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【心理学】心理療法

※私が心理カウンセラーとして学んできた心理療法を、備忘録として列挙しておきます。ここに掲載されていない心理療法もあるかと思います。

《心理療法》

来談者中心療法(クライエント中心療法)

来談者中心療法(クライエント中心療法)とは、C.ロジャーズによって提唱された非指示的な心理療法です。

来談者中心療法(クライエント中心療法)では、自己概念(自己構造)と経験という2つの概念に注目します。自己概念(自己構造)とは、クライエント自身が抱いている自己像で、クライエントの理想が反映されている姿です(理想自己)。

経験とは、クライエントが現実に体験していることです(現実自己)。
そして、自己概念(自己構造)と経験の重なりを自己一致と呼び、自己一致の領域が大きいほど適応的であるとしました。

不適応状態に陥っているクライエントは自己一致の領域が小さいです。しかしロジャーズは、人は誰もが自己概念(自己構造)と経験を一致させていこうとする自己実現傾向を持つと考えており、カウンセラーとの適切な関係性さえあれば、クライエントは自己実現傾向を発揮できるよう自ら変化していけると述べています。

この「適切な関係性」を築くためには、カウンセラーに3つの態度が求められています。

①共感的理解
クライエントの私的な内的世界を、あたかもクライエント自身であるかのように感じ取ることです。

共感的理解によって感じ取ったことを、クライエントに反映することを通して、クライエントが自分自身の理解に至ることを援助します。

②無条件の肯定的関心(受容)
クライエントのどの様な側面にも偏りなく肯定的で積極的な関心を向けることです。

カウンセラーが無条件にクライエントを受容することによって、クライエント自身もあるがままの自分を受容することが可能となります。

③自己一致(純粋性・真実性)
カウンセラー自身が自己一致の状態にあることです。

自己一致しているカウンセラーと接触することによって、クライエントも自己一致の状態を目指すことができます。

これらの3つの態度条件をそろえたカウンセラーとの関係を通じて、クライエントはあるがままの自分とその問題に気づき(自己洞察)、あるがままの自分とその問題を受け入れ(自己受容)、より自己一致した状態に近づいていくこと(自己実現)が可能となります。

来談者中心療法(クライエント中心療法)の最終的な目標は、自己実現したクライエントが自分で問題を解決していける「十分に機能する人間」となることです。

家族療法

家族療法とは、問題が顕在化しているクライエントをIP(Identified PatientとかIndex Person)と呼び、IP個人の問題だけでなく、家族システムが十分に機能していない為に生じていると考え、家族システムが健全に機能するように介入していく心理療法です。

仮に、不登校の子供がいたとします。どうしても不登校の原因は何か、子供に何か問題があるのでは、という方向に意識が向きやすいです。

しかし、子供だけが問題なのだろうか…
たとえば、母親の高圧的な接し方に問題があるのかも知れません。

だが、母親の高圧的な接し方の原因には、父親の育児に関する無関心が原因としてあるのかもしれません。父親の無関心の原因は、子供が父親を軽視しているからかも知れません。

このように、家族メンバーそれぞれが問題の原因であり、結果である可能性が考えられます。
これを円環的因果律と言います。

上記の例の場合、不登校の子供だけに個人単位の心理療法を行っても、真の問題解決にはならないでしょう。

■IPと家族療法の目標
家族療法において、問題とみなされる者をIPと呼びます。そして、問題はIPひとりが原因ではなく、円環的因果律の観点に基づき、家族システムが十分に機能していないために起こっていると考えます。

そこで家族療法は、歪んだ家族システムを健全に機能する家族システムへ変容させることを目指します。

■システムズ・アプローチ
家族療法の中の歴史の中では、家族を1つのシステムとして捉え、そのシステムに変化を起こすための効果的な方法が数多く研究・開発されてきました。

中でも、代表的なものは「ジェノグラム」「円環的質問法」など、家族メンバー自身が心理カウンセラーのサポートを受けながら自分たちの相互作用を観察し、コミュニケーションのパターンを理解し変化させるための介入方法です。

「ジェノグラム」は家族関係図とも呼ばれ、問題を持って心理カウンセリングに訪れた家族を含む3世代の拡大家族を図に描いて、その家族の歴史や家族メンバー同士の相互作用を理解しようとするものです。

その作業は、通常自分の家族について聞いたり教わったりするに足る年齢に達した全ての家族成員の前で行います。この狙いは、パターンがどの様に伝承されるのか、過去の出来事が現在のパターンにどの様に影響しているか、またそれは家族の2者関係や3者関係にどのように作用するのかを示すことにあります。

「円環的質問法」とは、「あなたのその症状が軽減されたとき、一番喜ぶのは家族の中の誰ですか?」などの質問を用いて、家族メンバー同士の結束や分離、その相互影響などを知る効果的な方法です。

家族療法では、こうしたさまざまな技法によって家族のコミュニケーションのパターンを明確にし、またその背景にある家族メンバー個々人の意図や欲求などを表現してもらうよう工夫することなどによって、家族のなかに新しくより良いコミュニケーションのパターンが定着するよう援助していくことが大きな柱となります。

精神分析療法

精神分析療法はJ.フロイトに創始された心理療法で、問題行動の原因を無意識に抑圧された心的外傷体験と考え、心的外傷体験の意識化と徹底操作(後述)による自我の強化を目指す心理療法です。

