つづき

言葉を紡ぐことは人生を紡ぐこと。波紋のように風紋のように、ぜんぶ過ぎ去ったあとに残るも…

つづき

言葉を紡ぐことは人生を紡ぐこと。波紋のように風紋のように、ぜんぶ過ぎ去ったあとに残るものは言葉だけなのかもしれない。 短編集「ソナチネ」「夜想曲」など、storeにて。 https://lit.link/tsuduki

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  • 小説(短編小説)

    短編小説を集めました。 800字から2000字程度です。

  • タネカラプロジェクト

    タネカラプロジェクト関連記事。エッセイ。 活動の内容、想いを書いています。タネカラプロジェクトとは地元に根差した「育苗」「植林」の活動ですが、タネの不思議、地域の森に触れ、感じることで育つものを大切にしていく、長いスパンの活動です。 詳しくはこちら。https://tanekarap.jimdosite.com/

  • 文学フリマまとめ

    文学フリマに関連する記事です。本の紹介や当日のエッセイ、振り返りなど。

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    ポストカード【落ち葉】

    『さがしもの』の表紙になっている写真のポストカードです。森の落ち葉を並べています。
    ¥150
    ソナチネ
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    ソナチネ

    8つの短編集。83ページ。目次・・・・・・・・・雪解け・たんぽぽ幻想曲・雨の日の子守歌・ひぐらしのカノン・哀歌・無題・風のロンド・空色のピアノ最後の2作は童話です。前に書いたものを加筆、修正したものです。残りの6作は書き下ろしです。それぞれ3000字程度のごく短い短編で、季節を織り込んで書きました。風の匂いや蝉の声、雨の音を感じながら小さな世界に浸っていただければと思っています。小学校の高学年から読んでいただけます。少しだけ、中身を紹介します。〈たんぽぽ幻想曲〉―-宿題のない春休みがやってきた。今日はお母さんの妹である、ふくちゃんが朝から家に来ていて、一緒にお昼ご飯を作ることになっている。ふくちゃんに会うのはお正月以来だった。「あみちゃん、もう五年生かぁ。また背が伸びたんじゃない?」ふくちゃんはお正月のときも同じことを言った。「そうかなぁ」わたしが答えるとふくちゃんは日焼けした顔でにっと笑った。ふくちゃんとお母さんは全然似ていない。お母さんはどちらかというと色白で口も小さめだけれど、ふくちゃんの肌はいつでもこんがり焼けたパンみたいな色をしているし、笑うと不思議の国のアリスに出てくるチェシャ猫みたいになる。ふくちゃんが持ってきたビニール袋の中には、たんぽぽがたくさん入っていた。  ―-つづく
    ¥650
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    8つの短編集。83ページ。目次・・・・・・・・・雪解け・たんぽぽ幻想曲・雨の日の子守歌・ひぐらしのカノン・哀歌・無題・風のロンド・空色のピアノ最後の2作は童話です。前に書いたものを加筆、修正したものです。残りの6作は書き下ろしです。それぞれ3000字程度のごく短い短編で、季節を織り込んで書きました。風の匂いや蝉の声、雨の音を感じながら小さな世界に浸っていただければと思っています。小学校の高学年から読んでいただけます。少しだけ、中身を紹介します。〈たんぽぽ幻想曲〉―-宿題のない春休みがやってきた。今日はお母さんの妹である、ふくちゃんが朝から家に来ていて、一緒にお昼ご飯を作ることになっている。ふくちゃんに会うのはお正月以来だった。「あみちゃん、もう五年生かぁ。また背が伸びたんじゃない?」ふくちゃんはお正月のときも同じことを言った。「そうかなぁ」わたしが答えるとふくちゃんは日焼けした顔でにっと笑った。ふくちゃんとお母さんは全然似ていない。お母さんはどちらかというと色白で口も小さめだけれど、ふくちゃんの肌はいつでもこんがり焼けたパンみたいな色をしているし、笑うと不思議の国のアリスに出てくるチェシャ猫みたいになる。ふくちゃんが持ってきたビニール袋の中には、たんぽぽがたくさん入っていた。  ―-つづく
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    川の声

    読み切り短編、28P、A6サイズ(文庫本)。野良犬のいたころの話。主人公は小学生の女の子。飼っていたハムスターが仔を産み、学校で飼っていた兎が死ぬ。生と死の間にあるものとは。
    ¥200
    ソナチネ
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交差点(短編小説)

