書道の世界
小さい頃、習っていたものといえば英語とピアノ。英語は二軒隣のおばちゃんが家で英語教室をしていたから。ピアノは日曜日に駅前のYAMAHAピアノ教室で、わたしと妹がレッスンしてもらっている間、母は買い物をしているというルーティンだった。
正直、別に好きな習い事ではなかった。田舎だったので習い事が少なかったのと、両親が仕事をしていたため、送迎してくれる人がいなかったという理由で可能な習い事がそれだった、という感じ。
もし絵画教室や陶芸教室があったら。
フルートは後で習い始めたけど、もしヴァイオリンやギター教室があったら、習ってみたいと思っただろう。
その反動というわけではないけれど、大人になってからの習い事はなんと楽しいのだろう。学ぶこともそうだけれど、誰かから教えてもらうことの面白さ。師弟関係もなかなかいい。
自分で探究するのももちろんいいけど、習うことには習うことの楽しさがある。
小さいころからお世話になっているピアノの先生は、実は書道の師範でもあり、なんやかんや偶然が重なってうちの近くで書道教室をされることになった。習字は好きではなかった。字もヘタだし、何より筆や道具の扱いが面倒だった。でも、字を書くのは好きかもしれない。今なら書きたい言葉がある。書道展で先生の書いた作品を見てそう思った。
というわけで、書道の門をたたくことになった。
笑えるくらい下手だけど、楽しい。
自分の呼吸がそのまま字になっていく。迷いも決断もすべて字になって現れる。書道もまた、時間の芸術なのだと知った。緩急や静動、白と黒の世界。何かに似ていると思ったら楽譜なのだった。
新しい世界はすでに自分の中にあった世界と重なっていく。
まだまだ自由には書けない。でも、きっとできる
気がする。
憧れはいつも、わたしの原動力だから。
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