌がとまらなかった。あ、コレ本当にダメなやつ、と思って、上から大きな付箋をはり、見えないようにしたことを覚えている。なぜそれほどまでに「嫌」で、こんなにも「拒否」してしまうのか、自分

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12月のパラドックス

12月のパラドックス

 師走の候、ミヒャエル・エンデの『モモ』を読みました。これまでは積読山(つんどくやま)のいちぶだったのですが、「今だ!!」という天啓(という名の焦燥)により、ようやく腰をあげました。

 一読を終えた正直な感想は、むずかしかった、です。むずかしかった、ということは、これから咀嚼する余地がむちゃある、ということですので、すなわち積読山は、読む前よりも5冊分ほど高く積みあがったわけです。さて、積読山の

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ひとりたび

ひとりたび

 夢をみた日は得した気分で目が覚める。パラレルワールドにアクセスできた! みたいな。小説にのめりこんだあとのように、現実のほうはすっかり置きざりのまま、別世界の時間を過ごしてきたことで、リフレッシュできた感じがする。

 物語にひたっているときの幸福のゆえんは、現実とは異なる時間軸で、己以外の主観を追体験できる点にあると思う。それに、もとの世界に戻ったあと、「日常もいち物語でしかないんだな〜」と、

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ハニーミルクラテの冤罪

ハニーミルクラテの冤罪

 タリーズでハニーミルクラテを飲んだ。ただの気まぐれだった。ソイラテを愛してるので平素は迷わずそれを選ぶのだが、なんとなく文字列に惹かれて注文。これがめ〜ちゃ美味しくて、どハマりした。てっきり「はちみつ風味」のミルクラテかと思っていたが、ちゃんと「はちみつ」の入ったミルクラテだった。ストローの挿しどころによっては、トロッとした「はちみつ」をもろに味わえる、いわゆる★☆★甘味スペシャルゾーン★☆★が

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夢路アラート

夢路アラート

 赤信号になれ、と強く望むときがある。たいがいそれは夜で、目的地は家であることが多い。体は疲れているし眠たいのに頭のなかで「何か」がぐつぐつとうごめいているような感覚。このまま景色の動かない部屋にこもってしまったら、その「何か」に存在ごと飲みこまれてしまう気がするのだ。

 21時を過ぎていた。イヤホンをさして今月つくったプレイリスト「2206」をタップすると、Vaundyの『恋風邪にのせて』が流

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いろはすの目

いろはすの目

 会社は静かだ。足音さえも気をつかってしまう。常に響いているのは、キーボードの音。かたかたかたかたぱしん(エンター)。だからちょっと重ためのゴミをゴミ箱へ入れるだけで、袋がカサァ……と、うるさく感じる。そんな環境で、私はいろはすをつぶすことができなかった。昨日、そのまま捨ててしまった。そしてふと、違和感をもった。

 悪いことをした気分。

 深いゴミ箱のなか、ほかのペットボトルたちの上に転がった

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一ぱい

一ぱい

 ひとりの時間がふえてから脳内で会話しすぎて、もうひとりいる…みたいな感覚が強くなっている。相手(自分)の声がはっきりしてきて、これ大丈夫か?と思いながら、なぜ心配する必要があるのか?とも思う。やっぱり「ひとり」の定義が分からない、精神に「ひとり」の線を引くのは不可能かもしれない。体のない世界だったら、「1」って生まれなかったのかな。そりゃそうか、境界がないわけだから、生まれようがないか。いやだと

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外観モードの選択

外観モードの選択

 最近、あいほんさんの外観をダークに設定した。このnoteも、黒地に白で映っている。文字だけがスン…と浮かんでくる感じがして、とても好きです。見やすさもあるけど、それ以上になんかこう、肌に馴染む。画面のたたずまいが、自分と相性いいのか、しっくりくる。

 ポルノグラフィティの曲で何が好きか考えた。音のない森・シスター・EXITが思いつく。ミスチルで初めて好きになったのは、掌だった。スピッツはホタル

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信号機のお告げ

信号機のお告げ

 どかどか降ってくる雪にあらがいたくて、わざと上を向いたら、赤色をしていた。次の瞬間、ぱっと緑色に変わった。信号機の光を、きれいなもの・美しいものとして見てこなかったが、雪を彩る光として捉えた瞬間、こんなにも印象が変わるのかとびっくりした。ふだんは交通整備のための、頭で認識する存在だった。けどこのときは、素直に「わっきれい」って心で認識していて、琴線に触れた。雪のなか帰るのも楽しいなと思えた。

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フラクタル・カフェ

フラクタル・カフェ

 おのおのが本を開いたりペンを走らせたりしている。まわりに人はいるが、たがいに干渉せず、自分の時間に依って過ごしている。紙をめくる音、食器が重なる音、コーヒーを淹れる音。大きすぎないBGMは、それらをじゃましないから心地いい。もし座っている場所が窓ぎわならば、静かに人波をたんのうできる。ふわっとこおばしくてさわやかな香りがした。こうやってあまたな要素を五感でうけとると、カフェという空間は、思いのほ

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うらおもて

うらおもて

 生きることにせっぱつまるほど読み書きが楽しくなるので、まじカルマ……と思って生きています。つまり死にかけてるので元気です。茨木のり子の「笑う能力」という詩に初めて会いまして、ふっと肩の力が抜けるおかしさと、今にも溢れそうで溢れない絶妙なラインの切実さ、そのどちらをも備えたことばあそびに、口もとと涙腺がゆるんだ。

 笑いながら泣いているカオが、人間の表情部門第1位で好きです。つられて笑ってしまう

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しぜん

しぜん

 水が流れるのと同じで、時間も上から下に、つまりは未来から過去に向かって流れている、という話をきいて、目からうろこだった。常々あたまのどっかで「結果は決まっている」と考えている節があり、自力をあまり信用してない。ふしぎと縁のある人は続くし、縁のない人はどこかでちぐはぐがおこる。「自然」か「不自然」かが起点になっていて、行動ひとつとっても「自然」ならばふっとできるし、「どことなく不自然」ならばなんや

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待つ

待つ

 たいがいの悩みを突き詰めると、「やさしさとは何か」という問いにいきつく。これ、うつくしく大仰な言葉にかえれば「愛とは何か」になるんだろうとは思うけど、なんかこそばゆいので親しみやすいワードに変換してる。いうて親しみやすいものほど、複雑・難解だが。

 太宰の小説に『待つ』という短編があって、何を待っているのか分からず、不安になり期待をし、やっぱり不安になり緊張し、ひたすら行き場のないもやもやを抱

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まいご

まいご

 身につけている小物があまりに緑なので、そろそろ木になれるのでは? 私は木の幹になりたい。ずらりとならんでいる街路樹がきらきら電飾をまかれていて、どんな気持ちだろうか、人の視線がうるさくはないだろうか、と勘ぐってしまった。しかし私は年中彼らを眺めるのが大好きなので、よっぽど厄介だと思う。

 枝分かれに法則はあるのだろうか? 以前みかけた「川だけで描いた地図」、まるで木が密集しているようで心踊りま

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