①自由連想法
クライエントは寝椅子に横になり、分析家はクライエントから見えない位置にいます。そして「頭に浮かんでくることを、批判や選択をしないでそのまま話してください」と指示する。

この一連の流れを自由連想法と言います。

②解釈
自由連想法で話された内容には、クライエントの無意識が反映されていると考えます。特に自由連想法の途中に、沈黙という形で抵抗を示した場合は、無意識に隠されている恐怖や欲望への到達を拒んでいると考えられます。

また、分析家への転移が生じることもあります。このような抵抗や転移に対して、解釈を与えていきます。

解釈の方法としては、直面化と明確化があります。直面化とはクライエントが回避している考えや感情を分析家が言語化して、クライエントと向き合わせることを指します。

明確化とは、クライエントが語った内容を簡潔な言葉で言い返すことで、クライエントの自己理解を援助することを指します。

③徹底操作
上記のような関わりの中で、クライエントは過去の心的外傷体験を想起する(治療的退行)。そして、無意識に抑圧された自身の欲求や感情を理解していく。このことを洞察といい、洞察と解釈を繰り返して行くことを徹底操作と言います。

徹底操作により自我が強化され、意識化された心的外傷体験・欲求や感情を、自身で制御できるようになります。

なお、自我が強化された状態とは、「高い現実検討能力」「分裂することなく一貫した自我同一性」「昇華など適切な防衛操作が可能」という状態を指します。

精神分析療法は、週に3~5回・各50分のセッションを数年間に続けるという長期治療が必要とされています。そのため現在は、対面式で週1回などの簡易型の精神分析療法が広く行われています(精神分析的心理療法と区別する場合もあります)。

最後に、夢分析を簡単に紹介します。夢分析とは、クライエントが言語化可能な健在夢を手がかりにして、抑圧された欲望が反映された潜在夢の内容を解釈し、無意識の意識化を目指すものです。

交流分析(TA)

交流分析はエリック・バーンによって開発された対人関係に関する理論と、それに基づく心理療法です。理論上は精神分析から出発していますが、他者との交流を積極的に求める人間観や「今、ここ」を重視することにより、人間性心理学の中に位置づけられることが多いです。

交流分析では、人に「親の心・大人の心・子供の心」という3つの心があると仮定します。さらに、親の心が2つに、子供の心が2つに分類され、以下の5つの心に分類されます。

①批判的な親の心(CP)規律・道徳を重んじる。
②養育的な親の心(NP)保護・優しさを重んじる。
③大人の心(A)現実的な判断・理性を重んじる。
④自由な子供の心(FC)自由・開放を重んじる。
⑤順応した子供の心(AC)適応・協調を重んじる。

これらの5つの心は、エゴグラムという質問紙で測定できます。その結果で、対人関係においてどのような側面を重視しているかがわかります。これを構造分析と言います。

構造分析をもとに、人が強迫的に従ってしまう対人関係の様式を発見し、新しく適切な対人関係の様式を再構築することが、交流分析の目的でもあります。

対人関係に注目した心理療法は交流分析だけではありません。ここでは主に集団療法と心理劇に注目します。

■4つの分析
①構造分析
人の心の仕組みやあり様を分析し、各人のパーソナリティの特徴を明らかにします。

②交流パターン分析
二者間の交流パターンを分析し、コミュニケーションの実際を探ります。

③ゲーム分析
交流分析では、幼少期に親や身近な人たちとの関係の中で培ったトラブルのパターンを「ゲーム」と呼びます。ゲーム分析では、自分の持つゲームを分析し、無意識に何度となく繰り返すゲームからの脱却を目指します。

④脚本分析
交流分析では、人生を1つのドラマとして捉え、人はそのドラマの脚本を人生早期に作ると考えます。そして、この脚本に基づいて人は人生の重要な場面での行動を決定すると考えます。脚本分析では、この脚本を分析し、それがネガティブなものである場合には、より良い脚本に書き換えることを目指します。

フォーカシング

フォーカシングはロジャーズの共同研究者であるジェンドリンが創始した心理療法です。何を言いたいか言えない時に「のどに何かがつっかえているような感覚」を感じたことは、何か問題が解決していない時に「胸のあたりにもやもやした感覚」を感じたことはないだろうか。

フォーカシングでは、このような漠然とした言葉にできない感情が身体感覚として体感されると考えられています。この身体感覚をフェルト・センスと言います。不適応状態にあるクライエントは、このフェルト・センスを表現することができず、感情の流れが滞っています。

だが、クライエント自身がフェルト・センスに気づいてその理解を深め、言葉などによって表現(取っ手・ハンドル)することが可能となれば、滞っていた感情の流れが自己を成長させる方向へ向かって流れていきます。

このことを、フェルト・シフトと言います。フォーカシングは、クライエントがフェルト・シフトに至る過程を援助すると言い換えることもできます。

フォーカシングは、ロジャーズに代表される人間性心理学の観点からアプローチする心理療法の1つです。

ゲシュタルト療法

ゲシュタルト療法とは、フリッツ・パールズによって創始されたヒューマニスティック心理学の心理療法の1つです。

ゲシュタルト療法の基本理念は「気づき」です。「気づき」とは「今、ここ」で身体の内部で起こっていることを感じ、意識することでり、それは常に「今、ここ」で起こるものです。

