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読書ノート

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#感想

コナリミサトの強迫的性善説と羅生門的語り――『凪のお暇』と『珈琲いかがでしょう』

コナリミサトの強迫的性善説と羅生門的語り――『凪のお暇』と『珈琲いかがでしょう』

コナリミサトと「他者の合理性の理解」「今さら!?」とぎりぎり言われなさそうなタイミングで、コナリミサト『凪のお暇』を5巻まで読み終えた。人間関係の描写もさることながら(特に嫌味のリアリティがすごい)、「生活」に必要なMPを回復させてくれる要素も持ち合わせる、定期的に読み返したい漫画だった。めちゃめちゃ面白かったので、そのまま『珈琲いかがでしょう』も読み終えた。人がいるのに少し泣いた。

コナリミサ

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2019年1月に読んだもののメモ

2019年1月に読んだもののメモ

今後、ゆるゆる月に1回ぐらいの更新を目指します。

千葉 雅也、二村 ヒトシ、柴田 英里(2018)『欲望会議』自分の研究対象であるポルノグラフィの問題も、本書の中心的テーマ。

千葉雅也先生の合いの手、整理、ブレーキのかけ方は見事だと思ったのだけれども、それをふりほどいてさらにアクセルを踏む柴田さんには危うさも覚える。とりわけ問題だと思うのは、「フェミニスト」を非常に一枚岩としてとらえているので

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【感想】穂村弘最新歌集『水中翼船炎上中』――セックスの歌

【感想】穂村弘最新歌集『水中翼船炎上中』――セックスの歌

穂村弘さんの最新歌集『水中翼船炎上中』の感想、というかほとんど好きな歌を引用して並べておくだけになるのですが、今更ながらさらっと書き残しておきます。

『手紙魔まみ、夏の引っ越し(ウサギ連れ)』以来、実に17年ぶりの歌集。「昭和」「ノスタルジー」をテーマにしてきたここ最近(といっても十数年経ったわけですが)の集大成。

「歌集にまとまったおかげで、後期穂村さんの歌がこれで読みやすく、批評しやすくな

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閻王の口や牡丹を吐かんとす――『みだれ髪』後半5首選

閻王の口や牡丹を吐かんとす――『みだれ髪』後半5首選

※2015年4月26日のブログ記事を移転しました

千種創一さん主催「青空勉強会」の第4回、与謝野晶子『みだれ髪』の後半戦が4月25日に行われた。
前回の僕の感想はこちら。
最近ブログ更新にかけられる時間が限られているので、ごく簡単に今日の感想をまとめる。

発表担当は、結社「塔」、同人誌「穀物」の濱松哲朗さん。
「頻出する韻やリフレイン、それに基づく調べは、長唄などの近世日本文学由来のものでは

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藤木TDC『アダルトビデオ革命史』を読んで

藤木TDC『アダルトビデオ革命史』を読んで

※2015年4月4日のブログ記事を移転しました

藤木TDC『アダルトビデオ革命史』(2009,幻冬舎)を読んだ。
機械音痴で録画すらまともにしたことがない僕が不得意な、ハード面の歴史、つまりAVにおける「産業革命」の記述が充実していて嬉しい。

僕の卒論的に興味深く読んだのは、第二章「AVの誕生」と第五章「AVの新しい波」。
第五章は、卒論で重要になるキーワード「ハメ撮り」の、誕生について書か

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【感想】石井僚一第一歌集『死ぬほど好きだから死なねーよ』

【感想】石井僚一第一歌集『死ぬほど好きだから死なねーよ』

石井僚一さんが、とうとう第一歌集『死ぬほど好きだから死なねーよ』を出版された。

これは本当にめでたいことだと思うので、拙文ながら感想を書いておきたい。

石井さんは1989年生まれ。北大短歌会出身。

2014年、父の死を詠んだ連作「父親のような雨に打たれて」で第57回短歌研究新人賞を受賞。

しかし受賞直後、北海道新聞のインタビューに答えて、父がまだ生きていることを記者に明かした。このことにつ

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