ポスト・ポストカリプスの配達員

ポスト・ポストカリプスの配達員〈99〉

ポスト・ポストカリプスの配達員〈99〉

前  俺たちは敗北した。  奴の、     の操るアルティメット・カブ、デウス=エクス=テシ(郵便仕掛けの神)に、俺たちは指一本触れる事さえ能わなかった。  次元攪拌攻撃も、因果律崩壊斬撃も、ビッグクランチも、無限回に及ぶ無限ニュートン拳撃も、形而上誘導弾も、全てがまるで効果を見せなかった。 「また、ダメなのか」  コックピットに直接乗り込んできた     は俺の目の前でナツキの首の骨を折って殺すと、若干の悔しさを滲ませる声でそう言った。  表情は、分からない。何故なら

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ポスト・ポストカリプスの配達員〈37〉

ポスト・ポストカリプスの配達員〈37〉

前  ――未だ出力が回復しないエンジンを動かし、俺は突進をしかけた!  無論ただの特攻ではない。三基ある相転移ビッグバン・郵子生成エンジンの一つ、ℵ〈アレフ〉0は未だ再生していないが、残りのℵ1とℵ2を最大効率で同調、出力を臨界へ。ヤタガラスの最終兵装である金鵄神弓〈アイン・ソフ・オウル〉を、出会い頭にブチかます。万全の状態に比べればチャージに僅かばかり――数フェムト秒程のラグが生じるが、一度加速さえすれば無限大の速度でどの様な相手でも確実に仕留める事が出来る――  筈だっ

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ポスト・ポストカリプスの配達員〈36〉

ポスト・ポストカリプスの配達員〈36〉

前  時を少し巻き戻し、スペース・ゴヅラが撃破された直後。俺は戦艦大和の残骸に近づくと、ナツキ達に呼びかけた。 「ナツキ、トライ、無事か!?」  即座にトライからの反応が返ってくる。 『ええ。私もナツキも怪我はありません。ただ――』 『貴機がトリスメギストスの制御AI〈プレリュード〉ですか?』  会話に割り込んできたのはタチバナだった。 『おや、貴女はヤタガラスの……初めまして、タチバナ』  トライとタチバナの間で速達郵メール通信が行われ、情報の共有が一瞬で行われる。 『な

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ポスト・ポストカリプスの配達員〈35〉

ポスト・ポストカリプスの配達員〈35〉

前 『頭上に注意して下さい。大王紙魚群生地です』 「うええ……気持ち悪い……」 「これだから婦女子は。虫程度を気にしていてはこの先進めぬぞ。むしろ貴重な蛋白源獲得機会と捉えんか」 『大王紙魚はここ――旧帝都屍街に適応した生態を獲得しており、強酸性の体液と小切手由来の爆発反応装甲、それに雑食性となっており人も襲うようです』 「――先を急ぐか」  ジップラインによる縦孔降下が終わり、今ナツキとトライ、そして護衛を買ってでたタグチは旧帝都屍街――かつて霞ヶ関と呼ばれた遺構を歩いて

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ポスト・ポストカリプスの配達員〈34〉

ポスト・ポストカリプスの配達員〈34〉

前  衝撃と共にあらゆる電源が落ち、凄ノ王艦内は一瞬の闇に包まれた後、すぐに予備電源に切り替わった。だが――重力制御が切れている。直後、浮遊感が襲い来たり、避難民から悲鳴が上がった。  慣性の法則と重力が同時に復活し、ナツキと避難民達を振り回す。しかし彼らが床や天井の染みになる事はなかった。ナツキとトライの進言により、タグチ率いる軍が彼らを壁にバンドで固定していたからだ。呻き声が上がるが、少なくとも死者は出ていない――まだ。だがこのまま重力制御も電弱制御も復活しなかった場合

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ポスト・ポストカリプスの配達員〈33〉

ポスト・ポストカリプスの配達員〈33〉

前  CRAAAASH!!!  凄ノ王の草薙剣が、真っ二つにへし折れた。ヤマタノオロチの鱗状の装甲は拡大して観察してみるとその一つ一つがブラックウィドウの顔をしており、厭わしき呪言を呟き続けることによってタクシス絶対不可触領域を展開している。ケージ粒子どころかヒッグス粒子まで拒絶するそれは、彼方の世界に属する暗黒のテクノロジーの片鱗であった。 「おい、平気か! おい!」  タグチはヤスオミに呼びかけるが、今や血涙と鼻血を垂れ流しながら精神を完全に凄ノ王の操縦に没入させている

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ポスト・ポストカリプスの配達員〈32〉

ポスト・ポストカリプスの配達員〈32〉

前 『警告、警告。本艦はこれより人型最終決戦モードへと移行します。艦内の重力加速度は最大20Gまで相殺可能ですが予期せぬ事故が発生する恐れがあります。お近くの手すり吊革にお掴まり下さい』  艦内に鳴り響くアナウンスに、ナツキは医療品が満載されたコンテナを運ぶ脚をふと止めた。 「……トライ、こんな機能知ってた?」 『寡聞にして存じませんね。どうやら旧日本帝国軍の中でも最重要機密だったようです。先の艦内ネットワークハッキングの際にも制御系を発見出来なかったことを鑑みるに、このシ

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ポスト・ポストカリプスの配達員〈31〉

ポスト・ポストカリプスの配達員〈31〉

前  俺は思わず目を閉じ、無駄だと理解しながらも衝撃に備えた。だがいつまで経っても手足が吹き飛ぶような震盪は襲ってこず、俺はゆっくりと目を開ける。そこには、様々な数値が踊るホロディスプレイ群、そしてちょうど手の届く場所に配置されたスーパーカブそっくりの操縦桿があった。コックピットだ。  俺はヤタガラスの中にいた。背中のジェットパックは突入直前にパージされたようでなくなっている。あれだけの加速度も重力制御の御業を持ってすれば何の問題もなかったということか。トライも前もってそう

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ポスト・ポストカリプスの配達員〈30〉

ポスト・ポストカリプスの配達員〈30〉

前  巨大黄金スリーター――ヤタガラスは重力制御された機体特有の静謐さで宙へと浮かぶと、阿鼻叫喚と化した戦場を睥睨するように太陽を背にして静止した。その一瞬だけ、地上から全ての音が消えた。  百鬼夜行のバケモノ達は例外なく皆空を見上げ、そこに己が情報子〈ミーム〉に持つ欠落――郵子力の充実を感じ取り、憤怒とも歓喜ともつかない叫びを上げた。  まず最初に動いたのはミノタウロスだ! 逆関節の四足を用いて弾道ミサイルの如き勢いで宙を駆けると体長の半分近くもある長大な超振動プラズマブ

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ポスト・ポストカリプスの配達員〈29〉

ポスト・ポストカリプスの配達員〈29〉

前  モスクワ上空に、その青色の巨大なスーパーカブは静かに鎮座していた。アルティメットカブ・ミネルヴァ。  空間に残留した僅かな重力波の痕跡、市街地に刻まれた破壊痕、その他膨大な情報をマエシマ・ヒソカは収集する。  重力制御の跡形は一つのみ。波形からしてこれはメリクリウスの物で間違いない――パトリック。愚かな男。カンポ騎士団が健在の頃から問題行動を繰り返していたが、ヒソカが団員の半数を殺し、団が崩壊した時に真っ先に出奔。以来三百年、稀に覚醒しては虐殺を繰り返しまた休眠につく

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