ゲシュタルト療法では、決まりきった習慣や価値観などを変化させるには、新しい気づきが必要であると考えます。

伝統的な心理療法でよく強調されるのは、現在の問題には過去に原因があるという見方ですが、それに対してゲシュタルト療法では、「今、ここ」の時点まである問題を保持していると捉えます。

クライエントが瞬間瞬間の自分の真実を知ることで意味づけされた「観念としての自己」ではなく、「生きて体験している自己」として生き、自分の中の相反する様々な側面をも統合するために「今、ここ」で「気づき」を起こすことによってより統合された自己を確立していきます。

また、ゲシュタルトとは全体性のことを意味します。排除されていた自己の部分を統合し、全体性の回復を重視する心理療法です。

過去の体験や生育歴ではなく「今、ここ」で体験している自己の統合を目指します。代表的な技法にエンプティ・チェアがあります。空の椅子にもう一人の自分を座らせて、架空の会話を行います。

会話の中から、自分の気づいていなかった「今、ここ」の自分の姿に気づき、自己を統合させていきます。

NLP(神経言語プログラミング)

NLP(神経言語プログラミング)とは、1970年代のアメリカで当時カリフォルニア大学の言語学教授であったジョン・グリンダーと同大学心理学科の学生リチャード・バンドラーにより創始されました。

NLP(神経言語プログラミング)は、当時の天才的セラピストとされる、精神科医で心理臨床家のミルトン・エリクソン、ゲシュタルト療法の創始者フリッツ・パールズ、家族療法の第一人者ヴァージニア・サティアという3人のセラピストの研究から始まりました。

彼ら3人が行う効果的なセラピーが「どのようにして行われるのか」を研究の対象とし、3人に共通する言葉づかい、行動パターンなどを考察、研究し、「効果的なコミュニケーション」や「個人の変容」などについての簡潔なモデルを打ち立て、NLP(神経言語プログラミング)と命名しました。

NLP(神経言語プログラミング)は、神経や脳の仕組み、どの様にそれらがプログラミングされ人間の認知・感情・行動に影響を及ぼすかという、人の持つ機能を体系立てる理論であるとともに、「他者とのコミュニケーションや信頼関係の構築」「人間の行動や心理状態の変容」のための具体的な技術を提供しています。

NLP(神経言語プログラミング)は、いわば「人間の持つ機能の取扱説明書」とも言えます。
人間は、外界の情報を五感(視覚、聴覚、身体感覚、嗅覚、味覚)という感覚システム(感覚モダリティ)を使って取り入れ、大脳皮質で感覚ごとに情報を処理し、記憶として蓄積しています。

各感覚システムは、それぞれ以下のように詳細な構成要素(サブモダリティ)に分けられます。

■視覚(V:visual)
■聴覚(A:auditory)
■身体感覚(K:kinesthetic)
■嗅覚(O:olfactory)
■味覚(G:gustatory)

五感を用いて情報を整理、記憶し、用いる仕組みのことを、表出体系(Representational systems;代表システム)と言います。

表出体系を外に向かって働かせることで、人は外界の事物や出来事を認識するとともに、記憶として蓄積(プログラミング)することができます。

また、表出体系を内に向かって働かせることで、イメージを思い描くことや、記憶をありありと想起し再体験することができます。

基本的に、人間は表出体系の全て、あるいは幾つかを複合的に用いていますが、他よりも優先してよく使用する特定の表出体系があります。それを優先感覚と言い、視覚優位(V:visual)、聴覚優位(A:auditory)、身体感覚優位(K:kinesthetic)などのタイプがあります。

そして、主観的(アソシエイト)、客観的(ディソシエイト )にその時の状況を再現して、五感を働かせることにより身体感覚の変容に気づきをもたらすことを行っていきます。

ソーシャルパノラマ(ファミリーパノラマ)

ソーシャルパノラマ(ファミリーパノラマ)は、NLP(神経言語プログラミング)に基づく社会心理学でオランダのカールス・ダークスに創始された近年の心理療法です。

メンタルスペース心理学とも呼ばれ、NLP(神経言語プログラミング)をベースにしていますが、対人関係、自己変容の心理療法が中心です。

社会の現実に対する自分の無意識の地図が、自分が何者であるかの信念を決定づけています。そして、その地図を分析し調整することで、対人関係や家族関係の自己の捉え方に変容を加えることができます。

POP(プロセス指向心理学・プロセスワーク)

POP(プロセス指向心理学・プロセスワーク)は、アメリカのユング派心理学者アーノルド・ミンデルによって創始された心理療法です。

POP(プロセス指向心理学・プロセスワーク)創始の背景には、ミンデル自身が元々理論物理学を学んでいたこともあり、理論物理学や道(タオイズム)等の影響を色濃く受けていますが、その中心にはユング心理学から受け継がれた目的論的哲学が据えられています。

ユング心理学では、「現在生じていることには、まだ表現されていない意味や目的(非決定的な目的)がある」という目的論的視座も重視されます。

特にユング心理学の夢分析を学ぶ中で、夢の持つ意味を解釈するのではなく夢のイメージを丁寧に見ていくという方法を身体症状に応用し、夢でもあり同時に身体でもある存在としてドリームボディ(夢体験)という概念を提唱しました。

