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『まあどう云う工合になるか、試しに電燈を消してみることだ』
文豪、谷崎潤一郎の名エッセイ「陰翳礼讃」の最後の一節。1933年に発表されたこの随筆は、江戸時代から明治に入り、電気が普及していく中、大正、昭和と時代を経て、光に対してまだ繊細な美意識があった時に書かれている。それでも、谷崎は以上の一節を語っている。これは普遍的に存在する感覚なのだ。故に今、陰翳礼讃の光への美意識に立ち戻ることが大切なのではないかと思う。
この20年以上、進化している光の技術にどれくらいの意識や関心があるだろうか。進化とか技術革新というと、まずは"便利"とか"効率が良い"とか、そのような機能面にまず関心がいくだろう。LEDになってから、白熱電球へのノスタルジーで、LEDは目に痛くて雰囲気をつくれないと思っている人もいるかもしれない。確かに、10年近く前だとそういうふうに思うかもしれない。そう、同時にその時のLEDで、陰翳礼讃の世界なんて・・と。実は、この10年でLEDは大きく進化した。太陽光の質にかなり近づいた。ということは、夕暮れの心を打つ夕日を限りなく再現できる、までになった。だからこそ、今こそ谷崎の陰翳礼讃の世界を現代の技術で美しく表現できるというところまできたのだ。
来週、8月26日から、この陰翳礼讃を現代の光技術で体感できる展覧会が始まる。

『LIVE+LIGHT In praise of Shadows「陰翳礼讃」現代の光技術と』

照明とか、光とか、技術とか、なかなかライフスタイルの中でもとっつきにくい分野かもしれない。そこを文学の世界をなぞりることによって、いま生きる私たちの生活にこの世界を反映することができるのだ、という思いをこめてこの展覧会を企画した。照明に携わる方々には、量産ラインにのるものだけではない、新たな照明器具へのヒントを。デザイン全般に関わる方には、改めて時代を経ても変わらない美意識を。そして、一度は陰翳礼讃を読んだことのある方々には改めて光、照明についての関心を。そんな気づきの機会にしてほしいと思っている。ずっと、照明を身近に感じて欲しいと唱えてきた自分へ、声をかけてくれて今回の機会のきっかけをくれた彫刻の森芸術文化財団さま、ただただ真っ直ぐに実現したいという熱意を汲んでくれて快く演出協力を受けてくれたルフトツークの遠藤さん、そして遠藤さんから声をかけていただいた、グラフィックの林さん、サウンドスケープの畑中さん、そして今回この展覧会への思いを理解し共感してくれた照明関連企業の方々、展覧会で陰翳礼讃の世界を描くに必要な品々を快く貸し出ししてくれた協力企業の方々へ、本当に心から感謝の気持ちでいっぱいだ。まだ、伝えるためのほんの一歩かもしれないが、どうか多くの人に見にきて欲しい。自分は会期中全日程会場に居る予定なので、文章では書ききれない思いを直に伝えたいと思っている。

【開催概要】
展覧会名:LIVE+LIGHT In praise of Shadows 「陰翳礼讃」現代の光技術と会期:2022 年8 月26 日(金)~2022 年9 月25 日(日)
会場:BAG-Brillia Art Gallery-
〒104-0031 東京都中央区京橋3 丁目6-18 東京建物京橋ビル
開館時間:11:00~19:00(定休日:月曜)※祝日の9 月19 日(月)は営業(翌日振替休)
主催:東京建物株式会社
企画監修:公益財団法人 彫刻の森芸術文化財団
企画制作:株式会社LIGHT & DISHES
演出ディレクション:遠藤豊(ルフトツーク)
サウンドスケープ:畑中正人
グラフィックデザイン:林琢真
協賛:シチズン電子株式会社、株式会社アンビエンテック、カラーキネティクス・ジャパン株式会社、ウシオライティング株式会社、株式会社ライティング創、株式会社新光電気(敬称略)
協力:日東電工株式会社、輪島キリモト、株式会社浜田兄弟和紙製作所、株式会社歴清社、株式会社DOTWORKS、株式会社脇プロセス、株式会社なんぞ、などや(敬称略)
運営:株式会社クオラス

展覧会では、販売コーナーで新潮文庫の陰翳礼讃を販売する


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