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チタンガラス


なぜチタンガラスかというと、
ツイッターを見ていたら12月25日はチタンを元素として発見したイギリスの鉱物学者ウィリアム・グレゴールの誕生日だという話題があったので

チタンガラスは基本的にに酸化ケイ素を主成分として酸化チタンが添加された光学ガラスです。チタンが主成分というわけではありません。

酸化チタンには強い高分散化作用があるためチタンガラスはアッベ数の低い高分散ガラス(広義のフリントガラス)になります。鉛ガラスの亡き今、高分散ガラスとしては最も代表的な種類になっています。

また酸化チタンはに酸化ケイ素との組み合わせにおいてガラスの化学的耐久性を向上させる効果があり、化学的耐久性の優れたガラスとなります。

チタンガラスは一般に高い高度と低い摩耗度を持つ硬質なガラスで研磨加工性に優れますが、転移点温度は高めで、ガラスモールド非球面加工には不向きです。

光学ガラスの歴史の初期に酸化鉛(PbO)はガラスの高分散化(アッベ数の低下)に大きな効果のある成分として見出されました。酸化鉛のような二価金属酸化物は、多くの場合、光学特性に関する効果のほかに、ガラス組成物の融点を下げて溶融性を向上させ量産を容易にする効果があります。

鉛の使用が忌避されるようになり、酸化鉛に代わる高分散化成分として使われるようになったのが酸化チタン(TiO2)です。

酸化チタンには酸化鉛のような溶融性を向上させる効果はないため、鉛からチタンへの置き換えによってガラスは難溶化し量産性は低下する傾向にあります。しかしそれでもチタンガラスは材料が安価で量産性もそこまで悪くなく、化学的耐久性や加工性にも優れるので、高分散ガラスとしては最も安価で広く使用されているガラスとなっています。

同等のアッベ数を持つ鉛ガラスと比較した場合、比重が小さいことも利点です。

オハラのチタン系品種(TIL,TIM,TIH)を抜き出してアッベ図にプロットしたもの。これらの品種はアッベ数25-50の間に隙間なく存在し、アッベ数が小さくなるほど屈折率が大きくなるという関係があり明瞭な左上がりの系列となっている

オハラはガラスの品種名に主要な成分の名前を付けているのでわかりやすいですが、S-TIL,S-TIM,S-TIHの名がつくガラスは酸化チタンを主要な高分散化成分として用いています。前2文字のTIはチタンの元素記号Tiを表し三文字目のLMHはチタン系ガラスの中での屈折率の大小による位置づけです。TILはチタンの濃度が比較的低い低屈折率(Low)・中分散のグループ、TIHは酸化チタンが高濃度で含まれる高屈折率(High)高分散なグループ、TIMはその中間(Medium)です。

現在では、鉛ガラスからの置き換えを容易にするために鉛ガラスと同一の屈折率・アッベ数を持つように調整されたチタンガラスがラインナップされるようになっています。上図のオハラのチタンガラスの系列はかつての鉛ガラスの系列をなぞる様に作られたものです

鉛ガラスと比べたチタンガラスの欠点として、透過率の悪さがあります。特にチタンを高濃度で含む高屈折率高分散ガラスでは透過率の悪化が顕著で、チタンガラスの高分散化の一つの障壁となっています。ガラスの透過率は組成だけでなく、製造時の不純物の抑制や、溶融時の化学的・物理的状態の制御で改善可能な場合もあり、製造技術の向上により高濃度でチタンを含みながらも優れた透過率を確保した光学ガラスも実用化されています。

オハラのチタン系ガラスについてアッベ数と透過波長の関係を示した散布図です。チタンを高濃度で含む高分散(低アッベ数)のガラスほど透過率が悪化します。
基本的にガラスは短波長になるほど透過率が悪くなり紫外線ではほぼ不透明になります。図の横軸の透過波長は、透過率が80%以下に低下する波長を意味します透過波長が長いということは、長波長側から短波長側に向けて見ていったときに早い段階で透過率が下がり始める透過性に劣るガラスということです。80%透過波長がおよそ400nmを超えてくると吸収が可視光の範囲に及び、人間の目でもわかるような着色が生じたガラスとなります。紫外線~青色光が吸収されるので、ガラスを透かした景色がやや黄褐色に見えるようになります 

このような紫外線域における低い透過性のため、設計波長350nm以下というような紫外線光学系で使用されていた鉛ガラスはチタンガラスへの置き換えは不可能でした。そのため紫外線用高透過率ガラスとして鉛フリーガラスとは別に鉛ガラスの品種を特殊仕様品としてラインナップし続けているメーカーもあります。「一部商品を除き全品半額」みたいな感じで「一部品種を除き全品種鉛フリー化」と謳うために紫外線用鉛ガラスはあくまで特殊仕様品として通常の光学ガラスとは別枠でのラインナップとするのが通例のようですね。。。






図を見ると、アッベ数25以下となると透過波長は400nm以上となり、これがチタン系高分散ガラスの限界となっています。近年ではアッベ数が25よりも小さくかつ透過率の高いガラスも開発されていますが、それらはニオブ・リン系ガラスなどの従来と大きく異なる組成を持つガラスになっています。またチタン系ガラスでも、従来と同一組成で製造プロセスの改良で透過率を改善した品種も開発されています。



チタンは高分散化作用が強く、他の代表的な高分散成分と比べると酸化ニオブの2倍、酸化ジルコン・酸化タンタル・酸化タングステンの約3倍の高分散化効果があります(上原2013,図7参考)。またチタンは種々のレアメタルの中でも流通量が多く価格も安価であるという利点があります。


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