ミンデルは、このドリームボディ(夢体験)を使った技法がドリームボディ・ワークと呼ばれ一躍有名になりました。

その後、夢は身体症状との共時的(共時性=シンクロニシティとは、いわゆる虫の知らせや正夢などのように、客観的な事実と主観的な体験が同時に起こる意味の繋がりを持つ現象のこと)な繋がりだけでなく、「身体感覚」「動作」「人間感覚」「世界の出来事」といったあらゆる側面とも繋がっていることが見出されています。

再決断療法

再決断療法はエリック・バーンの共同研究者であった精神科医ロバート・グールディングと妻でPSW(精神保健福祉士)であったメリィ・グールディングが、クライエントの思考力に働きかける交流分析の理論をベースに、ゲシュタルト療法の深い情動的変化をもたらす技法を統合して開発されました。

再決断療法では、クライエントが今悩んでいる問題は、過去のある時点で(やむを得ない心理的理由などにより)、何らかの「決断」を自分がしたために起こっていると考えます。

自分で決断した結果によって現状があるため、今起こっていることの本質を理解しクライエントが自ら「再決断」することによって現状を変えることが出来ます。

クライエントは、ゲシュタルト療法によるサポートのもとで自分の問題に対する情動体験をしながら、それを交流分析の理論的な枠組みに沿って知的に整理していくことができます。

この再決断療法は、交流分析とゲシュタルト療法の良点を合わせて不足を補う変化の為の効果的な療法として現在幅広く活用されています。

再決断療法の目的は、個人が生活の中でさまざまに体験する問題を「決断」という観点から分析しつつ、思考や行動を具体的に変容させる為の方法を提供し、クライエントがより良い人生をおくることを援助することと言えます。

インナーチャイルドワーク

インナーチャイルドとは、幼少期に受けた感情的、肉体的、身体的なトラウマ(心的外傷)体験などの辛さから自分自身の心を守ることと関連しています。

心を守るメカニズムによって当時の記憶は忘れてしまっても、インナーチャイルドは感情のエネルギーとして残り、そのときに身につけた対処方法や感情のエネルギーは大人になってからも何かしら影響を及ぼします。

インナーチャイルドワークでは、現在の自分自身に強く影響を与えている幼児期の場面での親や周りの大人との関係、子供時代に決めてしまったパターン、傷ついた体験をした自分を見つけ出します。

そして、自分自身のインナーチャイルドと対話し、傷ついたインナーチャイルドを受け入れていきます。

その中で自分が真に望んだものや満たされなかった思いを満たして癒し、最終的に本来自分が持っているエネルギーを回復させ、より生きやすい今を実現することを目的としています。

方法としては、カウンセリングの段階である程度の年齢などを特定してからワーク誘導していく方法と、年齢などを特定せずにワークを行い、その中で導かれた年齢を扱う方法などがあります。

トラウマワーク

心理療法は、ある問題を生じさせる原因となった過去の事柄に注目する精神分析的な考え方から、現在問題をどのように維持しているか、そのプロセスに注目するブリーフセラピー的な考え方へと発展してきました。

しかし、トラウマ体験(心的外傷体験)あるいはそれに近い何らかの体験・出来事が現在の問題の背景にあるために、ブリーフセラピー的なアプローチだけでは問題が解決せず過去の体験へのアプローチが求められるケースが存在します。

現在起きている問題には、その大きな原因として過去に経験した著しい心理的身体的苦痛を伴う体験があるという考え、またそうした仮説に基づくアプローチにより場合によってはトラウマワークを行う必要があるかも知れません。

但し、クライエントさんがトラウマワークによって表象される出来事に対して、耐えられない場合があると判断される場合は、無理にトラウマ体験を表象させません。

行動療法

行動療法とは、問題行動を誤った学習によるもの、あるいは適切な学習がなされていないものとみなし、条件づけなどの学習理論を用いて、不適切な行動の消去と適切な行動の獲得を目指す心理療法です。

例えば、満員電車に対して恐怖を抱く場合は、満員電車と恐怖反応が条件つけられていると考えます。そこで行動療法は、学習理論を用いて不適切な行動を消去し、適切な行動を学習することを目指します。

精神分析を批判し、科学的な臨床心理学の確立を目指したアイゼンクにによって定義づけられました。

■レスポンデント条件づけに基づく技法
①系統的脱感作法
ウォルピによって開発された最も代表的な行動療法です。不安障害に有効とされています。

●事前準備
リラックス状態を作り出すための弛緩法を身に付ける。また、低次な不安から高次な不安まで一覧にした不安階層表を作成する。

●実践
不安をイメージした後に弛緩法を実践して、不安とリラックス状態を条件づけ、不安の解消を図る。不安階層表の低次な不安から高次な不安へと、順番に条件づけていく。

②暴露法(エクスポージャー)
基本的に系統的脱感作法と同じです。不安場面をイメージするのではなく不安場面に直接さらして、不安場面に慣れさせる点、弛緩法よりも不安場面からの回避行動を減らすことを重視する点が異なります。

なお、最大級の不安にいきなり直面させることをフラッディングと言います。不安場面を直接経験させるため、クライエントの回避行動を制限する必要がある反面、安全の確保にも留意する必要があります。

③暴露反応妨害法
強迫性障害に対して用いられることが多いです。強迫行為を禁じることで、強迫観念から生じる不安に徐々に慣れさせていく手法です。

■オペラント条件づけに基づく技法
④シェイピング法
一度に獲得することが困難な行動に対し、細かい達成目標を設定し(スモールステップ)、達成するたびに強化を与え、徐々に目標行動に接近させていく手法です。

