ゴロノンレンズ

個人で写真用レンズの研究・設計をしていますクラウドファンディングでの製品化を目論んでい…

ゴロノンレンズ

個人で写真用レンズの研究・設計をしていますクラウドファンディングでの製品化を目論んでいます 写真も撮ります。MFレンズでよく撮ってましたが脳卒中の後遺症で左片麻痺になったので厳しいかも 脳卒中で死にかけて入院(2021年3-10月)

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記事一覧

S-TIH53とS-TIH53Wの違いは

グーグル検索のサジェストでそんなワードが出てきました。 日常生活には何の役にも立たない非常にニッチな情報なのですが、サジェストに出てくるということは少なくない回…

紫外線とガラス

紫外線とは紫外線は、電磁波のうち波長が可視光より短くX線より長いもののことです。具体的には波長10-400ナノメートル (=nm) 程度の電磁波を指し、最も短いものと長いもの…

【特許研究】AR眼鏡用ガラス~光学ガラスの新たな戦場となるか~

AR眼鏡とはこんな装置表示装置の正面には回折格子があり、回折格子は正面から入射した光線をほぼ真横へぶん投げます。この光線は板ガラス内部で全反射しながら眼球の方向に…

EDガラスは蛍石レンズを超えたのか?

蛍石とは蛍石とはフッ化カルシウム$${CaF_2}$$の結晶のことで、天然に産出する高品質の蛍石結晶は光学材料として使用可能なレベルの透過率や均質性を備えており、光学系の…

チタンガラス

なぜチタンガラスかというと、 ツイッターを見ていたら12月25日はチタンを元素として発見したイギリスの鉱物学者ウィリアム・グレゴールの誕生日だという話題があったので …

光学ガラスの歴史 (1)

■前史初期の光学ガラスは既存のガラスの組成をほとんどそのままに品質のみを改善したものでした。初期の光学ガラスの基礎となった非光学用途のガラスについて解説します。…

トリウムガラス(2)

コダック1939年 この発明はホウ素40%ランタン60%の組成を持つ新種の2成分ガラスの発見が中核となっており、このガラスを多成分化した種々のガラスについて組成・光…

トリウムガラス(1)

トリウムガラスって何? トリウム(より具体的には二酸化トリウムThO2)が入ってるガラスです。 トリウムガラスは、カメラレンズなどで光学ガラスとして使用されていまし…

ねこ

1960-1970年代の高屈折率低分散ガラスの発展

1960年代から1970年代にかけての高屈折率低分散領域の光学ガラスの発展の流れについていくつかの特許文献を参照しながら記述しています。 背景1960-70年代は、これまで順…

レンズマウント部品の設計

写真用レンズをお作って販売したいなどと言っていますが、光学ガラスと光学設計ソフト開発の話ばかりであまり進んでいません。本当にやる気あんのか?と言われそうです。 …

1971年のニコンのランタンガラス

半世紀前の1971年に日本工学工業株式会社(ニコン)が出願した光学ガラスの発明です。ニコンとはかのカメラメーカーのニコンですが、ニコンは自社製品で使用するために光学…

【特許研究】ショットの光学ガラスLaK22の1976年の特許

ドイツの光学ガラスメーカーのショット(Schott)が1975年に出願した光学ガラスの特許光学ガラスの特許は光学定数(屈折率とアッベ数)や物理・化学・熱的性質とそれを実現…

【特許研究】1971年HOYAのランタン・亜鉛高屈折率低分散ガラス

1971年にHOYA株式会社が出願した高屈折率低分散光学ガラスの特許に関する記事です半世紀前の1971年に出願され審査の末に1978年に拒絶査定された発明です。 光学ガラスは、…

光学設計ソフトの進捗(3)

ガラス品種を検索してデータを表示できるようにしました。 ガラスデータの取り扱いはいずれにしても必要になるであろうからと光学系の読み込みや光路追跡の機能に先駆け…

【特許研究】シグマ35mmF2

出願者株式会社シグマ・出願2020年4月8日・公開2021年10月14日 「正・負・正」タイプのインナーフォーカスレンズ、一枚の非球面レンズのみからなる第2群がフォーカスを担…

S-TIH53とS-TIH53Wの違いは

グーグル検索のサジェストでそんなワードが出てきました。

日常生活には何の役にも立たない非常にニッチな情報なのですが、サジェストに出てくるということは少なくない回数の検索が行われているのでしょう。誰がそんなに大量に検索しているのか不思議ですね(自分ではありません

S-TIH53とは?

