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【システム導入編1:上手くいかない原因はベンダ側ではないんです。発注(ユーザー)側なんです。】

 今回から新マガジンです。今回は、ものづくりの現場でシステム導入する場合のポイントについて解説するシステム導入編になります。IoTが製造現場に必要と叫ばれて数年たちます。本社や外部は工場IoTだ。スマートファクトリーだというものの、当の製造現場の本人たちはピンと来ていないことが多い気がします。そして、いざ本社からIoT活用してみなさいと言われ、サポートがやってきて現場に導入しようとしても、うまくいかないことも多いとが実情でないでしょうか。そういう私も新たなシステムの導入は苦手な部類に入ります。過去、私自身こうしたいと提案しても実行に至らなかったもの、実行は決まったが結果としてうまくいかなかったものがあります。その中でうまくいったものもありますが、勝率は50%あるかないかですね。失敗と成功の差はどこから生まれ、どうするべきかということを後輩と雑談をしていたところ、細川義洋著「システムを「外注」するときに読む本」を紹介してもらいました。この本がすばらしく、非常に参考になったので、今回マガジンで対話式をつかっって解説していきたいと思っています。(ちなみになぜ参考になったかというと“発注者側の課題”について記載してくれていたからです。)本マガジンも全12回-13回のマガジンになると思います。
 さて、今回のものがたりはアドラー心理学編で自分への勇気づけを学び、IoT推進部の課長に昇進した紫耀(ショウ)の部署が舞台となります。彼が課長になってから2年程度が経ち、部署では複数の案件を同時に抱えています。そんな中、あるプロジェクトを担当する部下で配属されてきたばかりの清史朗がなかなかうまくいかず悩んでいるようです。今回は、これまで教わる側だった紫耀(ショウ)が指導側になります。

本マガジンは、細川義洋著「システムを「外注」するときに読む本」を参考に(に沿って)、解釈を入れて記載しています。

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◆プロジェクトが遅れそう?

🧒;おはよう。あれ清史朗どうしたさ、浮かない顔して。彼女にでもフラれたか?うそうそ。なにかあった?

👶;いや、製造1課とやっている製品のトレーサビリティシステムの開発なんですけどあまりうまくいっていないんですよ。ベンダーがトロトロしているというか反応がよくなくて、プロジェクトのスケジュール遅れ気味なんですよ。

🧒:ベンダーがトロトロ?一流どころに依頼していたじゃないか?そんなことはないだろう。

👶:でも私に質問ばかりしてきて全然進めてくれないんですよ。システムのプロなのだからやってくれよって思いますよ。

🧒:むむむ??ちょっと待ってくれ、質問ばかりしてくるっていうのは聞き捨てならないぞ。

👶:そうですよねー。困りました。

🧒;いやいや、待ってくれ。ちがうちが。それは君の発注や依頼の仕方を変えたほうがいいかもしれないぞ。ちょっと業務フロー図と要件定義書を見せて。

👶:え?はい。どうぞ。

◆ユーザーの協力義務

🧒:・・・・・。うーん。これはやはり、もう少し細かく見直したほうがいいぞ。すまん。おれも別のプロジェクトを見ていてすっかりこっちのケアができていなかった。私も一緒に入るし見直しをしよう。

👶:え?でも、この辺のことまで見てくれるのがプロのベンダーなのではないのですか?

🧒;それは大きな間違いだ。突然だけどこんな判例があるのを知っているかい?

 ある通信販売業者(以下、ユーザー)が基幹システム刷新のための開発をITベンダ(以下、ベンダ)に発注したが、スケジュールが遅延し、納品の見込みも立っていないことから、ユーザーはベンダに履行遅滞に基づく解除通知を送付した。
 システムを「外注」するときに読む本これについてベンダは、「この契約解除はユーザーが一方的に行なったものである」として、委託料の残額とその他費用の計約4億8200万円を請求した。
 しかし、ユーザーも「契約の解除はベンダが期限までに成果物を納品しなかったからだ」と反論し、残額の支払いを拒否するとともに、損害賠償等4億5000万円の支払いを逆に求める反訴を提起した。これについて裁判所は、ベンダの作業が遅延した原因は、ユーザーによるインタフェース仕様の整理が遅れたこと、ベンダが移行作業方針及び移行処理方式の確認を求めたのに対し、ユーザーが回答しなかったこと、検証環境構築がユーザーの都合で延伸されたことにあるとして、ユーザー側に残金の支払いを命じる判決を出した。
(東京地方裁判所 平成2年3月4日判決より抜粋・要約して引用)


