溢れていくものを置いていきます

溢れていくものを置いていきます

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いま

自分の所在がわからず幽霊のようだった頃、ゆきどころがなく悲しくて寂しかったけど、身体が軽かった。今はなんか切実なひとのことばとか色々な事実に触れたことで自分が急…

淵
3年前

lonely

母が持っていたYael Naim のアルバム。その中の一曲であるlonelyをはじめて聴いた時、寂しさという感情を、わたしに(そして多分すべてのひとに)根付いた懐かしいものだと…

淵
3年前
3

海から来たはずの私たちのからだなのに、埋み火のような熱を宿さずにおれない 溢した涙は塩の味がする、あつい。 うみはどこですか うみは、どこですか 遠い日の…

淵
4年前
4

みずのうた

2019/4/12 みずのうた 水底にしずんでいくのをさよならとつぶやきながらずっとみていた お昼には乾いた庭の水溜り 淡い光がうかんでたのに てのひらのしわのあいだ…

淵
4年前
6

はるのよい

2020/3/30 湯たんぽのお湯が揺れてるその音で鼓動がわかるから抱きしめる 春だよと暦の数字押しつけた寒いといえず萎れるきみに (ここにいて、うそです、やっぱそ…

淵
4年前
4

かばん文庫
小川洋子(1994)『薬指の標本』新潮文庫

淵
4年前

ひさしぶりに詩をかけた

淵
4年前
3

海老名私立中央図書館とてもいいな
文月悠光さんの『わたしたちの猫』と『ねむらない樹 vol.1』を購入して読めたのでうれしい

淵
4年前
1

しろい蛇を飼うおんな ふたりで水を張った水槽に金魚はいない。 きみ。 水槽のなか、ひかる、鱗が。触れられぬ空気を幾重にも重ねたような透明な白さで。 「きれいね」と…

淵
4年前
5

あけまして

御神籤を引いたね どこに落ちていくかわからなかった、ことばが。ただ、ならんでいるひと、火が燃えるのを見ると、滲む。ここにいたいみたいだ。だから御神籤を引いた。「…

淵
4年前
5

クリスマス

とくべつな日をとくべつな日だと思わなければいられないこと とくべつなひとをとくべつなひとだと思わなければいられないこと わたしのそれは、そういう種類の、心の狭さで…

淵
4年前
3

みずが

うみのそこに しずんでいくのをさよならとつぶやきながらいつまでもみていた きれいなものははっきりとみているとめがいたい みえないみたくない でもすきなので みなそこ…

淵
4年前
5

つくりおき

2019/6/11 今日のことをあれこれ考えて 血なまこで自分のためのように にんじんの面取りをする 切実でもうつくしく、悩ましくもさらさらとした、べつせかいのいとおしい…

淵
4年前
4

しろのうた

2019/8/22 しろい朝しろい錠剤のみくだす ふるえる喉にポカリが滲む 呆れつつ不毛を買わずに済むのにな うつくしい消費があるのであれば 生垣に放らる空き缶のあはれ…

淵
4年前
6

電話

2019/7/4 夜の空気はひんやりしているのにおもたく濃くて、電波越しの声はなんだか甘いので、泣かないでと思いながら、泣きそうにふるえる声で笑います。 名前を呼びたい…

淵
4年前
4

lonely

母が持っていたYael Naim のアルバム。その中の一曲であるlonelyをはじめて聴いた時、寂しさという感情を、わたしに(そして多分すべてのひとに)根付いた懐かしいものだと…

淵
4年前
3

いま

自分の所在がわからず幽霊のようだった頃、ゆきどころがなく悲しくて寂しかったけど、身体が軽かった。今はなんか切実なひとのことばとか色々な事実に触れたことで自分が急に人間味を帯びて来て、からだが重い。この変化が良いか悪いかわからないけど、これをなにかかたちにしたい。

いまは、思いを形にする方法が、技術が欲しい。入力ばかりしてて、それにいっぱいいっぱいで、出力をしてなくてその焦りが苦しい。

でも、こ

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lonely

lonely

母が持っていたYael Naim のアルバム。その中の一曲であるlonelyをはじめて聴いた時、寂しさという感情を、わたしに(そして多分すべてのひとに)根付いた懐かしいものだと無意識下に感じるのと同時に、それに憧れのようなものを抱いていた。それは幼いわたしには高尚で、センシュアルな薄青色の美しいものに思えた。でもそれは今となってはわたしに近くて、残酷なものだった。

Making it insan

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海

海から来たはずの私たちのからだなのに、埋み火のような熱を宿さずにおれない

溢した涙は塩の味がする、あつい。
うみはどこですか

うみは、どこですか

遠い日の私たちがしたように、つめたい水底に潜みたいのです
こんな、熱くて苦しいみずをかかえて、おもたいからを引き摺って、内側だけが淡く撓んでいる、私たち、溢しながら、あなたを見ている

