蒼き伝説言葉のシュート

2021年4月12日 20:20

僕が小学生の時の話である。
僕は小3からサッカーを始め
週3回の練習とたまに週末に
試合があった。

試合は公式戦もあるし
練習試合もある。

この日は3チームでの練習試合だった。
小学生のチームは学年や個人能力で
3チームに分かれており
わかりやすく強い順にA、B、C
と上から順にチーム分けされていた。

僕は当時4年生Bチームに所属していた。
そもそもあまり練習試合というものが
なかったと記憶している。

3チーム合同など
とてもめずらしかった。

練習試合といえど
鬼監督の前で下手なプレーなど
完全に許されない状況の中
Aチームの試合は始まった。

Bチームの僕は
ベンチで試合を見守っていた。

Aチームは当時県内でも割と
強い方であった。

しかし

この試合はなかなか
思う試合展開にできず
鬼監督のストレスがどんどん溜まっていく。

ベンチの緊張が高まる

すると目を覆いたくなる
光景が目の前に広がる。
あろうことか
立て続けに失点してしまい
まさかの0-2とされてしまった。

「なんしとんやー！！」

蒼き伝説シュートの久保さんと
同じ下の名前の鬼監督が
ベンチから大声で容赦なく
罵声を浴びせる。

品格は久保さんに
勝ることは
50000％ないだろう。

僕は当時常にそう思っていた。

すると試合が動く
Aチームが遠目からの
ロングシュートを放つ！

しかし残念ながら
キーパー正面やや左で
勢いは良いものの
イージーコースだ！

しかしキーパーは何故か
イージーコースにもかかわらず
軽く横っ飛び。
両手でしっかりボールをはじいた。

しかし

ここで鬼監督が
誰もが度肝を抜く
究極かつ伝説の「言葉のシュート」を
放ったのだ！

「ゴール！！！」

誰もが鬼監督を見た。
ベンチ
フィールド選手
審判
保護者
全員が監督を見た。

鬼監督は何を言ってるんだ。
誰もがそう思ったであろう。

サッカーではゴールネットに
ボールが触れなくても
ゴールのラインを超えれば
ゴールと認められる。

しかし今回は完全にキーパーが
セーブしている。
しかも鬼監督は
ほぼハーフラインに位置しており
ラインを割ったかどうかなんて
絶対に見えないしわからない。
もちろんベンチの僕らにも
わかるはずもない。

いや考える必要もなく
100％ただのシュートを
キーパーがセーブした
ただそれだけのことなのだ。

しかし鬼監督の
「ゴール」という言葉で
全員の動きが停止した。
動いているのは
転がるボールだけだ。

転々と転がっている
ボール以外の全員が
金縛りに包まれている。

審判は鬼監督を見ている。

「ピピーーーーィ」

え？ゴール？？？

なんとゴールになってしまった。
審判も鬼監督の驚異に屈してしまい
あろうことかほぼ正面のシュートが
1点入ってしまったのだ。

僕らは大人の何かいけないものを
見てしまったようだ。

久保さんと同じ名前なら
ベンチからでもゴールを奪えるのである。

その後練習試合は激減したことは
いうまでもないだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？