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芸術民俗学

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#民俗

現代美術の民俗学的転回 コンサベーション ピース ここからむこうへ PartA 青野文昭展

現代美術の民俗学的転回 コンサベーション ピース ここからむこうへ PartA 青野文昭展

なんという迫力だろう。いや、迫力というより凄味と言うべきか。会場の中央に組み立てられたのは、無数のたんすに自転車や自動車、衣服や文庫本といった日用品を埋め込んだインスタレーション。秘密基地のように内側に立ち入ることができるが、そこにはす凄まじい気配が立ちこめている。見る者の視線と身体は、その異様な空気に屈服することを余儀なくされるのである。

とはいえ今回、青野文昭が発表した新作は、彼のこれまで

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祝いの民俗──ハレの造形

祝いの民俗──ハレの造形

季節や人生の節目を祝う民俗を紹介する企画展。おもに埼玉県内の伝統的な行事に注目しながら、正月、婚礼、棟上げ、進水式などでつくられた飾りや衣装、贈答品などの造形物を展示した。比較的小規模な展示だとはいえ、かつて日本社会のなかで機能していた「ハレ」の機会の実態を総覧できる好企画である。

しめ縄でつくられた宝船、恵比寿様や大黒様を描いた引き札、そして結納品飾りとして送られていた松竹梅の水引細工。それら

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神になったオオカミ~秩父山地のオオカミとお犬様信仰~

神になったオオカミ~秩父山地のオオカミとお犬様信仰~

ニホンオオカミが最後に捕獲されたのは、1905(明治38)年、奈良県東吉野村。いまからおよそ110年も前の出来事である。以来、公式には「絶滅」したとされているが、目撃談や遠吠えの証言がなくはないことから、野生のニホンオオカミの生存を信じている人は、いまも少なくない。

本展は、動物としてのオオカミと信仰としてのオオカミの両面から人間とオオカミの関係性を探り出したもの。国内では3体しか現存していない

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[対談]青野文昭×福住廉 司会:関本欣也

[対談]青野文昭×福住廉 司会:関本欣也

関本:定刻になりましたので、はじめさせていただきたいと思います。「青野文昭個展」トークということで、美術評論家の福住廉さんをお招きして、1時間半から2時間トークイベントを開催したいと思います。よろしくお願いします。先週も青野さんとはトークをやって、思いのほか人がいっぱい来てしまって、先週はリラックス、今週は真面目にと思ったんですけど、先週も真面目、今週も真面目ということになってしまったんですけど…

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