ベージュのマフラーを巻きなおしながら、幸子は待ち合わせ場所を変えればよかったと首をすくめた。風が思ったより冷たい。待ち合わせの時間までまだ少しある。さっき駅のトイレで確認したところだったが、もう一度、カバンから手鏡を取り出し、口元をチェックする。 40をすぎた女には明るすぎる口紅だった。男に殴られて切れた口の端を隠すにはこれくらいでないといけない。離婚する前から関係のあった男は、近ごろになって暴力を振るうようになった。 もうすぐ中学三年生になる娘と会うのは一年ぶりだ。離婚のと

    • 急な泊まり

      妹のタネカラプロジェクトに参加した帰り、妹の家でちょっと仮眠してから帰ろうと思ったら、局所的な雨に見舞われた。 「道が危ないからお姉さん今日は泊まっていったほうがいいよ」 近所のおばちゃんがわざわざ妹に電話をくれた。 「そうしたら?」 妹は言うけど、普通に平日だし、明日の朝みんなのお弁当を作らないといけないよなぁと思いながら夫に電話してみる。 「なんとかするわ」 案外あっさり承諾してくれた。 というわけで着替えも化粧品もパジャマもないけれど、妹の家に泊まることになった。前に泊

      • 投稿しようと書いたけどあまりにも暗いのでやめました。 全然書けてませんが、たぶん元気です。 昨年書いた短いものを短編集にしようと思っています。 チャリティーの本も作成予定。 しばらく作る方に専念したいと思います。

        • 読了。 リズミカルな文体でするする読めました。読んだ後の余韻が本当に心地よい。小さい頃はよくこんな気持ちになったなと思い出した。イラストもかわいい。自分で描けるって最高だよなと思う。まるっと世界が創れてしまうもんね。羨ましいです。 #ウミネコ #文庫 #小説

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        交差点(短編小説)

        • 急な泊まり

        • 投稿しようと書いたけどあまりにも暗いのでやめました。 全然書けてませんが、たぶん元気です。 昨年書いた短いものを短編集にしようと思っています。 チャリティーの本も作成予定。 しばらく作る方に専念したいと思います。

        • 読了。 リズミカルな文体でするする読めました。読んだ後の余韻が本当に心地よい。小さい頃はよくこんな気持ちになったなと思い出した。イラストもかわいい。自分で描けるって最高だよなと思う。まるっと世界が創れてしまうもんね。羨ましいです。 #ウミネコ #文庫 #小説

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          いちばん

          いちばん、やらなくていいことほど、やりたくなる。 書くっていうことなんだけどね。 優先順位、低いのよ。 別に求められてないし、締め切りないし。 しんどいし、果てしないし。 でも、わたしの真ん中にあるんだよねぇ。 なんでかわからんけども。 いちばん無意味なことに、意味があるって なんて贅沢なことなんだろうなぁ。 なんて豊かなことだろう。 パートから帰る電車の中で、ちょうど夕陽が沈んでいく。 電車から見る夕陽は、ときどき建物に遮られながら映画みたいに流れていく。 まだ、書けそう

          いちばん

          書道の世界

          小さい頃、習っていたものといえば英語とピアノ。英語は二軒隣のおばちゃんが家で英語教室をしていたから。ピアノは日曜日に駅前のYAMAHAピアノ教室で、わたしと妹がレッスンしてもらっている間、母は買い物をしているというルーティンだった。 正直、別に好きな習い事ではなかった。田舎だったので習い事が少なかったのと、両親が仕事をしていたため、送迎してくれる人がいなかったという理由で可能な習い事がそれだった、という感じ。 もし絵画教室や陶芸教室があったら。 フルートは後で習い始めたけど、

          書道の世界

          ただいま文学イベント東京にて、通販していただいています。 ポストカード付きなのでよかったら覗いてみてください。 https://stainbeck.thebase.in/

          ただいま文学イベント東京にて、通販していただいています。 ポストカード付きなのでよかったら覗いてみてください。 https://stainbeck.thebase.in/

          誰かや何かの価値

          ものすごい雨。肌寒いからか、猫が膝にのってくる。 仕事が始まって慣れないことばかりで、不甲斐なさが募る。 家に猫がいてくれてよかったなぁと思う。 言葉を持たないただ温かいだけの小さな生きものが与えてくれるものの大きさを知る。 存在する価値は誰が決めるのだろう。 きっと神様は平等だから、いいものもわるいものも、この世にいる。 存在価値のないものもあるのだろう。 でもそれを決めるのは神様でもなく、自分でもないのだ。 存在価値は、関わった人やもの、他者の中に存在し、それは自分では決