こども、ですか、?私たち、の

みずのうた

2019/4/12

みずのうた

水底にしずんでいくのをさよならとつぶやきながらずっとみていた

お昼には乾いた庭の水溜り
淡い光がうかんでたのに

てのひらのしわのあいだのしめりけの
あたたかいのはきっとその場所

君の頰流る朝露舐め取りて
さいはひなりと泪をながす

かえりたい、死んで行くのはこわいので
胎(はら)の水面(みなも)をおもいだしては

膝の上寝ている僕に聴こえてる

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はるのよい

2020/3/30

湯たんぽのお湯が揺れてるその音で鼓動がわかるから抱きしめる

春だよと暦の数字押しつけた寒いといえず萎れるきみに

(ここにいて、うそです、やっぱそこにいて)
やさしい距離がわからないです

みぎひだりあてずっぽうにあるく夜は
終わりのことが見えなくていい

「ほらこれが愛です」そう言いきみの受けた
手を見てそれが押し売りと知る

病みあがり胸におさまるきみに

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かばん文庫
小川洋子(1994)『薬指の標本』新潮文庫

ひさしぶりに詩をかけた

海老名私立中央図書館とてもいいな
文月悠光さんの『わたしたちの猫』と『ねむらない樹 vol.1』を購入して読めたのでうれしい

欲

しろい蛇を飼うおんな
ふたりで水を張った水槽に金魚はいない。
きみ。

水槽のなか、ひかる、鱗が。触れられぬ空気を幾重にも重ねたような透明な白さで。
「きれいね」ときみが呟く。わたしが聞いたことのない、澄んで粘ついた声で。

いまへびを掴むそのてで、わたしを愛してくれればいいのに。
とうめいをつかめぬ寂しさを愛おしむような距離で、怯えながら
へびを血で濡らして、じぶんのからだに受け入れるきみの

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あけまして

御神籤を引いたね
どこに落ちていくかわからなかった、ことばが。ただ、ならんでいるひと、火が燃えるのを見ると、滲む。ここにいたいみたいだ。だから御神籤を引いた。「ことしは微妙だな」なんて言って、次の年をまた待っているみたいだった。
待っているのだろうな。
それが嫌だ。浅ましくて、甘い。
浮いていた。ビールの、オードブルの、お雑煮の上を、家族の、自分の笑い声の上を、わたしだけが浮いていた。酔って人にメ

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クリスマス

とくべつな日をとくべつな日だと思わなければいられないこと
とくべつなひとをとくべつなひとだと思わなければいられないこと
わたしのそれは、そういう種類の、心の狭さです
そこにいてくれればいいと、でもそれはわたしにとって永遠でないので永遠でないので、「ただそこにいてくれればいい(たとえば、きょうこの日から、だいたい二年と七ヶ月)」などというような「軽い」響きのことばは、うわべだけで、大嘘です、三ヶ月が

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みずが

うみのそこに
しずんでいくのをさよならとつぶやきながらいつまでもみていた
きれいなものははっきりとみているとめがいたい
みえないみたくない
でもすきなので
みなそこのきみをみるとりんかくがぼやけてまろやかにみえるさわれそうでさわれないきみがいとおしいさようならさようなら
わたしはじぶんがきらいです

水底にしずんでいくのをさよならとつぶやきながらずっとみていた

泣きながら、いつかいなくな

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つくりおき

つくりおき

2019/6/11
今日のことをあれこれ考えて
血なまこで自分のためのように
にんじんの面取りをする

切実でもうつくしく、悩ましくもさらさらとした、べつせかいのいとおしいひとたち
静かに降り積もるように沈んでいくのが見えるのに、みんな私の前から消えていく
ありがとう、どうか、安らかでいてください

あの人のことを思い出し
にんじんの面取りをする
自分のために

自分の面取りがしたいん

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しろのうた

しろのうた

2019/8/22
しろい朝しろい錠剤のみくだす
ふるえる喉にポカリが滲む

呆れつつ不毛を買わずに済むのにな
うつくしい消費があるのであれば

生垣に放らる空き缶のあはれは
有機にまぎる無機へのあこがれ

無為の意を間違えていた
生活は”から”が溢れているだけだった

殻、パッケージ、吸い殻、なかがないものが、ふえていく

かわらずにシャワーを浴びるあすのため
溺れることを毎

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電話

電話

2019/7/4
夜の空気はひんやりしているのにおもたく濃くて、電波越しの声はなんだか甘いので、泣かないでと思いながら、泣きそうにふるえる声で笑います。
名前を呼びたい。でもこれはあなたの耳に、あまりに近いので、なにかを壊しそうですこし怖いのです。夜の空気がいくえにも重なって、そとが黒くて、あなたが見えない。きこえますか。きこえていなくてもいい。あなたの声が、きこえます。

lonely

母が持っていたYael Naim のアルバム。その中の一曲であるlonelyをはじめて聴いた時、寂しさという感情を、わたしに(そして多分すべてのひとに)根付いた懐かしいものだと無意識下に感じるのと同時に、それに憧れのようなものを抱いていた。それは幼いわたしには高尚で、センシュアルな薄青色の美しいものに思えた。でもそれは今となってはわたしに近くて、残酷なものだった。

Making it insan

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