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しろい蛇を飼うおんな
ふたりで水を張った水槽に金魚はいない。
きみ。 

水槽のなか、ひかる、鱗が。触れられぬ空気を幾重にも重ねたような透明な白さで。
「きれいね」ときみが呟く。わたしが聞いたことのない、澄んで粘ついた声で。 

いまへびを掴むそのてで、わたしを愛してくれればいいのに。
とうめいをつかめぬ寂しさを愛おしむような距離で、怯えながら
へびを血で濡らして、じぶんのからだに受け入れるきみの姿を毎夜、夢に見る 

暗がりでわたしを見るきみの眼をおもいかえす、その眼でいまきみは、蛇が脱皮する様を眺めているのか。蕩けるように黒い蛇の眼が、きみを捉える。へびを愛すきみ。きみに入り込むへび。それがあたえる痛み。散らばる幼蛇。 何度も。

そのしろいのどを縊る、想像。

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