だからライバルなんだって
「まつり縫い大丈夫かな?ってちょっと心配」
いつも通りの屈託のない顔で笑いかける。
分かっていることや、もっと出来たことばかりを
そうやって純度100%の親切心で伝えてくる度に、
心の奥底が、張り裂けそうになる。
だって、私にとって、あなたは永遠のライバルなのだから。
❄︎ ❄︎ ❄︎
ものづくりへの憧れは、母の背中からだった。
ピアノの発表会は、毎年母の作るドレスを着て、
図工や自由研究は、必ず手伝ってもらった。
高校最後の体育祭の横断幕を、徹夜で一緒に縫ってくれたこともあったっけ。
無我夢中で創造を続けるその背中が、あまりにもキラキラと輝いて見えたから。
気づけば、私も服飾の道に足を踏み入れていた。
「え〜雪奈が服飾?やっていけるの??」
専門に入学する数日前に、言われた台詞。
単なる親心だったのかもしれないけど、その日はとにかく悔しくて仕方がなかった。
「そんなに器用なイメージ無いけど大丈夫?」
そりゃあ、あなたみたいな器用さも丁寧さも無いけれど。
それを身につけるために学校へ行くのよね?
いいから黙って見守っててよ。
「ママは今日椅子作ったよ。生地から」
私がやっと鎖編みが出来るようになったと報告した途端、こんな返事が来た。
まあ立派なスツールだこと。溢れんばかりの器用さが、今はとにかく憎い。
朝から晩まで手を動かしても、どれだけミシンを進めたとしても、決して埋まる気がしない実力差。
本業ではないくせに、本業にしようとしている娘以上の技術を持っているのが、悔しくてたまらない。
勝手に張り合っては、敗北ばかりしている。
だけど、だからこそ、私は私の、私にしか出来ない物語紡ぎ続けて、あっと言わせてやるんだ。
ライバルなんだから、褒めるなんてするもんか。
これからもずっといいから走り続けなよ。
いつか追い抜いてみせるから。
見返すんだ。絶対に。
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