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ぐん税ニュースレター vol.39 page05 -FP通信 Part②-

Part1の記事

iDeCoのデメリットの話をする以前の根本的な話

Part①の最後にあげたiDeCoのデメリットですが、これって資産運用においては当然すぎる話だと思います。余裕資金で運用すること、リスクを認識すること、ライフプラン(生涯における収入と支出)を考慮することは必須条件です。これができない人はまず日頃のお金の付き合い方から見直した方がいいぐらいです。こうしたデメリットの話がでてくるのは根本的に日本の投資リテラシーが低いことの現れだと思っています。ノーリスクでお金が増え続けるなんて都合のイイ話は投資詐欺でしか聞きません。
アンケートで資産運用しない理由として、現金以外で保有することや購入した金融商品の価値が下がり損することが不安といった理由がよくあげられますが、現金だって持っているだけで目減りするリスクがあります。現にいま歴史的な円安で日本円の価値は下がっていますよね?そのお金でドル預金をしたり米国株式を持っていたりしたらかなり良い運用益がでているはずです。

現金の価値

そして日本は2%のインフレ目標を掲げています(現在のコストプッシュではなくデマンドプルのインフレです)。単純な話をすると日本円の額面はそのままに物価が2%上がるということは日本円の価値が下がるとも言えます。政府がその方針なのですから額面は変わらなくても価値は下がっていくことになります。だからNISAのような制度があるわけです。もちろん企業に投資して経済成長を促すという意味もあります。
このほかに資産運用しない理由としてよくでてくるのが投資に回すお金がないという点です。これはリテラシーの問題とは別に日本政府の経済政策に問題があります。賃上げをしているとはいえ物価高には追い付かず実質賃金は低いままです。実体経済としてはデフレが続いているような状況にも関わらず財政政策は実質的な増税論をはじめとする引き締め路線(緊縮財政)ですし、選挙目当てのバラマキによる付け焼刃のパフォーマンスと高齢者優遇の経済施策(社会保険の負担含む)で本来経済を回すべき現役世代にばかり過度な負担を強いています。金融政策はこの経済状況ですから現状の緩和路線でよいと思いますが、ここまで緩和を続けても経済成長しない現状に対して何が悪いのか課題意識を持つべきだとは思います。わざわざ構造を複雑にしてアクセルとブレーキを同時に踏むような愚策をしているうちは先行きが暗いです。
ちなみに円安は金融緩和政策のせいだ、という人がいますが今日本で金融を引き締める(利上げする)と中小企業を中心に数多くの企業が疲弊してさらに経済は萎縮すると考えています。昨年の歴史的な円安の理由は日米金利差とする説明がほとんどでした。今もその状況が続いていることに変わりありませんが、既に米国や欧州の利上げペースはピークを過ぎ直近では日本円以外の主要国通貨は対ドルで持ち直してきています。それにも関わらず日本円だけは昨年の最安値間近(151.9円台)というところまで下落が加速しています。
投機的な動きもありますが、そろそろ日米金利差だけでは説明がつかない状況、つまりは日本経済の低迷、国際市場での競争力の低下という見方もできるのではないかと思います。なおこの円安効果で輸出関連をはじめ海外展開している企業は最高益を出していますが、内需が回復しない限り経済成長は見込めません。

投資を促す前に

ちょっと脱線しましたが、投資に回すお金がないという問題はそれだけ根が深いということです。お金がないからNISAとiDeCoどちらがいいの?という話になるわけです。政府が用意したこの投資の枠組みにしても、そもそもそのためのお金を持っていない(または投資枠を使い切れていない)わけですから政策の順序が間違っています。お金をバラ撒いてもすぐに貯金に回すのは日本人の悪い習慣とも言えますが、そういうマインドにしてしまっている国に問題ありです。最近友人に「新NISAが始まる前に現行NISAの口座を開設した方が良いって聞いたんだけど、どういうこと?」と聞かれ一通り説明しましたが、最後に「でも現行NISAの上限800万円と新NISAの上限1,800万円、あわせて2,600万円を投資に回せる?」と聞くと会話が終了しました。まずは家計が投資に回せるお金ができるよう根本的な経済対策をしてほしいものです。

ファイナンシャルプランナー 原


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