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空木春宵『感傷ファンタスマゴリィ』

 ミステリーに本格と変格があるように、SFにも本格と変格があるのなら、これは間違いなく変格SF短編集。どこかゴスや社会問題の提起やフェミニズムの要素が漂っている。すごく好き。
 特に好きな短編は
「感傷ファンタスマゴリィ」これが一番ゴスっぽい。死者を写し出す幻燈をキィワードに、くらくらするような世界が広がっていく。
「4W/Working With Wounded Women」一番好きな作品。未来の中国が舞台。世界が上と下に分けられていて、上の人間が負った傷は全て、下の世界の《冥婚相手》に転嫁される、というひどい世界。その世界で懸命に生きていく女性たちの姿が逞しくて素敵だった。
「終景累ヶ辻」さまざまな怪談の幽霊たちの死に様がループしながら幾重にも描かれる。ループする度に変わっていく彼女たちの死への臨み方。短いけど印象的な作品だった。
「ウィッチクラフト≠マレフィキウム」フェミニズムとアンチフェミニズム、この二つを魔女とそれを破壊しようとする騎士団に象徴して描いた作品。ギリシャ神話に詳しいとより楽しい。アンチフェミニズムの男たちの考えや行動には反吐が出ると感じた。

次回作が出たら、是非とも読みたいです。

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