          誰かや何かの価値

          タネから森へ

          妹の活動しているタネカラプロジェクトが、とある講演会で展示をさせてもらえることになり、そのお手伝いに行ってきた。 わたしは妹と違って知識も経験もないし、山にもそんなに行ったことのないふにゃふにゃの人間で、何も考えずに妹の車に乗せてもらい、到着したらみんな○○を守る会、とかの人たちばかりでちょっと気が引けてしまった。 妹は知り合いもたくさんいて、挨拶をかわす中、隣でうっすら微笑みながら、必要がありそうなら「姉ですー」と言ってみたりした。みんながんばってそれぞれの場所のために活動

          タネから森へ

          白い花の咲く木

          植物園に行って、知らない木に咲いた知らない花の匂いをすごく好きだと思ったのに、名前を忘れてしまった。 大きくも小さくもない白い花が、通り過ぎたときに匂ってわたしの足をとめた。 引き返して確かめる。あぁ、この花だったのか。 木に巻かれたプレートを見て名前を知る。きっと忘れてしまうな、と思った。 でも匂いは忘れないだろう。次に出会ったとき、この花だとわかる自信があった。クチナシ、バラ、水仙、どれも違うけれど、あえて言うなら水仙に一番似た匂いがした。春先の匂いに似ている。 5月の風

          白い花の咲く木

          原稿を読み返す

          去年、書いた原稿を読み返してみた。数ヵ月ぶりである。 推敲ではなくて、ただ読む。少し離れていたから、作者としてではなく、読者を意識して目を通す。 そんなに枚数は多くないのに、時間がかかった。普段、原稿を読んでもらうということはその人の大事な時間を使っていただいているのだなと改めて思う。 結果、いまいちだなと思った。めちゃくちゃ悪くはないかもしれない。でも読後感がよくない。ラストが弱いし、ところどころ弱い。そしてどうしてかはわからないけど、読み進めにくい。はよ終わらんかなと自分

          原稿を読み返す

          透明な感情

          大人になってからも読書感想文はすごく苦手である。ウッとなる。夏休みの宿題の最後はいつも読書感想文が残っていた。 というわけで、去年、文学学校の宿題(?)で書いた読書感想文。 何か書こうと思うのだけれど、今、どうしても書けないので掲載しておきます。今読んでもなんか恥ずかしいです。 透明な感情 (川上弘美 神様 を読んで) 恥ずかしいことに川上弘美さんを知ったのは割と最近のこと。いつだっただろうと読書記録を見返してみると、去年の六月に『おめでとう』を読んだのが初めての川上さ

          透明な感情

          note10周年なんですね。note始めたのが2018年なので、もう6年目になるのか。 最初はコラムを書く練習に、と思って始めたのですがエッセイばかりになってしまいました。 やっぱりコラムは得意じゃないんだと思います。

          note10周年なんですね。note始めたのが2018年なので、もう6年目になるのか。 最初はコラムを書く練習に、と思って始めたのですがエッセイばかりになってしまいました。 やっぱりコラムは得意じゃないんだと思います。

          ムーンリバー

          わたしたちはあの日、海辺にいた 半分の月がのぼりかかって、波に合わせて揺れていた どんな話をしたのか覚えていない あなたがいなくなってしまったから 記憶はどんどん色あせていくけれど、 もともと色のなかったあの夜のことは まだ少しだけ、覚えている 船着き場の船も、海の鳥も、眠っていて、 わたしたちはちっとも眠たくなんかなかった 眠ってしまわなくてよかったのだと思う 眠るにはもったいないほどの夜だった 好きな本の話をして、小さいころの話をして、それから 少しだけ黙りこんだ 波がち

          ムーンリバー

          ふくちゃんとホルン(短編小説)

          ふくちゃんはお母さんの妹で、わたしのおばさんだけれど、お母さんとは全然似ていないなぁといつも思う。 「こんにちは」 うちのリビングに入ってきたふくちゃんは、こんがり焼けたパンみたいな顔で、ニカッと笑った。お母さんはふくちゃんを見て目を丸くした。 「ちゃんと帽子かぶってる? 日焼け止めは?」 「めんどくさいからかぶってないよ、日焼け止めもしてへんし」 お母さんはあきれた顔になった。ふくちゃんは全然気にしていないみたいだった。わたしは二人を交互に見た。お母さんは肌が白くて、いつも

          ふくちゃんとホルン(短編小説)

          推敲するということ

          特に忙しかったわけではないのに、noteには書きかけの記事が4つも眠っていた。もう今更UPできんなというものばかりで、あぁ、流れていくなぁ、時間は、と思う。 今、書いている小説がうまくいっていなくて行き詰っている。ちょっと離れてはまた書いて、でもまだまだ核心にはいけていない、という気がする。 一番大事なところが書けていない、いや、むしろ書かないほうがいいのか、決めかねている。 小説だけではなくて、答えのないものはどれも同じかもしれないけれど、結局は自分で決めなければならない

          推敲するということ