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■大河ドラマ『光る君へ』第24話「忘れえぬ人」感想―「寒いね」って言ったら「寒いね」って聞こえるしあわせ

えりたです。

大河ドラマ『光る君へ』第24話の放映が……って、物語がもう既に半分公開されてしまったのですね⁈ この間、第1話だ! 道隆さまだ! と大騒ぎしていたのに。

一日が過ぎるときの体感の時間はさほど早くないのに、「1年」という単位で見ると「え、マジで?」となることしばしば……特に今年は、ご丁寧にも、梅雨前に一度「夏」がフライングしていますからねぇ。だから、余計にそう感じるのかもしれません。

というわけで、オープニングクレジットで「藤原公任 町田啓太」と公任さまのお名前を見ただけで沸き散らかした第24話の感想です。

っと、その前に。

ものっそい勢いで定子さまと一条天皇について語った第23話の感想はコチラです。

この期に及んで、まだ「中関白家」と「うるわし男子列伝」だけで推して参る! 気満々のワタクシの本気たるや……我ながら、オトコマエ度が爆上がりしています(笑)

ではでは、第24話の感想へ行ってみましょう!


■今日の中関白家

この見出しで書き続けて、早24話。当初は道隆さまが天に召されたあと、どうやって書けばいいんだ?と((((;゚Д゚))))ガクガクブルブルしておりましたが……あと何話かはイケそうな気がしています。

■中国大返しな末っ子さま

本能寺の変での結末を知った豊臣秀吉さまが、中国攻めを速攻で切り上げ、ものっそい勢いで京まで返ってきた「中国大返し」。今回は、出雲に流されていたはずの、中関白家末っ子・隆家さまがそれを髣髴とさせるスピード感で京へ帰ってきます。

実は、病気を理由に出雲までは行っていなかっただけなのですが。この「てへぺろ感」というか、悪びれない感じが隆家さまの面目躍如なところであるようにも思います。

隆家さまって、道長どんと同じく、かなり「周りを見ている」んですよね。正確には「そこにある空気感」を感じ、自分がどう振る舞えばよいかを掴む力が人一倍スルドイ感じ。それは末っ子だからか、あの中関白家で生き抜く術だったのかは分かりませんが。

あと、定子さまもなのですが、中関白家の下二人は「超絶リアリスト」。これは長子である伊周さまにはない性格であり(というか、これさえあればこんなことには……(´;ω;`)ウッ)、もしかすると、それは母貴子さま譲りなのかもしれません。

そんな隆家さまが中央から放逐され、ある意味で「おとな」になって京へ帰ってきた。それはこんなセリフにも表れているように思います。

兄(伊周さま)は恨みをためる。
私は過ぎたことは忘れる。

そうして、「左大臣どの」と頭をすっと下げるのです。隆家さまはこれがすんなりできますが、一方の伊周さまは、鬱屈したまま沈み込んで行ってしまう。結局これが二人の今後の明暗をくっきり分けて行きます。

■『源氏物語』を髣髴とさせる定子さま

一条天皇の「一生のお願い!」が炸裂した結果、定子さまが宮中へ呼び戻されます。

この段階で、定子さまは出家していらっしゃいます。「出家」とは、「俗世を捨てて仏に仕える身となること」を意味します。一方で、天皇や皇后は、現代でもそうですが、「神事」を司るという役目を負っています。

つまり、「出家した定子さま」が「神事を行う」というのは、仏教徒が神事を行うことになり、驚異の異教コラボレーションと同義になってしまうのです。

だからこそ、その神事を行う宮中へ、仏教徒(=異教徒)である定子さまを呼び戻すことに、道長どんはじめ公卿さんたちが難を示すのですね。

そして、一条天皇は全部を理解した上で、それでも「定子さまに、傍にいてほしかった」のです。

これらの宗教観は、現代よりずっとずっと厳格にあの時代の方たちを縛っていたことを思い合わせると、一条天皇の感情の爆発、あるいは、暴発は驚くべきものであったと分かります。

ですが、それは、それだけ定子さまが一条天皇にとって「忘れえぬ人」だったことの証左とも言えるわけで。そう考えると、第24話のアバンで炸裂した佐々k……宣孝さま節。

だれを愛そうが、どんなに汚れようがかまわぬ。
最後に、この宣孝の横におればよい‼

これって、おそらく一条天皇が定子さまにいちばん伝えたいことだっただろうなと思うですよ……ラオウになっちゃってますが。

そうして、定子さまを丸ごと引き受けすぎて、政務を怠っちゃうとか、一条天皇ったら、どんだけ『源氏物語』を地で行こうとなさっているのか💦

人のそしりをもえ憚らせたまはず、世のためしにもなりぬべき御もてなしなり。
(人々のそしりをもかまわず、世間の語り草になるほどのご寵愛であった。)

『源氏物語』桐壷巻より引用

これは『源氏物語』を紹介する記事にも書いたのですが、一条天皇と定子さまを見ていると、『源氏物語』における桐壷帝と桐壷更衣を思い出してしまうのです。

が、もう一人、「紫の上」も思い出したりもします。

紫の上は有力な身内は誰一人おらず、光源氏の愛情だけを頼りに生きてきました。ですが、最後には「女三の宮」に正妻の座を奪われ、失意のうちに亡くなるのです。

定子さまも、身内である中関白家は没落してしまいましたから、今は一条天皇の愛情だけを頼りに生きることになります。また、この2年後(999年)には、年下の藤原彰子(道長どん長女)が入内し、ほどなく立后する、つまり正妻の座を分け合うことになるのです。

