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セラピーも関係で捉え、自分自身のナラティヴも変えていける 『関係からはじまる』第9章(読書会記録)

 2週に1章ずつオンライン読書会で読み進めているガーゲンの「関係からはじまる」。今回は第9章のまとめです。※あくまで個人の受け取り方・感想です。

📕第9章概要

第9章 関係の回復としてのセラピー

 第9章は第3部「専門的実践における関係規定的存在」の3章目で、セラピーを掘り下げた回でした。

📕心の病気への批判

 現代は心療内科は予約がいっぱいで、メンタルヘルスで休職する人も多くいて、心の病気が増えているかのように見えます。
 本章では初めに、関係規定的存在という見方をすると、そもそも心の病気と思っていたもの、薬を飲んで直すべき対象というのは、あくまで限定的な捉え方だということが載っています。

 例えば、「きーーーーー!!!」と大声で叫ぶ人が通りにいたら、今の私たちは「病気なのかな」と思ってしまいますが、文化や時代によってはそれが当然の感情表現として認められているということもあるかもしれません。
 また、大人がやったら変な目で見られるけど、うちの子2歳がそれをやってる今現在、「心の病気で変な人」とは見られません(うるさいわって目では見られますが……)。
 このように、1つの同じ行為でも、その関係性(文化や時代なども含む)によって、捉えられ方が異なるということが根本にあります。

📕効果的なセラピーの取り組み

 上記のような注意点が提示された上で、セラピーの役割は、「個人の心」を治すものではなく、過去・現在・未来の関係を変容させるものであるということが書いてあります。
 その上で、3つの枠組みで挑戦的な取り組みが紹介されています。

①肯定
 関係規定的存在の概念では、「これがよい」というものは関係によって決まっていくとされています。そのため、他者との関係の中で「これでよい!」という肯定を日々のやりとりの中から受け取ることが重要になります。
 そこで、セラピストが、クライエントの説明を色眼鏡をかけずに、親しい友人の話を聞くように聴いていくという実践が紹介されています。
 これは、野村直樹氏の「ナラティヴ ・時間・コミュニケーション」という本を思い出しました。

②現実の保留
 この本では、人は変幻自在的存在であり、その関係性によって真逆の態度を取ることもあり得るということが根底にあります。ところが、行為のパターンが固定された人というのも中にはいるということが書かれています。
 このパターンを変えていくためには、例えばいつもと違う「シナリオ」にしてみる(参考 第4章関係のシナリオで対話(現実)を変える)ことや、「円環的質問法(個人ではなくその人を含む関係の輪に注目して質問する)」、仏教の「止観法(辛かった出来事をまっさらな気持ちで様々な角度から見つめ直す)」などが紹介されています。

③現実の置き換え
 囚われたナラティヴ(物の見方)から離れるためには、「問題の例外を探す」「成功したことについて考える」「資源を探す」「明るい未来をイメージする」などのステップや、「支配的な物語」から脱構築するやり方が紹介されています。

📕セラピーのゴールは?

 私自身はセラピーを受けたことがないのでわからないですが、問題がある→セラピーを受ける→スッキリして日常に帰るというイメージでした。
 が、その問題として捉えられているものが関係によるものだとすると、セラピー後の現実も常に変わっていくため、「こう捉えれば治ったと感じられる」でストップではだめです。(常に「合流点」は動き続ける)

 そこで、世界を理解するレンズが1つではなく複数ある状態=使える自己レパートリーが増えることが良いのではと提起されています。
 そして、私たちは「変幻自在的存在」であるが故に、そうした色々な考え方を受け入れ、自分を変えていくことができるということだと思いました。

 今回の章は特に、これまで読んできた色々な章があるからこそ結びつく、不思議な感覚でした。特に第2章ではちんぷんかんぷんだった「合流点」という考え方が、読んでいてすっと入ってきてちょっと感動しました。

 1桁台も終わり、とうとう残り3章分となりました!続きも楽しみです。

もう少しわかりやすい入門書はこちら→「現実はいつも対話から生まれる

📖各章の感想はこちら
第1章 誰もが「私」から世界を見ると起こること
第2章 生きている限り関係なしで成り立つものはない
第3章 「心の中のこと」と思ってたことも、全て「関係」による
第4章 関係のシナリオで対話(現実)を変える
第5章 自分も相手も関係によって変わりゆく
第6章 グループ間の対立をやわらげるには
第7章 「知」を作るのは誰か
第8章 多様な参加の輪が教育にも有効
第9章 セラピーも関係で捉え、自分自身のナラティヴも変えていける
第10章 関係の視点で捉えた組織・リーダーシップのあり方
第11章 自分の価値観を押し付けないことで対立を柔らかくする
第12章 関係から成り立つ全てのことに感謝を

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