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2022 への振り返りと2023へのこと

去年2021年は、7年間のまとめと感謝、新たな挑戦への不安入り混じった年末だったのと、ずっと温めてきたことを実現するための決断の時でもあった。2022に入り、今年もnoteにその時々のことを書いているが、2022の年末を前にして現在の視点で思うことを記していきたい。

空回りと右往左往


今年の4月8日にLIGHT & DISHES Lab.はオープンした。そこまでの経緯などはnoteにいくつか書いている。今思い返すとただただ、自分の思いと状況を書いては”発信”しているというだけに甘んじていたのかもしれない。以前の「たにたや」に比べてスペースが大きいだけに、「あれもできる、これもできる、あれもしたい、これもしたいと」その先の着地目的に行き着いてない行動が走り出していた。なんとも今でこそ多少冷静になって言えるけど、着地のない行動は地に足がついてないからどこかフワフワと達成感がなかったと思っている。ありがたいことに、プレスプレビューにはお世話になってきたメディアの方々が多く来てくれて、その後日経MJからはじまり、主要なデザインメディアではニュースとして取り上げてもらった。”オープンした”という状況だけが走り出し、中の者としては焦りで右往左往していたような気がして夏までやり過ごしていた気がする。果たして、ここで私は何をしたいのか ? 誰にきてもらって、どうしていきたいのか ?
「食と光の体感スペース」というフレーズだけが言葉としてあって、光のシミュレーションができるという事実をどんな形で、どんなビジネスとして実績にしていきたいのかが描けていなかったのではないかと思う。そんな状態でも、私とこの場所に期待をかけて着いてきてくれたスタッフと支えてくれた人たちの厳しくも愛のある声と視線だけが心の糧であった。側から見たら何を言っているのだと思うかもしれないが、上記のように着地目的が定まってないからこの後が自分へ課される様々な問題に影響を及ぼしていくことになる。

依存と本質


LIGHT & DISHES Lab.には午後3時を過ぎるとこんな西日が入ってくる

事業再構築補助金がきっかけで始まったLIGHT & DISHES Labプロジェクトは、実績報告→補助金の請求というプロセスを補助金事務局にしなければいけない。その多少煩わしいと思う作業も、これまで向き合ってこなかった資金調達やその資金繰りの現実にも当然ながら影響していく。会社は、今回の再構築から、社員1名、役員が1名加わり、私だけが生きていければよいという「どんぶり」勘定では全くNGなのだ(当たり前だけど) 。そう、自覚がないのもいけないのだが、会社の代表として全てに対して前面で向き合うことを避けていたのでは、これまで積み上げてきたものが一瞬にて崩れていく。
若い社員は、一生懸命その世代では多分やらなくてもよかったことや、考えなくても良いことまで調べたり、誰かに聞いたりして積極的に動いては支えてくれた。もちろん社員もバイトもそして役員も同じ気持ちで厳しい叱咤と激励に満ちた愛を注いでくれた。みなL&Dの可能性に共感してくれているからだ。そこに自分は、今だから言うが完全に依存していたと思う。だから、夏過ぎて、秋に差し掛かる頃には、いろんな面でいろんなことが起きた。
私がここをつくったのは、

・光は体感しないと伝わらない
・もっと照明のことを世の人たちに知ってほしい
・「食」の世界を照明で豊なシーンにしていきたい

という思いから。
新たにつくったウェブサイトにも「光はブランディング」とまで唄ってるから、最大にして目指すところはわかっているはず。なのに、苦手なことがあると立ち止まり、人に気持ちが依存しては、自分自身が常に前に立っていない状況を生んでいたのだ。
では、それで向かう先の「本質」は ? それはすでに社名にも現れている「光」LIGHTと「食」DISHESをもっと強く一つにしたことを成し遂げていくことなのではないのか。
それが示せて初めて会社の代表と言えるはず。そんなことを考えたり、考えを戻したり、いや戻ってはいけないのだが・・危なく、以前のスタイル「たにたや」に気持ちが戻りかけていて、
空回りで右往左往からすでに5ヶ月が過ぎようとしていた。

