【赤い炎とカタリのこびと】#18 「お願いなんかありません」(ゲスト出演 もりの・くぅ さん(朗読))
※このお話は2023年の12月1日から12月25日まで、毎日更新されるお話のアドベントカレンダーです。スキを押すと、日替わりのお菓子が出ます。
今日は杜埜 玖/KuU Morinoさんに一部朗読音声をいただいています。
手紙を読む男の子を思い浮かべながら、そちらも是非お楽しみください!
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手紙博物館の展示室に、椅子がいくつか並べてありました。
「サンタクロースへの手紙たち」と膝の高さほどの案内板があって、後ろに小学4年生の子供たちが数人、自分の書いた作文を持って恥ずかしそうに立っていました。赤くなってうつむいたり、すぐ隣の子とつつき合ったり、みんな緊張しているようでした。
ところが、その中にひとり、なんともない様子の男の子がいました。自分たちと向かい合わせに座っている、めいめいの保護者たちをぼんやり見ています。
先生が挨拶をして、騒いでいた子も一斉に礼をしました。
「今日は小学4年生たちが授業で書いた『サンタクロースへの手紙」の朗読を行います。まず最初は4年2組の……」
「はい」
先生に名前を呼ばれたさっきの男の子が、礼をして前に出ました。こそこそ何かを言い合う他の子たちを一瞥して、ふん、と鼻で息を吐いてから、手に持っていた原稿用紙を広げて読み始めました。
男の子が朗読を終わると、席からまばらな拍手がおきました。年老いた女性がひとり、音のならない拍手をしながら、悲しそうに男の子を見つめていました。
男の子は礼をして、女性とは目を合わせないで、自分の分を待つ他の小学生たちの列の一番後ろに戻って行きました。
杜埜 玖/KuU Morinoさんは、stand.fmで朗読配信を
noteでは短歌とお料理の記録、それと配信した内容の振り返りを書いておられるかたです。
また、月に1回、リアルでの朗読会をなさっています。(配信で時々そのお話をなさっています)。
12月のお忙しい中(しかも私の朗読依頼原稿がちっとも上がって来ない中)、ご無理を言って録音していただきました。手紙を読んでいる間の男の子の心情変化まで表現していただいています。小さな男の子の、少し拗ねたようなところがのぞく感じがして、いいなと思っています。
今年一年、どうもありがとうございました。最後にご無理を言ってごめんなさい。朗読いただけて、とても嬉しいです。お身体気をつけて、どうぞいい年末をお過ごしくださいね。
このおはなしは、12月の1日から25日まで毎日続く、おはなしのアドベントカレンダーです。
目次
01. ラスト・クリスマス・イブ
02. 大あわてのサンタクロース
03. クリスマス・イブまでの24日間
04. 田中さんの災難
05. 田中さんの仲裁
06. 田中さんの観光
07. 田中さんの焦躁
08. 田中さんの計画
09. 田中さんの行進
10. 田中さんの失態
11. 「続き」
12. 栄転
13. 去年
14. 「帰る」
15. カタリのこびと
16. 赤光
17.目的地
18. 「お願いなんかありません」