⑤トークン・エコノミー法
適切な行動にトークンという擬似貨幣を与えることで、その適切な行動を強化していく手法です。子供の行動変容と支援に用いられることが多いです。

⑥タイムアウト法
問題行動後に誰もいない部屋に移動させるなどして、正の強化を受けないようにする手法です。教室内で子供が他の子供を叩いたとき、それで教室内が騒ぎになると「騒ぎになった」という事実が叩く行為を強化してしまう場合があります。
そこで、部屋から出すことで正の強化を防ぎます。

⑦嫌悪療法
アルコールを接種したら嘔吐剤などを飲ませるなどして、特定の行動に対して罰となる刺激を与え、その行動の消去を目指す手法です。

認知行動療法

認知行動療法とは、物事に対する認知を変えることで、行動の変容を促す技法の事です。心理療法の中でも比較的新しく発展してきた領域で、意識の存在を軽視する行動療法に対する批判から、人間の意識的な認知作用を再び重要視する流れのもと生まれました。

行動療法の発展とともに、目に見える行動を修正するためのさまざまな技法が活用され洗練されてきましたが、実際に人間の行動を観察したとき、一定の刺激が必ずしも同じ反応を誘発するするわけではないということが論じられるようになりました。

例えば、仕事でミスをして叱責を受けるなどの出来事(オペラント条件づけ「抑制」)が生じたとき、その事実に対して「ミスしてしまった。でもこれくらいならすぐ取り戻せる。」と考える人がいる一方で、「ああ、またやってしまった。これで○回目だ。私はこの仕事に向いていないに違いない。いや、私なんて何をやってもダメなんだ。」と考える人もいます。

その出来事や自分自身についての考え方、捉え方の違いが、さらにその後の本人の思考や感情、行動に影響しているという事実を考慮せざるを得なくなったためです。

そこで、クライエントの内部で起こっている思考や推論のプロセスに焦点をあて、「刺激と反応は直接的な因果関係ではない」「人は単に刺激に反応しているのではなく、刺激を解釈している」という、行動変容過程の中での予期や判断といった認知的活動の果たす機能を重視する発想が生まれました。

こうして今日心理臨床の場で広く活用されている認知行動療法が開発されたのです。

認知行動療法とは、行動療法の理論に上記のような認知過程に関する理論を組み入れ、思考、知覚、判断、自分自身に言っていること、暗黙の前提など、情緒や行動の混乱を引き起こしていると考えられる、歪んだ思考パターンを変える(認知的再構成を行う)心理療法と言えます。

認知行動療法には、D.H.マイケンバオムの自己指示法、A.ベックの認知療法、A.エリスの論理療法などがあり、現在では主にうつに苦しむ人々のための心理療法として絶大な効果をあげています。

認知療法

認知療法とは、A.ベックによって提唱された心理療法です。
ベックは抑うつの原因を、あらゆる出来事に対してネガティブに偏った思考をしてしまうことにあると考え、その認知の変容を目指しました。

特に瞬間的に頭をよぎる否定的自動思考に注目し、クライエントが自らの否定的自動思考に気づき、適切な思考に修正できるよう働きかけて行くことです。

論理療法

論理療法とは、アメリカの臨床心理学者A.エリスによって、1995年頃から提唱されはじめた心理療法で、「出来事が悩みを作るのではなく、その出来事に対する自分の信念の偏りが悩みを作るのである」と考えます。

この考えは、ABCDEモデルに基づく療法です。
A.エリスは、ある出来事(A)に対して不合理な信念(B)をもつために、否定的な感情や悩みといった結果(C)が生じると考えました。

特に不合理な信念とは「すべて○○でなければならない」といった、融通の利かない固定的な信念を指します。そこで、不合理な信念に反論(D)し、合理的な信念に修正するよう援助します。

結果、自らの目標達成に向けた行動がとれるようになります(E)

アサーション・トレーニング(主張訓練法)

アサーション・トレーニングは、1950年代のアメリカで対人関係が上手くいかないことで悩んでいる人や、自己表現が下手で社会的場面が苦手な人のためのトレーニング方法として開発されました。

そして、1960年代からの人種差別撤廃運動やウーマン・リブ運動などの人権回復運動を背景に発展し、現在では面接試験での自己PRや職場での人間関係の向上、人材育成など、さまざまな場面で活用されています。

私たちは、毎日さまざまな人と接しています。その中で自分の本心を口にしたり、権利や意見を主張したり、他人を褒めたり、感情を豊かに表現するなどの「主張反応」には、対人関係の不安を抑える働き(不安制止)があります。

逆に、言いたい気持ちを抑えるなどの消極的・非主張的な傾向は、対人関係の中で誤解を生じさせるだけでなく、不安や劣等感、自身のなさ、「どうせ言っても分かってもらえない」といったあきらめの気持ち、「人の気も知らないで」「譲ってあげたのに」といった恨みがましい気持ちに繋がります。

これらのストレスは、私たちが考えている以上に大きく、それが溜まると八つ当たりなどの不適切な言動となってあらわれて人間関係のトラブルを引き起こしたり、また、抑うつ・不安・頭痛・対人恐怖などさまざまな症状の原因ともなります。

主張訓練法では、対人関係で生ずる敵意・攻撃・不満など対立的な主張を相手に受け容れられる形でしていくための訓練が主に行われます。その際にはアサーティブ(主張的)な対人関係の習得が目的です。

