陰翳礼賛

闇の住む家

夜景に心が動かない。ライトアップにもあまり興味が湧かない。
どうしてだろうなと思っていたその謎が解けた。
『陰翳礼賛』、この本を読んで。
私は闇の生きている家で育ったからかもしれない。
土でできた真っ暗な蔵の中で、わずかにドアの隙間からのぞく光は圧倒的な闇にのまれて、入ってこようとはしなかった。
長く続く廊下は、壁につけられた電気のスイッチがどこにあるかわからないほどの闇だった。怖いのを我慢しなが

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いつもありがとう!
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「香道」 ~ 漂うように 〜

余白の匂い
日々漂う匂いの体験と思いの切れ端を綴る「はなで聞くはなし」 

前回の記事: 「盆会(ぼんえ)」 ~ いかれたBaby ~

香りを”聞く”と言い慣わす世界に迷い込んで十余年。
この九月、「香道」を始めて新しいひと回りの年を迎えた。

”香り好き”ではないが”匂い”には興味があった。
「○○は鼻が利くから。」
母からは冷蔵庫に残ったお肉や魚の「お鼻見」をよく頼まれた。

中学三年の春、

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琳派、金屏風の陰翳

尾崎光琳 「紅白梅図屏風」

暗がりに浮かび上がる金屏風の水辺を眺める。すると、黒い服に縁次の黒帽子を被った小柄な男が岸辺に立って、ぼうっと水面を眺めている。その影は、黒々とした梅の幹に隠れ、銀箔の流れに浮かび混ざり合う。茫然とするうちに、男の姿はどこかへ消えて、画面の外の、ギャラリーの冷たい質感だけが残される。

金屏風はなんとも危ういバランスで「立って」いる。心に焼きつくような印象を残すようで

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