ごーせん

文筆家です。 日常は妄想と偏見と強烈な自意識で満ちています。

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マガジン

  • 書評的な、あと叙情的な何か

    折に触れて読んだ本の記憶が、私の追憶と共鳴する時、その瞬間が静かな空間であればあるほど、私は「失われた時を求めて」のプルーストとなる。

  • あなたと紡ぐフォトエッセイ

    1人でいると不安になるから。 だから、だから、あなただけでも私のことを知って欲しい。認めて欲しいの。

  • 本当はキナ臭かった童話全集

  • ごーせんの掌編小説

    手のひらにおさまる感情と追憶、記憶を吹きかけてあなたの鼻梁へ香りを飛ばします。

  • ごーせんのエッセイ

    心の底にある、感情のヒダを一つ一つ丁寧にもみほぐし、浮上した思いを言葉に乗せて囁きます。

最近の記事

  • 固定された記事

私たちに潜む「傲慢と善良」

辻村深月という作家が直木賞作家であり、著書の中にはアニメ化されたり、映画化されたりしているものがあることは知っていた。 しかし、アマノジャクな私は有名作家はみんな読んだことがあるだろうから、もっと掘り出し物作家を読みたいという思考のもと、辻村作品のどの作品も目を通したことはあまりなかった。 ”あまりなかった”というのは、唯一「ツナグ」を途中まで読んだことがあったからだ。 知人宅に遊びに行った時に、本棚にあったのを手に取り少しパラパラと読んでみたのだ。 「面白そう」と思

    • 僕たちに必要なもの「おおきな木」

      きっと僕たちは戻ってくるだろう。 あの日無邪気に遊んだあの場所に。 忘れていた心のドキドキを思い出して、なぜか悲しくも色褪せないあの日々に想いを馳せて。 僕たちは子供から大人へと成長する。 大人の階段を登っていく。 一歩ずつ。 そしていつの間にか、心も身体も成長し、成人して恋をする。 仕事をする。 結婚する。 子供が生まれる。 そして、若い時分の「若気の至り」が抜けきれぬまま向上心故に行動して失敗をする。 あれやこれやと動き回り、自分とは何かと考え、苦し

      • なぜ金曜ロードショーで「ジブリ」がやっていたらテレビのザッピング中でも手を止めてついつい見てしまうのか

        夏はジブリ。 3週連続ジブリも珍しくはないと思う。 夏の夜、金曜の夜は猫も杓子もジブリ祭りだ。 私は一つ気づいたことがある。 そう、表題の内容について多くの方が共感するのではないだろうか。 ジブリは何回テレビで放送されても、リピーターがいるから何度も何度も金曜ロードショーでやるのであり、たまたまつけたテレビでジブリがやっていたらついつい観てしまうと言うのが大半の人の本音ではないだろうか。 そう、ついつい観てしまうのだ。 ジブリって何なのだろうか。 何であんなに

        • 最低で、最悪で、最高な「地面師たち」のウタゲ

          Netflix(ネットフリックス)の「地面師たち」が巷で一躍ブームを巻き起こしている。 超天才的で、キレキレで解像度の高いきめ細やかな詐欺犯罪グループがそこに登場する。 その圧巻の手法に、エピソード7までを一気見すること間違いなしだ。 「地面師になりませんか? 今度はあなたが誰かを地獄に突き落として見ませんか?」 圧巻のハリソン山中こと、豊川悦司。 不幸オーラを否応なく身にまとう、辻本拓海(つじもとたくみ)こと、綾野剛。 他、北村一輝やピエール瀧、小池栄子と全て

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          0本
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        記事

          「ナベちゃんのヨメ」がヤバいってよ

          「共依存」という言葉がある。 もしかしたら学生時代に友人だったアイツが、あの子が結婚した相手は、世間の常識から著しくズレていて彼を、彼女の人生を全く違う方向へ、マイナスの方向へ導いてしまうかも知れない。 だけどアイツが、あの子が、その相手のヤバさに気付かずに、彼が、彼女がそれで幸せならそれでいいんじゃないか。 人の人生とは、そんなものなのかと思わされる節がある。 それでいて、この辻村美月の中編小説には、「男女の友情はほとんどの場合に成り立つことは決して無い」ということ