👶:これって、ベンダーが納期遅延して相互に訴訟を起こし、結局発注側が敗訴したということですよね。

🧒;そうだ。この判決は、システム開発における発注者(ユーザー)」とは「お客様」ではなくて、明確な役割と責任を持った「プロジェクトメンバー」だといっているんだ。プロジェクト中に発生する様々な問題に対して、ベンダと一緒に対応したり、ベンダの作成したシステムをテストするとか、発注側にも果たす義務があるんだ。そして、この発注側の義務のことを「ユーザーの協力義務」と呼ぶんだ。その義務を果たさない発注者は使えないシステムに膨大なお金を払うだけでなく、損害賠償まで請求されることがあるんだよ。

👶:え?そうなのですね・・。ベンダーはシステムのプロだから任せ置けばいいという考えは根本的に間違っているのですね。。す、すみません。

🧒:ああ、でも、今気づいてよかった。君もこれから勉強していけばいいし一緒にやっていこう。それに、そういう風に考えてしまうのは君だけではないんだ。これまで日本のシステムの開発プロジェクトの成功率は3割といわれていだんだよ。失敗というのは、「納期オーバー」「コストオーバー」「完成したシステムが当初臨んだ通りの機能が備わっていない」という3つに当てはまるケースだ。特にシステムが当初臨んだ通りの機能が備わっていないというのは、本当にあるあるだと思うよ。

👶:そうなのですね。でも、この部署に来る前にシステム関連の本を読んだのですがそんなことを書いてある本には出合えませんでした・・。

◆発注側がリードしていく時代

🧒:そうなんだよね。すごくいい本があるから、君にこの本を紹介するよ。これ。

👶:「システムを外注するときに読む本」というのですか。 まさに今の私じゃないですか。

🧒:ちょうど読み終わったところだから貸してあげるよ。この本はシステム担当者やプロジェクトマネジャーに向けて書かれているんだ。つまり発注側目線で書かれている。それも物語形式になっているので非常にわかりやすく、システム開発で必要な知識が詰め込んである。それで、これまでこの手の本が少なかったのは、過去の日本のシステム開発における作業の主導権がベンダにあったために「ベンダと協力して進めていくものだ」という意識が根付いていなかったからじゃないかな。

👶:そうかもしれませんね。私もその視点での問題意識がなくその手の本を探さなかったというのあると思います。

🧒:外注する側っていうのはそこまで経験があるわけじゃないのに、システム開発のプロセスで何が起こるのか、自分たちにはどんな役割があるのか、なぜトラブルが起きやすいのかを学ばないで、ベンダーというシステムのプロと肩を並べて仕事しようって言っても、うまくいかないのが当たり前だよな。

👶:はい。。。私も経験がさほどないです・・。

🧒:だから、発注側こそ過去のシステム開発の失敗事例や地雷のように潜むトラブルを学ばなければならない。そして、ベンダと協力しながら「本当に役立つシステム」を完成させる最低限の知識を身につけなければならないんだ。それに今は、IoTの時代と何度も何度も耳にしているよな。

👶:はい。耳にタコができます。

🧒:その分世の中にはいろんなシステムであったりアプリケーションがあふれている。だからこそ発注側が取捨選択できることができる時代になっている。つまり、システム開発プロジェクトは、発注者が構想し、リードする時代に入っているんだ。

👶:は、はい。ITがわからないからベンダに任せるなんて発想は本当にダメですね。まったく、そんなやつだめっすね。

◆今後の流れ

🧒:おまえや(笑)まあ、だから今回のプロジェクトを実行しながらこの本をエッセンスを解説していく。ちなみに、この本の章立ては下記のようになっている。

第1章:システムつくりは業務フローから
第2章:発注者がこれだけは知っておくべき最低限のこと
第3章:失敗しないベンダの選び方
第4章:社内の協力を得るために
第5章:リスク管理で大拙なこと
第6章:ベンダと適切な役分担
第7章:情報漏洩を起こしてしまったら

👶:本当ですか?ありがとうございます。現実に課題もあるので学びながら実践していきたいと思います。ぜひよろしくお願いします。

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 今回は導入編ということで、システム導入における発注側の役割について解説しました。発注側が主体的に先手先手で進めていくこれがシステム開発・導入では重要です。新規設備導入の際の設備業者とのやりとりも一緒ですね。設備の立ち上げも、受け入れる側(発注側)がどれだけ事前にその設備についてプロセスガイドを読んでおくか読み込むか、これが立ち上げの成否をわけます。ちょっと話はそれてしまいましたが、次回第1章(業務フロー作り)から解説していきたいと思います。すべてのビジネスマンが知っているべき内容かと思います。ぜひ、スキ・フォローお願いします!

また、下記の固定記事に、このnoteのコンセプト、これまでのマガジンについて解説しています。

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