アサーション・トレーニングでは、クライエントが問題としている対人関係の具体的な場面、出来事、その時の感情、実際にとった行動、その出来事に対しての態度などを見つめ直し、具体的にどのように対応するのがアサーティブなのかを一緒に考えます。

そして、アサーティブな行動を観察したり(モデリング)、その役割を演じてみること(ロールプレイ)により、新しいアサーティブな行動を学習します。

ナラティブセラピー(物語療法)

ナラティブセラピー(物語療法: Narrative therapy)とは、社会構成主義やポストモダンの影響を受けて練磨されつつある精神療法の一種である。

治療者とクライエントの対等性を旨とし、クライエントの自主性に任せて自由に記憶を語らせることによって、単なる症状の除去から人生観の転換に至るまで、幅広い改善を起こさせることを目的とするもの。PTSDやアダルトサヴァイヴァーの治療に広く用いられます。

起源としては、「精神的に苦しんでいる人の話を聴いてあげる」というかたちで、精神療法として正式に名づけられるよりも先に、古くから人間社会のなかで自然に存在したと思われています。

定式化された精神療法としては、19世紀末のジークムント・フロイトによるお話し療法、除反応、自由連想法、また同時代のブロイアーによるカタルシス療法などが創成期のものです。

一般には、自由連想法こそがナラティブセラピーの原点のように考えられているきらいもありますが、治療者の誘導よりも患者の主体性と意思が尊重される点では、お話し療法や、のちのユング派の分析心理学などに近いとも言えます。

むしろ、クライエントが自発的な心構えを準備してセラピーに臨み、能動的想像法の要素も色濃い「体験を回想し物語る」という行為は、20世紀前半に入ってフロイト派精神分析に、ユング派分析心理学がたぶんに融合して生成してきたと考えるべきです。

20世紀後半に入って、アメリカにおいてベトナム戦争後のASD被害者や、家庭内暴力や性的虐待を受けた被害者のPTSD治療の技法として、またアルコール依存症をはじめとした各種の嗜癖に悩む人々の自助グループのミーティングなどにおいて、さらにポストモダニズムなどを背景とした新しい医学思想の流れを汲みながら家族療法の分野から出ていた概念として、飛躍的に展開と発達を遂げ現在に至っています。

物語という概念は、ナラティヴセラピーを考える上で鍵となるものです。私たちは過去の体験を語るとき、それは巧拙を問わず「物語」として語ります。また他人の経験も「物語」として把握します。

さらに人は「物語」を演じることによって人生を生きているともいえます。また、古典的な精神分析などにおいては物語は解釈にあたります。

フロイト派もユング派も、かつての精神療法は、治療者はクライエントの一段上に立っており、間違った物語に囚われている患者を治療者が正しい物語へと導くという進展が一般的でした。

しかし、社会構成主義によれば、どのような物語になるかは平等な主体どうしの主観の持ち方、すなわち「ものの見方」の問題であり、「正しい」物語も「間違った」物語もなく、ましてやどのような主観にも依拠しない「客観的な」立場から見た解釈や物語も存在しないということになります。

ブリーフセラピー(短期療法)

治療の短期・効率化を狙って行われるさまざまな心理療法の中でも、現在もっとも盛んに用いられているのが、M.エリクソンの流れを汲むブリーフセラピー(短期療法)です。

天才的な催眠療法家と呼ばれるM.エリクソンは、1930年代から膨大な数の実践・研究を行い、短期間に人の変容を助けることができる。たくさんの技法を生み出しました。

このエリクソンの手法は後に多くの臨床家によって研究され、ブリーフセラピーのほかにもNLP(神経言語プログラミング)や短期戦略的心理療法などとして結実しています。

こうした流れを汲んで、ブリーフセラピーは「M.エリクソンの実践した技法や考え方から発展したセラピーであり、クライエントとセラピストが協力して、できるだけ短期間に問題の解決を行う一方法」と定義されています。

ソリューション・フォーカスト・アプローチ(SFA)

問題解決や課題達成の為には、その問題の「原因が何か」ということよりも、「どうなれば良いのか。何ができればいいのか」と言った、「問題が解決されている姿」が明確になっていることこそが重要です。

問題解決や課題達成のために、問題やその原因に注目するのではなく、「解決とは何ができていることか、解決が起きたとき何がどうなっているのか」と言った「解決」に焦点をあてて考えていくアプローチを、ソリューション・フォーカスト・アプローチ(Solution Focused Approach;解決志向アプローチ)と言います。

アテンプテット・ソリューション(AS)

ある問題が繰り返されている。あるいは、問題解決・課題達成のために何らかの解決行動をとっているにもかかわらず成果が出ていない場合、その解決行動自体が問題を維持させるための「アテンプテット・ソリューション;Attempted Solution(不適切な解決行動・解決努力)」であると考えます。

そして、悪循環を断ち切るために、アテンプテット・ソリューションと90度、あるいは180度違った解決行動を取るようにします。

また、その際にはアテンプテット・ソリューションを支える「信念」にも注目していきます。

トランスパーソナル心理療法

トランスパーソナル心理学とは、”個(パーソナル)を超える(トランス)”という意味です。したがって、トランスパーソナル心理学とは”個を超えた繋がり”を説く心理学のことです。