          「ナベちゃんのヨメ」がヤバいってよ

          新幹線の窓から見える富士山

          忙しい日常を抜け、静寂に包まれる瞬間を持つ時、私は空白の感覚を主に胸を中心にして持つ。 この感覚は私にとって大切なものであり、この空白期間というものが人生をここまで乗り切ることができた一つの要因でもある。 一人の時間を持つということが、どれほどの価値を持つのか。 創作活動をする上では欠かせないこの瞬間に、何かありきたりな感情のネームをつけることを、私はためらう。 「私」という存在がこの世界に溶け込む瞬間であり、静寂に包まれる瞬間であり、透き通った底の知れない深い湖に静

          新幹線の窓から見える富士山

          煙に巻かれたド素人、本物を見る

          私はど田舎出身の都会に住む子持ちの人間だ。 物心ついてから久しいが、社会人になってから保険に関しての営業を無数に受けてきた。 保険の仕組みは相互補助の観点からもとても良くできたものだと思う。 しかし、保険の営業マンが家に上がり込み、年収や世帯状況を聞かれ、ようわからん煙に巻くような説明を受け、結局ようわからんまま勧められた保険商品を選択し、契約する。 そして後で振り返った時、残るのはようわからん保険商品の契約内容と上手く言いくるめられたなぁという後悔の気持ちである。

          煙に巻かれたド素人、本物を見る

          結局、性(サガ)は変わらない

          自己分析すると私は自意識過剰で、少しナルシストで目上の人に怒られるのが怖い。 強くなりたいと漠然と思い、社会人になってからは自己啓発書を読み漁ったこともあった。 東京に住み、人並みの挫折を感じた中である日、布団の中でボーっと考えて思ったこと。 それは、「人の本性は結局変わらない」ということ。 その時、布団の中ではある過去の記憶を回想していた。 小学校5年生の夏、私は1000円札を友達に渡した。 心の痛みと共に私の手元を離れて行った1000円札は、その日の夜、友達の

          結局、性(サガ)は変わらない

          ギャランドゥーのワルツ

          ワルツという言葉を、ご存知だろうか? 音楽に関係する事だと認識する人は多いと思う。 ウィキペディアを確認してみてもそんな感じだ。 私はこの言葉を私の愛しい「胸毛」に由来するものとして読者諸君にお伝えしたいと思う。 胸毛、否、ムナゲだ。 MUNAGE。 ここでいう「ムナゲ」とは、下記の毛であると定義する。 ・乳首の周りに生えている毛 ・乳首と乳首の間の皮膚に生えている毛 ・ヘソの周りや、ヘソ下に生えている毛 あれは、仕事終わりに電車で帰宅した後、風呂に入り、

          ギャランドゥーのワルツ

          田中、会社辞めるってよ

          「田中、会社辞めるってよ」 コピー機で書類をスキャンしながら、オレは中山に耳打ちするように囁いた。 「え、マジすか!?」 少し驚いたような拍子抜けしたような表情で中山はオレの方を向いた。 青天の霹靂、というやつか。 田中が青井部長からパワハラを受けているとオレに相談があったのは、今回の現場の件より以前の話だ。 しかし今回、現場で青井部長と喧嘩して、田中の堪忍袋の緒が切れて何も言わずに帰ってきたと聞いた時、正直マズイなと感じた。 いかにもテンプレートに添ったような