この後、定子さまは、一条天皇待望の男皇子である敦康親王を出産しますが、どうしても彼女のなかに「悲劇」の影が見え隠れするのは、私たちが彼女のその後を知っているからか、それとも。

■うるわし男子列伝

■そうして、彼は「おとな」になった

7歳という、物心がつくかつかないかの年齢で即位した懐仁親王―一条天皇。7歳は、当時の即位年齢の最年少記録です。

次代の帝として、大切に養育されたものの、父円融帝とは離され、母にはある種依存され。それでも、即位したからには民のために善政をしこうと、賢帝であろうと。公卿たちの本音を垣間見、なんとか波風を立てないように、バランサーとして機能しようと奮闘していたのです。

たった一つの「光」であった中宮と引き裂かれようとも

もしかすると、一条天皇って、幼い頃からずっと「わがまま」とか「本音」とかを言う場所を持っていなかったのではないでしょうか。その影響でか、「わがまま」の言い方を知らないというか。

だからこそ

これは私の最初で最後のわがままである。

と、ここで切り札をきってしまう。もちろん、それくらい一条天皇のメンタルがぎりぎりのところまで追いつめられていたとも言えるのですが。

波風など立ってもかまわぬ。

そう言い切り、自分の唯一の「光」であり、「望み」である中宮定子を宮中に呼び戻すことを独断してしまいます。

これが誰にも支持されることのない「わがまま」であることも、凪であるべき宮中に「波風が立つ」ことも全部理解しているところが、一条天皇の悲しいところでもあるのですが。それでも、全部押し切った。

実は、私は、このときの詮子さまのご表情が深く印象に残っているのです。

ずっと「自分が守り、教え導かなければならない子ども」だと思っていた帝が、父となり、自分の「我」を押し通す力強さを見せた。

それは親としてとても喜ばしいことでもあったでしょうし、だからこそ、詮子さまは帝の御意志を最大限に支持する言葉を発するのです。

この場面は、帝のきりりとしたご表情と共に、詮子さまのやわらかく温かな目線もとてもすてきで、印象的でした。

■内裏から出るので「行幸」です

そんなこんなで。すったもんだの挙句。ロバート実資さまの「前代未聞、空前絶後、超不可解」と四字熟語呪文も響かせながら(え)

定子さまは一条天皇のもとに戻ってきます。

が、どうにもこうにも「出家なさっている」ことがネックとなり、ぎりぎり内裏ではない「職御曹司」に入られることになったのです。これは、政治家の伝える無理難題を法律の隙間を縫ってなんとか成立させる官僚さんたちの苦労がしのばれるみたいな、行成さまによる苦肉の策でした。

駄菓子菓子。

ここはぎりぎりではありますが「内裏ではない」ので、天皇が定子さまのもとへ行くためには、行幸のスタイルをとらねばなりません。

そもそも「行幸」とは、天皇が内裏から外に出ることを指します。そのため、現代の感覚からすれば、えらく大袈裟に見えますが、帝は「手輿(たごし)」にお乗りになるのです。

ですが、その後の急ぎ様を見ていると、この場面における帝の内心の沸きっぷりや、「歩いた方が絶対早いのに…」「全速前進しろよ…」とか思ってそう……などと想像できて、ちょっとかわいらしいかも(笑) あの扇で隠していらっしゃる口角は、ぜったいに「ぺこちゃん」みたいに超あがってるんだろぉなぁ…♡

そうして、職御曹司に着くや否や、なかなか見ることのできない、天皇の廊下全力疾走が爆裂。

その走り方がまた、小学校の廊下で、男の子が先生に「こら、走るな!」と言われたとき、「走ってないもん!」と言い訳するときの走り方にそっくりだったりして(笑)

しかも、帝がお召しになっているのは長袴ですから、内側でめっちゃキックしてそう…とか思っていたことはココだけの話♡……とまぁ、そんな私の不埒な想像はともかくとして。

「会いたかった、定子」

ここで「中宮」ではなく、「定子」と心から呼ぶところに、一条天皇のこれまでの我慢が、抑えきれない恋情があふれていて、ちょっとだけ泣きそうになったのでした。

■今週は一言お話になりましてよ

というわけで、どんな分かりませんが、第24話では公任さまご降臨です!しかも、陣定で一言お話になり……その一言だけで、来週までを過ごせとおっしゃるのね、と思ったりもして(涙)

・ ・ ・

陣定では、伊周さまと隆家さまの処遇について話し合われました。「明法家に勘申させる」「先例に則る」「本所に留める」などの意見が出ました。そのなかで、公任さまは「本所に留める」派。彼らが都に返ってくることで、公卿のなかのバランスの崩れることを危惧なさったのかもしれません。

それにしても、いろいろ意見が出てるのに「同じです♡」の一言でかいくぐった道綱どんのかわいらしさよ……いや、どれと同じなのよ(笑)でも、あれで許されるところが、彼の人徳であり、笑顔の賜物なのでしょう。

■まとめ

そんなこんなで第24話「忘れえぬ人」の感想でした。

実は、諸事情がありリアタイできず、録画で見たのですが。ぼんやりと画面を見ながら、私の頭のなかではずっとbacknumberの「思い出せなくなるその日まで」が流れていました。

たとえばあなたといた日々を
記憶のすべてを消し去る事ができたとして
もうそれは私ではないと思う
幸せ一つを
分け合っていたのだから

第24話って、感想をここまで書いてきましたが、結局はこの歌詞がすべてのような気もします。これは、いろんな痛みを抱えて、それでも前を向いて生きていく人たちの物語なのだ、と。

大河ドラマ『光る君へ』を来週もご一緒に楽しめたら、とても嬉しいです。


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