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「会社で良いサービスを作るには」 がやてっく~誕生前夜~ #17

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▼我が道を行く▼

DXという概念を捉えるため、イシューから考えるという方法を発表した僕と荒井さんは、結局プロジェクトメンバーから煙たがられてしまった。

このプロジェクトの仕掛け人だった山本さんさえ、我々とコンタクトを取る事を止めてしまった。

フラットな目線でこの状況を観察するなら、後ろ盾を失ったという事になる。それはとても焦る事なのかもしれない。地域PICKSという構想のインタフェースは、我々の中でも一番役職が高い山本さんに託されていたのだから。

連絡手段と支柱を同時に失った時のショックは計り知れないものなのだと思う。というか単純に、人に裏切られるというのはきっと悲しいものなのだ。

ただ、僕たちにはあまり関係が無かった。

例え周囲が敵になろうと、やろうと思ったこと・可能性があると信じたものを疑う必要はない。それとこれとは話が別。全く無関係の問題なのだ。そもそも、そんなことを気にしているなら、最初から提案などしないほうがいい。

この構想がプロジェクトという形に変化したときから、これくらいのねじれがある事は予想していたし、障がいがあることは覚悟していた。

そう、会社で良いサービスを作るために必要なもの。それは覚悟なのだ。

大勢の人間が働いているのだから、当然足の引っ張りあいになる。自分の地位が、たった一つの素案に脅かされることもあるし、能力の差を目の当たりにした権力者が、自分の地位を守るために全力でつぶしに来ることだってある。

組織が大きくなるという事は、こうした競争と嫉妬を生むということなのだ。

だからこそ、「やりたい」という欲求をブラさず、たとえ何が起こっても気にしないという覚悟を持たないといけない。

「組織だから、そういう事もあるよね~(笑)」

「とりあえず、この方針に従ってちゃちゃっと商品を設計しちゃいましょう(笑)」

僕と荒井さんは誰になんと言われようと、最後までこんな感じのスタンスだった。2人だけになっても、あんまり変わらなかった。結果、出来上がった商品設計図は軸がまったくブレていない、DXという要素が絡んだサービスに仕上がったのだと思う。

覚悟を持てないなら、組織で新提案なんてしない方がいい。正常な組織でも、必ずどこかで障がいは発生する。強靭なメンタルは覚悟に依存する。僕たちはそれを理解していたのだった。

▼社会課題から考える▼

コンサルが僕たちに対して用意した「フレームワーク」は、生活に関する課題を想像力で補いながら商品を設計していくというものだった。

簡単に言えばマーケットインという考えだ。自分たちがすでに抱えているお客さんの課題を考える。自分たちが抱えているお客さんを想像して対策を練る。というものだ。

もちろんこの方法は時と場合によっては大きな力を発揮する事になる。それこそ、コンテンツなんかを考える時はこの方法が強かったりする。

ただ考えてみてほしい。今、この世で解決しなきゃいけない生活サポート的な課題なんてあるだろうか?

国内では少なくとも衣食住が保証されるようになった。そういう制度もほぼ出来ている。これ以上、生命の危機やより良い暮らしを演出するための課題を提示するは難しいと思うのだ。

ましてや、始めるハードルが比較的低いネットサービスにおいて、生命維持課題や生活課題を見つけるのは難しい。思いついたものは、すでにもう誰かが成功させているし、似たり寄ったりなサービスなんて沢山あるだろう。

だからこそ僕たちは、社会課題に目を向けた。

弱者や生まれながらに選択肢が少ない人に対し、貢献的な意味合いを持たせることが出来るサービス。ネットという距離や時間を超えたコミュニケーションは、今まで見過ごされてきた「社会福祉課題」や「社会貢献への課題」、もっと言えば「環境への課題」をビジネスとして成立させることが出来る。

コンサルが用意したペルソナ分析において、僕と荒井さんは黒木瞳さんという人格を生み出した。これは、C社が抱えているお客さんとは全く違う人物像だ。

C社が今まで相手にすることが出来なかった、お金を払ってもサービスを受けたいと思う読者。いわば富裕層をイメージした。

ここまではプロダクトアウトだ。これから先、中間層はいなくなり、プレミア層やVIP層へのアプローチが必要になるという、時代の流れに沿った仮説からペルソナを構成している。

社会課題を持ち込もうとしたのは本当に偶然だ。

ペルソナ分析に励んでいた時、荒井さんが不意に「お子さんが、軽度の発達障害を抱えているという事にして考えてみよう」と言った。

これが僕たちを社会の課題を解決する方向に導くことになった。

世の中は今まで、こういう課題を解決する事が出来なかったように思う。そもそも、こうした課題を抱えている人がどれくらい憤りを感じているのかさえ分からなかったのだろう。

インターネットの発達により、こういう課題が浮き彫りになった。そしてWEB2.0の技術は、デジタル世界の常時接続を可能にし、ネットを駆使した情報発信・情報交換を可能にした。ここに従来のオフラインでの成果をプラスすれば、今までできなかった社会課題を解決することができるのだ。

案外、ここを見据えてサービスを考える人は少ない。そうやって僕たちが考えたサービスは、他のチームにはない「明確な課題と解決方法」を提示する事が出来たのである。

▼マネタイズを多方面から考える▼

最後に、良いサービスとはお金の流れが分かりやすく・潤沢になるように設計されている。

物売りであれば売れるものを用意する必要があり、見合った価格・分かりやすさ・明確な便利さが必要だと思う。特に誰が何を売るかによって価格が決まるからこそ、相場ではなく自分たちの持っている影響力(イメージや信用)から価格決めをする必要がある。

ネットによるサービスやプラットフォームなら、マネタイズを差し込む場所が沢山ある。もちろん複数のポイントを用意しても構わないが、絶対的にやるべきは、どこがマネタイズの最大ポイントかを理解する事だ。

ネット系のサービスならば、広告収入・手数料・ダイレクト課金が一般的だろう。

C社は広告収入で生きてきた会社だ。だから自然と広告収入に話しが向きがちである。

ただ、いくら広告代理店だからといって、今までオフラインで頑張ってきた会社の急なオンラインサービスに広告を出したい企業はいないだろう。C社は、オンラインサービスにおける広告信用を貯めきれていないのだ。

であれば、可能性があるのは手数料だろう。読者と企業をマッチングして、お金集めをしてもらう中で手数料を頂く。読者の活動が他社のメディアに取り上げられた時、場所代として利用料の一部を頂くなどがある。

手数料は、起業からも読者からもお金を頂ける、いわば折衷案みたいなものだ。C社の信用を考えるとここが最大のマネタイズポイントのはずだ。

こんな感じで、根拠も同時に提示できるといい。

僕たちのサービスは、仮説と根拠、そしてギリギリまで理屈を突き詰めて作られた。

これは作品じゃない。商品だ。考える側は売れるものを作らないといけないし、判断する側もシビアかつ可能性を信じて選ぶべきなのだ。

この後、僕たちは完成品を発表する事になる。

さぁ、反撃の狼煙だ。紆余曲折あったけれど、ここですべてを終わらせようじゃないか。

そう思っていた。それなのに、あんな白旗の振り方はない。それじゃ、戦うとか戦わないとか、もはや関係ないじゃないか。

僕はこの先、名前の付けづらい決着を目の当たりにすることになる。この記事を読んでいる皆様にも、ぜひ考えてもらいたい。

この勝敗につける名前は何かを。

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