交差点(短編小説)
ベージュのマフラーを巻きなおしながら、幸子は待ち合わせ場所を変えればよかったと首をすくめた。風が思ったより冷たい。待ち合わせの時間までまだ少しある。さっき駅のトイレで確認したところだったが、もう一度、カバンから手鏡を取り出し、口元をチェックする。
40をすぎた女には明るすぎる口紅だった。男に殴られて切れた口の端を隠すにはこれくらいでないといけない。離婚する前から関係のあった男は、近ごろになって暴力を振るうようになった。
もうすぐ中学三年生になる娘と会うのは一年ぶりだ。離婚のと