まず、この人生で起こるすべての出来事は、繋がっているという意味です。分析的な思考に慣れている私たちは、いろいろな出来事をそれぞれ別個にバラバラな観点から捉える傾向があります。

しかし、トランスパーソナル心理学から見れば、すべての出来事は繋がっており、したがって「意味がある」のです。

人生で起きるすべての出来事は繋がっていて、その繋がりには単なる偶然ではない意味がある。と考えるのがトランスパーソナル心理学の説く「つながり」です。

また、トランスパーソナル心理学ではもちろん、人が自分らしい人生を生きることの価値を認めます。しかし単なる「自己実現」にとどまらず、この人生に現れてくるさまざまな呼びかけの声も大切にし、それに従って生きて行けと解くのです。

これまでの心理学では自己実現を重んじる心理学で、それはいわば自力の心理学であったと言えます。

一方、トランスパーソナル心理学では、私たち自身の意図を超えて姿を現してくるさまざまな呼びかけの声を大切にし招き入れることから、他力の心理学の面があります。

従来の心理学を含んで越えるという意味で、トランスパーソナル心理学=自力+他力の心理学と言っても良いかもしれません。

ロゴセラピー(実存分析)

ロゴセラピーとは、V.フランクルによって提唱された心理療法です。

人間はいかなる状況でも、価値を追求する自由と責任を持つ存在であると考えます。そのため、人生に価値と目的を見い出せない時に空虚感を経験し、欲求不満に陥ると考えられています。

代表的な技法に、症状を過度に意識する患者に、敢えて意識させる逆説志向(不安を抱きやすい患者に、より不安を抱かせるなど)、意味や価値のあることに注意を向けさせて症状から解放させる反省除去(スポーツに集中させるなど)があります。

森田療法

森田療法とは、森田 正馬が考案した心理療法です。

森田療法は、森田神経質と呼ばれる者を主な対象としています。森田神経質とは、内省的で自身の身体的・精神的不快に敏感な、心気症傾向ある者のことを指す。身体的・精神的不快に敏感であるため、誰でも起こり得る身体的・精神的不快感を増大させてしまい(精神交互作用)、不快感に対する「とらわれの機制」が働いてしまう。

たとえば、些細な感覚に過敏に反応して不安がり、不安を感じないよう意識することが、かえって不安をあおってしまい「不安へのとらわれ」が生まれてしまう。

そこで、森田療法では、不安や恐怖などを感じることは特別なことではないと考え、カウンセラーは不安感の原因を追求しない「不問的態度」で接する。

そして、クライエントも緊張や不安・失敗などの体験を何とかしようとするのではなく、自然なものとして受け入れることで「あるがままの自分」を受容し「とらわれの機制」を打破していく。

もともとは入院治療を前提としていた心理療法でしたが、現在は外来両方やセルフ・ヘルプ・グループなども存在します。

内観療法

内観療法とは、吉本 伊信が考案した心理療法です。

浄土真宗の精神修養法を基に考案された心理療法で、外部からの刺激が遮断された狭く静かな部屋に入り、身近な家族や知人に対して

①してもらったこと
②して返したこと
③迷惑をかけたこと

の3点について思い出して、1~2時間ごとに訪れる面接者に3分程度で報告する。これを集中内観と言います。この集中内観を7日間、毎日繰り返します。

集中内観によって、過去の対人関係や自分の生き方について客観的に、継続的に調べることができ(身調べ)、人生観や行動の修正が可能となります。

モデリング療法

モデリング療法とは、バンデューラの観察学習理論に基づいて行われる心理療法です。適切な行動をとる他者を観察を通じて認知と行動の変容を促します。

例えば、犬に恐怖を感じている子供に、犬と仲良く過ごす子供の姿を観察させた後、犬と接触させるといったことを行い、犬に対する恐怖を観察することで消失させるといった狙いを持った心理療法です。

ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)

SSTとは、対人不適応を改善するための、対人認知と対人行動の変容を促すプログラムです。
日常の対人場面を想定し、ロールプレイ(役割演技)とモデリングによって、社会的スキル(対人場面での適切な会話表現や感情表現)を学習します。

近年は精神障害者の社会復帰や、発達障害児の療育に役立っています。

遊戯療法

遊戯療法とは、クライエントが子供で遊具で遊ぶことによって、子供の言語能力が未熟で言語化できない内面世界を遊びで表現し、それを深く体験することによって、症状を消失させたり、対人関係を改善させたりするという狙いを持った療法です。

子供に使用する心理療法です。

カウンセラーは、子供のクライエントの深層心理を読み取ることも必要ですが、それだけではなく、子供のクライエントがこの遊戯療法で自由に遊ぶという作業により、ありのままの自己を表現することが可能となり、無意識下で子供が抱える課題を解決したり、自由に表現することでカタルシス効果となって自然治癒力を発現させていくことが大切だと考えております。

箱庭療法

箱庭療法とは、クライエントが砂の入った箱の中にミニチュアを置くことによって、言葉では伝えきれない自分の内面世界を箱庭で表現し、それを深く体験することによって、症状を消失させたり、対人関係を改善させたりするという狙いを持った療法です。

子供に使用することが多いですが、大人にも使用することがあります。

カウンセラーは、作成された作品からクライエントの深層心理を読み取ることも必要ですが、それだけではなく、クライエントがこの箱庭療法で砂をいじるという作業により、自己の気づきや無意識下で人間が抱える課題を解決したり、具体的に把握することで対処法を見いだしたりすることが大切であると考えています。