陰翳礼賛展で見えてきた方向

「LIVE+LIGHT In praise of Shadows 陰翳礼賛 現代の光技術と」2022年8月26日-9月25日まで開催され、1000人近く来場があった

BAG(Brilia Art Garelly) の企画監修されている方から2021年に声をかけていただいた機会があった。前々から、照明の認知を高めるには、照明分野にとってもバイブル化している谷崎潤一郎のエッセイ「陰翳礼賛」を素材に何かできないか、と思っていたのでタイミングとしてはすごくラッキーだった。ただ、あの世界を表現するのにどんな光でも良いというわけではなく、技術的な進化とともに「現代の陰翳礼賛」をつくることが重要と考え、自身も開発関係に関りL&D Lab.でも体現している小型で演色性の高い低色温度のLEDを谷崎の世界で見せたいという内容になっていった。諸々厳しい状況でありながら、多くの人たちの協力によって約1ヶ月の会期をなんとか全うした。やってみると、思っていた以上に照明のプロたちから一般、デザイン、の人たちまで響き良い反応をもらった。L&D Lab.の飲食営業はほとんど数日しかできなかったこの間に、会期が始まってから思い立ち、通常の照度の1/5近くにした陰翳礼賛の光の中で食事をしてもらうという「陰翳礼賛ディナー」を展覧会会期中2回やってみた。そうすると、あっという間に予約が埋まり、とてもコンセプチャルな会ができた。来た人たちが、1日2日経っても余韻が残るようで、嬉しいメッセージももらった。それまで、L&D Lab.の空間はハードルが高く身の丈ではないのではないかと悩み、会社の方向に強い一手が打てなかった日が続いていたが、「光」LIGHTと「食」DISHESを一つにしたことがこの陰翳礼賛をテーマに出来た一つの形だと確信した。身の丈というのは自分で決めるのではない、丈は考えて考えた末にその時が教えてくれるのだと思った。人は、状況がつくる空気の中で五感をフルに動かしてこそ心を動かすのだから。

LIGHT & DISHES のミッションを胸に強い軸足をつくる

フランクフルトに着いた初日、綺麗な夕焼けを見た

展覧会が終わり、すぐにロンドンとフランクフルトに向かった。実際、そんな動けるような状況ではなかったが、ロンドンは能動的な感覚で以前取材した照明コンサルティングスタジオが手がけた現場を見たかったのと、長い付き合いの友人にもどうしても会いに行きたかった。そしてやっと開催されるということでアプライ済みだったlight+buildingのフランクフルトへ思い切って行ってしまった。出会いと収穫は思っていた以上で、帰国してからのスピードが変わった。L&D Lab.は10月中旬以降から12月まで、何かに導かれるようにそれまでとは違う空気が出来ていった。照明のシミュレーションを希望する設計事務所からや、食に関連する会社などから問い合わせと予約、照明のプロたちが来店などが入ってきた。Lab.の空間がやっとあるべき姿をつくり始め、明確化してきた。そんな時だからこそ、興味や関心を持って会ってくれた企業や、これまで一緒に光の質をつくってきた組織とも、もう一度私たちが進むべき方向に理解を示してくれているかを確認し、少しでもボヤけていたり、同じ熱量を感じられなかったら、いずれ先々新たな関係になれると信じて距離と時間を置くことも決断した。2023年の1月から、LIGHT + DISHES Lab.は空間全体でこれまでにない光体験ができる企画をスタートする。身近に感じていた親しみのある照明と最新の光技術が一体となった空間で、旬の料理を楽しんでもらいたい。まだ自分もどんな反響が起きるかわからないが、L&D Labが確実に空間のミッションを体現してくれるのは間違いない。
掲げたL&Dのコンセプト"「食」の世界を照明で豊なシーンにしていきたい" と向き合ってそれによって事業が成り立つことを考えていく。強い軸足が、辛く厳しい時も嬉しい時も、向かう先に導いてくれると強く信じて。
ロンドンの友人が言ってくれた「あなたは点を打ったのだ」と。何も無いまっさらな場所に点を打つ。誰もやったことのないことに挑戦し、その点が消えないように太い線にしていく。覚悟がいることだなと思い知る。戻らないし戻れない。考えて動いて、2023年をつくっていくと、2022年最後の日に強く心に。


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