阪急電車の鳴る頃に
卒業したら、東京で働くのもアリかもって。
都会はあまり得意じゃないけれど、大阪に住み
慣れた今の私なら、いける気がする。
夏休み、帰省の寄り道で4日だけ東京に泊まった。
みんなとバイバイして、独りで満員電車に揺られていると、猛烈な不安が襲いかかってくる。
知らないおじさん達に箱寿司状態で詰め込まれ、
あれ、私、どこに連れて行かれるんだろうって。
❄︎ ❄︎ ❄︎
羽田に向かう京急線のホームで、スーツケースが、誰かの足にコツンと当たった。
いつもなら、すみませんって謝るのに、あの日の
私は、知らんぷりをして、スタスタ追い抜いた。
そんな自分にハッとした。
あぁ、この魔窟に住んだら、余裕なんて消えて、
他人に優しくとか、あの日の夕焼けの美しさとか
全部、忘れてしまうんだろうな。
もちろん、東京出身のあの子達が、優しいことも
東京に色々な乗り物があることも知っている。
けれど、場所に頼りきりの私は、この東京という
怪物に、易々と飲み込まれてしまう気がするの。
そんな時、恋人がおすすめしてくれたバンドの
歌詞を口ずさむ。
今なら分かる。
ギュウギュウに詰め込まれた東京の電車ではなく
ふわっふわの2人席に包み込まれた君と私。
同じ目線の先にある雲の形や、可愛らしい建物を
見ながら、右や左に、カタン、コトン。
知らない子供や、老夫婦も、手元の画面ではなく
この夕焼けをぼうっと眺めていて。
他人なのに、ほんのり仲間意識の生まれる空間。
やっぱりそうだね。
これからも、阪急電車の鳴るこの大阪で、
あなたと共に、綺麗な夕焼けを探していたいな。
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