S-TIH53およびS-TIH53Wはオハラ社が販売する光学ガラスの型名であり商品名です。このガラス品種は典型

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紫外線とガラス

紫外線とガラス

紫外線とは紫外線は、電磁波のうち波長が可視光より短くX線より長いもののことです。具体的には波長10-400ナノメートル (=nm) 程度の電磁波を指し、最も短いものと長いものでは波長には40倍の違いがあります。これは可視光の範囲が、400-800nmと比較的狭い(最長÷最短が2.0程度)ことと対照的です。

この広い波長範囲のため、全ての紫外線を紫外線と一括りにしていたのではわけのわからないことに

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【特許研究】AR眼鏡用ガラス~光学ガラスの新たな戦場となるか~

AR眼鏡とはこんな装置表示装置の正面には回折格子があり、回折格子は正面から入射した光線をほぼ真横へぶん投げます。この光線は板ガラス内部で全反射しながら眼球の方向に伝播します。眼球の前まで到達した光は眼球の前面に設けられた別の回折格子によって眼球の方向に再び曲げられガラスから射出され、眼球の網膜上に結像します。これがAR眼鏡の原理です。眼球前面の回折格子を透明なものにすれば外界からの光に重ねて映像を

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EDガラスは蛍石レンズを超えたのか?

EDガラスは蛍石レンズを超えたのか?

蛍石とは蛍石とはフッ化カルシウム$${CaF_2}$$の結晶のことで、天然に産出する高品質の蛍石結晶は光学材料として使用可能なレベルの透過率や均質性を備えており、光学系の高性能化に資する特徴的な光学特性を備えていることが発見されました。19世紀には天然蛍石をそのまま研削研磨して顕微鏡用光学系などに使用していました。しかし写真用レンズや天体望遠鏡へ利用するには天然蛍石はサイズが小さすぎました。

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チタンガラス

チタンガラス

なぜチタンガラスかというと、
ツイッターを見ていたら12月25日はチタンを元素として発見したイギリスの鉱物学者ウィリアム・グレゴールの誕生日だという話題があったので

チタンガラスは基本的にに酸化ケイ素を主成分として酸化チタンが添加された光学ガラスです。チタンが主成分というわけではありません。

酸化チタンには強い高分散化作用があるためチタンガラスはアッベ数の低い高分散ガラス(広義のフリントガラス

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光学ガラスの歴史 (1)

■前史初期の光学ガラスは既存のガラスの組成をほとんどそのままに品質のみを改善したものでした。初期の光学ガラスの基礎となった非光学用途のガラスについて解説します。

 ・石英ガラス

酸化物の重量%で表示すると100%ケイ素

二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする鉱物である石英を溶融・固化させてガラス化させたものです。組成はほぼ100% のSiO2に原料由来の微量の不純物が混じったものとなります。

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トリウムガラス(2)

コダック1939年

この発明はホウ素40%ランタン60%の組成を持つ新種の2成分ガラスの発見が中核となっており、このガラスを多成分化した種々のガラスについて組成・光学特性が開示されている。多成分化の過程でトリウムを使用したガラスが試作されたのがトリウムガラスの起源のようだ。このトリウムガラスは、もっとも単純なもの(実施例T)では3成分だったが、ランタンガラスと同様に多成分化した実施例が多数開示さ

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トリウムガラス(1)

