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【赤い炎とカタリのこびと】#25 みんな、ほんとうの話(ゲスト出演 水上洋甫さん(朗読))

※このお話は2023年の12月1日から12月25日まで、毎日更新されるお話のアドベントカレンダーです。スキを押すと、日替わりのお菓子が出ます。
最終日は詩人、作家、フリーナレーターの水上洋甫さんに朗読をいただきました。
悟くんのお礼の手紙です。かわいい「またね」を聞いてみてください。

前のおはなし 目次 

 クリスマスの朝でした。
 小さな子供の手で、盛岡の赤いポストに手紙が一通投げ込まれました。

サンタクロースさん。こんにちは。

2回目お手紙申し上げます。
北極は、やっぱり盛岡よりも寒いのでしょうか。

このたびは、どうもありがとうございました。
にせものだなんて言って、ごめんなさい。
いつに間にかいなくなっちゃったので
お礼もおわびも言うのができなくて
だから この手紙を書きました。

お母さんがよろしくと言っていました。
ずっとねていたから、まだ自分で歩いたり走ったりはできないけれど
少しずつ、元気になるんだそうです
今度は約束するって。
いつも「今度は」って言うんだけど
僕は、それでもいいんです。待ってあげようと思います。

病院であの後怒られませんでしたか。
お母さんがとても心配していました。
怒られたり、警察につかまったりしなかったかって。

あと、こびとさんにもよろしくって
そんなに言いたいことがあるなら、自分で書けばいいと思うんだけど
お母さんは文章を書くのが下手だから、だめなんだそうです。

頑張ってくれてありがとう。
あなたたちのおかげです。

お母さんからの伝言です。
みんな、頑張ってくれたんだって。

よかったら、また盛岡に遊びに来てください。
レンガのお家も、かっこいいお馬もいます。
カッパのお皿でおばあちゃんのとっておきのお菓子を出して
みなさんを歓迎します。

嘘じゃないよ。
僕も頑張って、みんな、本当のことにしようと思う。

じゃあ、またね

国枝悟

 名古屋の事務所で、机に頬杖をつきながら居眠りをしていた田中の頭の上に、すとんとそのまま落ちてきて、びっくりして田中が飛び起きました。イブの騒ぎのどさくさに紛れてトナカイに乗って帰ってきたはいいものの、酷い寝不足なのでした。

 封筒を挟みで開けて、中を見て、頬を緩ませました。少し笑って言いました。「褒めて、もらった」
 また机の上に突っ伏しながら、呟きました。
「お財布パンパンの日本銀行券でも良かったんだけどなあ……」

「ダメだありゃ」
事務所の窓の外で校正のこびとが言いました。トナカイの頭の上に載っていました。

 シャンシャン、と鈴を鳴らしながら、冬の澄んだ空を北に向かってトナカイが走っていきます。

 クリスマスの朝でした。
 これはみんな、本当の話です。

「赤い炎とカタリのこびと」No.25

 詩人、作家、フリーナレーターの水上洋甫さんに朗読をいただきました。
 YouTubeチャンネル「朗読・声劇の水上声希譚をお持ちです。

 私のnoteにも、SAND BOX 1099としていくつか朗読をいただいています。

 今年一年、ありがとうございました。年末のお忙しい中音声をくださり、どうもありがとうございます!


 このおはなしは、12月の1日から25日まで毎日続く、おはなしのアドベントカレンダーです。というわけで、25日。これで、おしまい!
 お付き合いくださり、どうもありがとうございました!

目次
01. ラスト・クリスマス・イブ
02. 大あわてのサンタクロース
03. クリスマス・イブまでの24日間
04. 田中さんの災難
05. 田中さんの仲裁
06. 田中さんの観光
07. 田中さんの焦躁
08.  田中さんの計画
09. 田中さんの行進
10. 田中さんの失態
11. 「続き」
12. 栄転
13.  去年
14. 「帰る」
15.  カタリのこびと
16. 赤光
17.目的地
18. 「お願いなんかありません」
19. おおうそ
20. トナカイ
21. 真っ赤なニセモノ
22.  大嫌い
23. 訂正しろ
24. 赤い炎とカタリのこびと
25. みんな、ほんとうの話