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自分も相手も関係によって変わりゆく 『関係からはじまる』第5章(読書会記録)

 2週に1章ずつオンライン読書会で読み進めているガーゲンの「関係からはじまる」。今回は第5章のまとめです。※あくまで個人の受け取り方・感想です。

📕第5章概要

第5章 変幻自在的存在と日常生活の冒険

 第1章から第4章までの第1部では、「関係」に着目した話だったところから、第5章ではその関係の中の「個人」の視点で書かれている感じです。

📕変幻自在的存在とは

 変幻自在的存在(=multi-being)とは、私たちは関係の中で存在しているので、その関係性に応じて自分自身も変幻自在に変わりゆく、というイメージです。(翻訳者のお二人が、「多面的」では静的なイメージなのであえて「変幻自在的」としたというお話がとても印象的でした)

 わかりやすいのは、私自身は、「母」であり、「妻」であり、「娘」であり、「先輩」であり、「後輩」であり、「友人」であり・・・と、その関係性に応じて「誰か」になっているというものです。

 ただし、決して、「役割に応じた仮面」を身につけているわけではなく、「私」という存在自体が変幻自在的である、ということです。

 ここでは、社会心理学の「状況効果」と呼ばれる、状況によって普段とは180度違うこともしてしまう能力のことが紹介されていました。

📕ハイブリットなシナリオを作っていく

 第4章で登場した「シナリオ」の考え方。これは、他者との協応行為の中でそのやりとりのシナリオはパターン化されているというものでしたが、ここでは3つ新たに登場しています。

●礼儀のシナリオ
 全ての人が用いるよくある協調パターン。おはよう、ありがとうといった通常の会話。

●文脈特定的なシナリオ
 家族、教室、会社など、特定の場面では共通のパターンがあるもの。

●ハイブリットなシナリオ
 上記2つに当てはまらない、自分たちだけの新しい協調の形を生み出す

📕関係から対立をなくすのではなくネガティブな影響を避ける

 例えば子どもと親が対立するとき、そこには親子の関係だけではなく、そのバックグラウンドに無数の(お互いには見えづらい)関係性があります。

 日常生活において、対立する場面は家庭でも会社でもあらゆる場面でありますが、この本ではその対立自体をなくすのではなく、対立から生まれるネガティブな影響を避けることを提唱しています。具体的には次の3つのアイデアが提案されていました。

①理解
 理解の失敗とは相手の気持ちを汲み取れなかったのではなく、相手が招待しているシナリオに参加できていないということと捉えます。
 これに気付けるためには、相手と会話をするときに「話の内容」だけでなく、「関係のシナリオ」を意識して話すことが有効のようです。
 例えば、第4章を読んでから可能なときは実践していたのは、相手が怒り出したとき、「あ!これ怒りのシナリオに入った!」と一歩引いて会話を観察することでした。客観的にその会話を眺めることで、かなり冷静になれます。

②承認
 相手の発言に疑問・不満があるときも、変幻自在的存在だからこそ、一旦承認することが可能です。
 これ、私は「自分に嘘ついてるようで嫌だな」「嫌だと思ってること承認できないな」と思っていたのですが、読書会のメンバーから、「承認=“そういう考えもあるよね” と 賛成=“僕もそう思う”  は違うよね」と言われて納得しました。
 つまり、ん?と思うことでも、「なるほど〜あなたはそう思うんですね」と受け止めることなのかなと思いました。

③価値を認める
 あらゆることが関係によって成り立っている=どんな根拠や価値も関係に起源を持っているという前提があります。
 その中で、対立する意見を持っている人がいたとき、ふと立ち止まって、「この意見が適切になる、背後にある関係性はどんなものだろう?」と、相手のナラティヴを想像することで対立がかなり減らせそうです。
 日常生活で多く想像するのは子どもの世界。これは「親業」の方で特に学んだ部分で、私の視点では「おもちゃを片付けない」だけど、子どもの視点では「今日保育園で話題になったこの遊びに今夢中で楽しくて仕方がない」なのだろうきっと、と、頭ごなしに怒ることを減らそうと頑張っているところです。

 ここまできて、だいぶ具体的な「協調の技法」が示されてきました。
 どれも、意識をすれば実践できるものなので、少しずつ日常生活に取り入れていきたいと思っています。

📖各章の感想はこちら
第1章 誰もが「私」から世界を見ると起こること
第2章 生きている限り関係なしで成り立つものはない
第3章 「心の中のこと」と思ってたことも、全て「関係」による
第4章 関係のシナリオで対話(現実)を変える
第5章 自分も相手も関係によって変わりゆく
第6章 グループ間の対立をやわらげるには
第7章 「知」を作るのは誰か
第8章 多様な参加の輪が教育にも有効
第9章 セラピーも関係で捉え、自分自身のナラティヴも変えていける
第10章 関係の視点で捉えた組織・リーダーシップのあり方
第11章 自分の価値観を押し付けないことで対立を柔らかくする
第12章 関係から成り立つ全てのことに感謝を

もう少しわかりやすい入門書はこちら→「現実はいつも対話から生まれる

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