トリウムガラスって何?
トリウム(より具体的には二酸化トリウムThO2)が入ってるガラスです。

トリウムガラスは、カメラレンズなどで光学ガラスとして使用されていました。トリウムは放射性元素なので放射能があります。トリウムガラスを使った交換レンズはアトムレンズと呼ばれます。現代ではもはや生産されていませんが、中古市場で売買されています。

トリウムガラスは光学ガラスの一種で、光学ガラス中でも特に優

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1960-1970年代の高屈折率低分散ガラスの発展

1960年代から1970年代にかけての高屈折率低分散領域の光学ガラスの発展の流れについていくつかの特許文献を参照しながら記述しています。

背景1960-70年代は、これまで順調に一方へ向けて発展してきた高屈折率低分散光学ガラスが初めて大きな後退を余儀なくされ、その代替技術の開発に各光学ガラスメーカーが奔走したというある種特徴的な時代でした。

高屈折率低分散光学ガラスは、クラウンガラスに酸化バリ

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レンズマウント部品の設計

レンズマウント部品の設計

写真用レンズをお作って販売したいなどと言っていますが、光学ガラスと光学設計ソフト開発の話ばかりであまり進んでいません。本当にやる気あんのか?と言われそうです。

レンズ系を設計するためのソフトを開発するというややこしいことをしているわけですが、ソフトを開発してレンズ系の寸法を決めないと鏡胴の設計も進まない部分もあります。画像のように3DCADで設計しています。取り付け部の寸法は純正レンズやカメラを

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1971年のニコンのランタンガラス

1971年のニコンのランタンガラス

半世紀前の1971年に日本工学工業株式会社(ニコン)が出願した光学ガラスの発明です。ニコンとはかのカメラメーカーのニコンですが、ニコンは自社製品で使用するために光学ガラス部門を持ち、社内でガラスの開発・生産を行っていました。現在ではガラス事業は光ガラス株式会社に分離したうえで同社がニコングループの傘下に入る形になっています。

ランタンを主な高屈折率化成分とした高屈折率低分散ガラスについての発明で

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【特許研究】ショットの光学ガラスLaK22の1976年の特許

ドイツの光学ガラスメーカーのショット(Schott)が1975年に出願した光学ガラスの特許光学ガラスの特許は光学定数(屈折率とアッベ数)や物理・化学・熱的性質とそれを実現するための組成を、複数のガラス品種をカバーできるように広い数値範囲として特許請求するパターンが多いのですが、この出願では、光学定数・組成を狭い数値範囲でほぼピンポイントで請求しています。
屈折率1.650
アッベ数55.5±1.0

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【特許研究】1971年HOYAのランタン・亜鉛高屈折率低分散ガラス

1971年にHOYA株式会社が出願した高屈折率低分散光学ガラスの特許に関する記事です半世紀前の1971年に出願され審査の末に1978年に拒絶査定された発明です。

光学ガラスは、ガラスネットワーク構成酸化物(SiO2やB2O3が代表的)が構成する乱雑な分子ネットワークに高屈折率化や高分散化などの効果を持つ修飾酸化物が割り込んだ構造となっている。ネットワーク構成酸化物は種類が限られ、酸化ケイ素(Si

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光学設計ソフトの進捗(3)

光学設計ソフトの進捗(3)



ガラス品種を検索してデータを表示できるようにしました。

ガラスデータの取り扱いはいずれにしても必要になるであろうからと光学系の読み込みや光路追跡の機能に先駆けて作っていました。ガラス関連で追加したい機能はまだ色々ありますが、あまりここにばかり時間をかけ続けるわけにはいかないのでこれぐらいにしようかなと思っています

【特許研究】シグマ35mmF2

出願者株式会社シグマ・出願2020年4月8日・公開2021年10月14日

「正・負・正」タイプのインナーフォーカスレンズ、一枚の非球面レンズのみからなる第2群がフォーカスを担う

実施例
・33.81mm F2.07,画角33.47度→公称35mm F2.0の範囲内
・像高21.6mm→フルサイズ用
・バックフォーカスが短い→ミラーレス専用
・インナーフォーカス式
・「正・負・正」で中央の負の第

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