記事一覧
京極夏彦『病葉草紙』
京極夏彦が描く、一風変わった長屋もの。
感じとしては、巷説百物語に近い。起きた事件を、存在しない「虫」のせいにして表向きは収めてしまう。ふと、百鬼夜行シリーズの途切れている続きが読みたくなった。
長屋の藤介さんと周囲の人々との軽妙な会話もくすりとくる。とくに藤介が生まれたときには隠居していたという父親の藤左衛門との遣り取りが気が抜けていて面白い。少し軽めなのは、長屋ものだからなのだろうか。
山口進『昆虫カメラマン、秘境食を味わう 人は何を食べてきたか』
この本を書いたのは、ジャポニカ学習帳の表紙の写真でお馴染みの昆虫写真家さん。様々な珍しい昆虫を撮影するために、世界各地に赴いています。
そして、珍しい昆虫がいるのは、大抵は自然豊かなところ。そして、古くからの食文化が残っているところも多いのです。
この本を読んで、「サゴヤシ」という食べ物を始めて知りました。コメの美味しさが、それまでその地方にあった食べ物に勝りつつあることも。あと、原産地とい
時雨沢恵一『キノ旅ⅩⅠⅩ』
久々に読んだキノの旅。
このバランスが良いな、と思う。
皮肉にもなり過ぎない、諷刺にもなり過ぎない、微妙なバランスで書かれている。
キノとエルメスも本当に良いコンビだな、と思う。時々エルメスの方がとても鋭くて、ハッとする。
あとがきは……オチは分かっていたけど笑いました。
鶴岡真弓『ケルト 再生の思想--ハロウィンからの生命循環』
ケルト文化については、以前から興味があった。
今までで一番ハマッたキャラクターが、アイルランドの出身だったのだ。
そのほかにも、好きな作家がアイルランドの出身だったり、Fate/stay nightの推しサーヴァントがクー・フーリンだったりと、アイルランドとケルトが気になる理由は年々増えていた。
そこで、図書館でこの本に出会ってしまったのだ。
借りるしかない。
私はそう思って、この本を
小山哲・藤原辰史『中学生から知りたいウクライナのこと』
自分は本当にウクライナについて何も知らなかったんだな、と痛切に感じた。
描かれているウクライナの歴史は、とにかく大国に振り回されるもので、悲惨。読んでいるだけで胸が痛む。
あと、テレビを見ていると、どうしても大局的な……言い換えれば他人事的な視点でこの侵略戦争を捉えてしまうよな、と思った。でも、そこには人の生活があって、人の生命がある。それは忘れてはならないなと感じた。
上遠野浩平『ブギーポップは笑わない』
シリーズ最新刊にフォルテッシモが出ると知り、20年ぶりの再読(フォルテッシモふぁん)
徐々に核心に近付いていくところとか、大雑把なところは覚えていたけれど、最後の展開などは全然覚えていなかった。こんなに登場人物多かったっけ!?とその時点でびっくり。一人一人の登場人物にちゃんと役割が割り振られていて、それがとても良かった。
そして、ブギーポップと霧間凪はやっぱり格好良い。大好き。
ブギーポッ
阿部智里『烏に単は似合わない』
最初は、世間知らずのお姫様が入内していびられる系の話かな?と軽い気持ちで読み始めた。
でも、甘かった。
そんな単純な話が流行るわけがなかった。
四つの家の政略関係。女房の不審死。後宮への侵入者。変わりゆく人間関係。そして明らかになる様々な真実。
特に最後にやっと現れた若宮が解き明かしていく真実には、唖然とするほかなかった。本格ミステリー並みの切れ味の良さ。本当にデビュー作!?と疑うほどの
櫻田智也『サーチライトと誘蛾灯』
ブラウン神父シリーズや亜愛一郎シリーズが好きな人には是非オススメしたい、一連の系譜を継ぐ推理小説。
探偵役は、虫を愛してやまないちょっととぼけた青年。彼の行く先々で起こる事件を、彼はちょっとしたひっかかりを元に解決していく。
連作短編で読みやすいし、コメディタッチだから難しさも感じさせない。思わずくすりと笑ってしまうこの小説、オススメです。
峰森ひろかず『少年泉鏡花の明治奇談録--城下のあやかし』
大のおばけずきの少年時代の泉鏡花--泉鏡太郎が、妖怪に見せかけた様々な事件を解決していく話。
展開は子供向けなので読めてしまう部分もあったけれど、元ネタの小説からのアレンジが秀逸。最後の話でそれまでの話が全て繋がるところも好きです。
そしてこの泉少年が、本当に泉鏡花の少年時代に思えて仕方がないのです。おばけずき。博識。そして年上の美しい女性を前にすると称賛の言葉が止まらない。泉鏡花っぽい!と