          田中、会社辞めるってよ

          嫁の足音にドキドキするオレ

          今日はオレの番のはずだ。 昨日と一昨日は嫁の番だった。 風呂上がりの洗面所で、髪を乾かしながらドライヤーの轟音の中に嫁の足音がないか常に伺っている。 今んとこ大丈夫だ。 今日は妻がご飯担当で、保育園の迎えもやり、風呂も寝かしつけも行っている。 俺は夕食後の食器の片付け。 昨日と一昨日は逆だった。 在宅ワークは、ラクだが業務後の家事や育児がついて回るからそれが大変だ。 とにかく子供2人を風呂に入れてタオルで拭いて、ドライヤーで髪を乾かしてやるのはホトホト疲れる。

          嫁の足音にドキドキするオレ

          なぜ犯罪者は低学歴の人が多いのか

          YouTubeにある動画が投稿された。 その動画の中で、建設現場で働く初老の建設作業員同士が映っていた。 おそらくその動画は、作業の休憩中に撮られたものなのだろう。 その作業員同士は口論になり、どんどんエスカレートしていた。 それを第三者が撮影しているという構図だ。 一方の作業員が意味不明な言動でまくし立てているのに対して、もう一方の作業員は頭に血が登っているのが見受けられるものの言い返せずにいた。 ひたすら意味不明な言動を一方が繰り返して、それをひたすら歯軋り立

          なぜ犯罪者は低学歴の人が多いのか

          「壁ドン」で壁が崩壊した際の処方箋

          お世話になっております。 先日はご対応頂きまして、ありがとうございました。 首題の件に関しまして、私の方から簡単に対処法を説明させて頂きます。 まず、昨今の「壁ドン」という概念の定義づけとして、これを読まれる方々の中にはまだ曖昧模糊とした思いをお持ちの方もおられるかと思いますのでそちらから説明致します。 「壁ドン」というのは、割と背の高い(日本男児の平均身長より4、5センチ以上高い)男性で、ご自身のことを外見的に優れていると思われる方が、比較的容姿の整った女性をなんや

          「壁ドン」で壁が崩壊した際の処方箋

          「オレかっこいいぜ」が溢れている

          ペデストリアンデッキのモニュメントの前のベンチで足を組んでいる日焼けした高校生男子。 ツーブロックを決め、ワックスでいい感じの頭の雰囲気を醸し出し、制服のシャツをズボンから出して、スマホを片手で斜め上の方角を見入っている。 これから彼女でも待ち合わせしているのかい? 彼の瞳の奥、否、心の奥底では「自意識」が溢れ、全ての彼の意識は彼自身の風貌をメタ認知で捉えているのであろう。 要は、潜在的に「オレかっこいいぜ」が溢れている。 オレかっこいいぜが溢れている男子はゴマンと

          「オレかっこいいぜ」が溢れている

          私小説の文豪:西村賢太「苦役列車」

          彼の筆致には底辺の底の底で絶望し切った男の極度の「諦観」という無敵さを感じる。 「無力」は、「無敵さ」と往々にして同義であると考えさせられる。 西村賢太氏の「苦役列車」を読むとそう思わずにはいられない。 私が西村賢太氏を認識したのは、大半の人がそうであるように彼がこの「苦役列車」という私小説で芥川賞を獲得した2011年だった。 当時の記者会見で、「そろそろ風俗に行こうかなと思っていた」と発言した内容は度肝を抜いた。 こんなに失うものが無い人間がいるんだなあと率直に感

          私小説の文豪:西村賢太「苦役列車」

          こじれた人間関係を修復する方法

          大輝は、妻との関係がギクシャクしていることに気づいていた。 この関係性はこの先ずっと続いていくのではないかと言う不安と闘っていた。 大輝は、優柔不断な性格から、自分の弱さと向き合うことから逃げていたのだ。 優しさとは、臆病さの裏返しである。 優しさとは、嫌われたくないと言う思いの裏返しである。 優しさとは、認められたいと言う執拗なまでの負の執念である。 優しさとは、臆病さと表裏一体である。 優しさとは、つまり軸を他人に委ねてしまっている心理的状況のことなのだ。

          こじれた人間関係を修復する方法