表現療法

表現療法とは、非言語でクライエントが表現した絵画や小説、あるいは詩歌、演劇、舞踊など、一般的には「芸術」というジャンルを心理療法に応用した芸術療法から始まりました。

しかし、必ずしも「芸術」にとらわれる必要はなく、クライエントが作成した全ての作品を指して「表現療法」と称すると思います。

さまざまな芸術的活動によって内的な世界を表現し、心理的問題の解決を目指す表現療法の1つです。これら表現療法は、言葉に頼らない自己表現だけでなく、昇華の役割を果たす場合も多いです。

近年注目されている芸術療法として、コラージュ療法があります。コラージュ療法では、さまざまな雑誌や新聞を切り抜き、それを台紙に貼り付けてコラージュ作品を作ります。

他の表現療法として、治療者の指示に従って画用紙に風景を書き込んでいく風景構成法(風景構成法はアセスメントとしても用いられる。)、サインペンなどでなぐり書きを行うスクリプト法、スクイッグル法などがあげられます。

またカラーセラピーなども、表現療法の一つです。

音楽療法

音楽療法とは、自然界に存在する全ての生き物や物質からは音が出ていると考えます。

人は通常、下は20Hz程度から、上は(個人差がありますが)15kHzないし20kHz程度までの鼓膜振動を音として感じることができ、この周波数帯域を可聴域と言います。

通常、人間のアルファ波は、8Hzから14Hzの周波数の領域が含まれていると言われています。アルファ波が出ているときは、リラックスできているときで自律神経のバランスを整える働きがあるとされています。

そんなときは自然界に出かけて、自然音楽を聴くことで心身のバランスを整えることが出来るでしょう。

催眠療法

催眠には3つの種類があります。

1つは、催眠術のように人を催眠で操るような催眠ショーです。これは、テレビや舞台で行われる、一種のマジックショーのようなもので、種や仕掛けがあるものとされています。

人は簡単に人の思い通りに操ることができてしまったら、とても怖いし大変な事です。人には防衛機制という働きを持っています。ですので、そう簡単に人を思う通りに操ることなど出来ません。

2つ目は、世間でよく聞かれるかもしれないヒプノセラピー(催眠療法)と言うものです。

これは古典催眠といわれ、催眠と暗示、そしてイメージを用いて、人の潜在意識にダイレクトにコミニケーションを取ることで、心に肯定的な変化を促すことができるセラピーのことを言います。

3つ目は、エリクソン催眠と呼ばれるもので、現代催眠と呼ばれています。

一般の催眠では、スクリプトを利用した催眠誘導を行い、被験者の被暗示性によって催眠に入る人と入らない人がいると考えます。エリクソン催眠では、被験者ごとに適した誘導法を行えば、全ての被験者を催眠へ誘導することが可能としました。

また、一般の催眠では強い暗示を与えるには、深い催眠状態が必要であると考えますが、エリクソン催眠では、浅い催眠状態でも強い暗示による変化を与えることが出来るとしました。

M.エリクソンの行った催眠は、誘導→深化といった課程にとらわれないもので、特に晩年は催眠なのか催眠ではないのか判らないような、一般の催眠と言う定義では収まらない領域へと発展進化したため現代催眠とも呼ばれ、それまでの催眠とは区別されています。

エリクソン催眠から派生したものとして、NLP(神経言語プログラミング)やソリューション・フォーカスト・アプローチ(SFA)等があります。
また、催眠状態と瞑想状態は非常に似た無意識レベルでのアプローチを行っている様に感じます。

催眠は西洋的であり、瞑想は東洋的で、起原は違いますが考え方やアプローチの仕方が似ているのではないかと思います。

瞑想

瞑想にもいろいろと種類があり、超越瞑想(TM)、マインドフルネス瞑想があります。また瞑想法も幾つかあり、黙想、空想、観想、喚想と私の知る限り4つあります。

超越瞑想(TM)はインド人のマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーにより1950年代に知られるようになりました。この瞑想法は毎日2回、マントラ(真言。静かに復唱する単語、音、または語句)を15~20分間心の中で唱えてる瞑想法です。

心を静め、徐々に神経活動を抑え、意識を深みに導くことで、開放された気づきの状態、最高の境地、純粋意識に達することを目的とします。

瞑想法の中の喚想にあたると思います。喚想とは、想い起こすこと。想起することです。つまり、哲学者プラトンの言葉を借りるならば、人間の魂が真の知識であるイデアを得る過程。人間の魂が真の認識に至る仕方を、生まれる前に見てきたイデアを想い起こすことと言っています。

つまり、魂(霊性)との一体化を意味しています。

マインドフルネス瞑想はマサチューセッツ大学のジョン・カバット・ジンにより考案された瞑想法であり、気づきの瞑想とも呼ばれています。マインドフルネスとは、仏教におけるサティ(正念)から、宗教的要素を除きメソッド化した自己啓発や心理療法として用いる瞑想をベースとした、エクササイズでありテクニックです。

マインドフルネス瞑想は、今この瞬間の自分の体験に注意を向けて、現状をあるがままに受け入れることです。

また、特別な形で意図的に、評価や判断とは無縁に注意を払うことです。瞑想法の中の観想にあたるかと思います。
観想とは、自己の心情についての真の姿を捉えようと、心をしずめて深く思い入ることです。

【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

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