■大河ドラマ『光る君へ』第23話「雪の舞うころ」感想ー「ありがとう」って伝えたくて、あなたを見つめるけど
えりたです。
大河ドラマ『光る君へ』第23話も、いろいろな思いや思惑が錯綜して、ドキワクしましたね。
でも、いちばん興奮するのは「敦明親王」のご登場だな。間違いない。……と少々サンドウィッチマンのコントの入りを(え)
えぇもぅ、あの頃の歴史を大好きすぎるワタクシは、おそらく世間さまがほとんど注目しないであろう敦明親王さまがすでにご誕生になっていたことに狂喜乱舞。「うわぁ…ここからまたこじれるぞぉ♡」とにやにや(をい)
リアタイしているときも
と叫んでいたワタクシ。公任さまがお出になっていなくても、強い子だから泣きません(`;ω;´)ブワッ
そんなこんなで、公任さまがたっぷりお出になった第22話の感想はこちらです。
ではでは、次なる波乱を予感させる第23話の感想に行ってみましょう!
■今日の中関白家
■そうして彼女はひとり未来を見据える
第1話から続けてきた「今日の中関白家」ですが、今はもう定子さましかいらっしゃいません( ノД`)シクシク…
でも、第23話ではとても……とてもすっきりとした表情をしていらっしゃって。産まれてくるお子と一緒に生きていこうと思っていらっしゃるようにも見えて、純粋にうれしかったです。
そんな定子さまが、ききょうさまとご一緒に白い装束を召されていたのはもういつ出産が来ても良いように、ですね。事実、ナレーションではありましたが、場面の次の日に「脩子内親王」はお生まれになりました。長徳2年(996)12月のことです。
脩子内親王は、未婚のままで生涯を終えられます。ですが、一条天皇は幼くして母を亡くした彼女をとても大切に養育しました。彼女は芯のある、気高い女性であったと……それはきっと定子さま譲りだったのでは、と思ったりもするのです。
■「うつくしきもの」は「かわいらしいもの」
第23話で描かれた、定子さまとききょうさまの場面、この上なく美しかっただけでなく、ほんのりとした温かみにも溢れていました。それだけでちょっと泣きそうに。
今回紹介された『枕草子』は「うつくしきもの」の章段でした。古語の「うつくし」は現代語では「かわいらしい」にあたります。
中学校や高校で「うつくしきもの。瓜に描きたる児の顔。雀の子の、鼠鳴きするに、躍り来る。二つ三つばかりなる児の、急ぎて這ひ来る道に……」と習った方も多いのではないでしょうか。
さて、物語のなかで定子さまが朗読されていたのはこの章段の最後部分です。
もうすぐ生まれてくる御子と定子さまを、ききょうさまがほんとうに大切に思っていること。この文章は、そんなまっすぐさや大きな愛に溢れていて、泣きそうになります。意味が取れずとも、声に出して読むだけでとてもすてきだと感じられる文章です。
大河ドラマ『光る君へ』のなかで、『枕草子』は定子さまのためだけに、しあわせな世界が紡がれていて。私は、史実がどうであったか、を超えて、こうであってほしい世界線を実際に目の当たりにできるのがとても幸せなのです。
あの絶望の淵にいて、それでもなんとか定子さまが前を向いて生きていこうと思えたのは、きっとあの頃の幸せな思い出がぎりぎりのところで支えてくれたから。
でも、あまりにも奈落の底を突き抜け過ぎて、定子さまはその思い出のあることさえ忘れていたかも知れません。あるいは、その思い出自体が呪いともなり、定子さまを縛り付けたことさえあったかも知れません。
でも、第14話で藤原寧子さまがおっしゃったように「言葉によって癒せるかなしみもある」。その言葉を実践するかのように、「あの頃のこと」をうつくしくまっすぐな言葉で綴った『枕草子』は定子さまをどん底から救い出しました。
また、思い出って、それを共有する誰かと語ることでより温かさが増すこともあると思うのです。そうして、定子さまにはしあわせな時間を傍で見ていたききょうさまがいる。それはきっと、定子さまをこの世にとどめる縁(よすが)ともなったことでしょう。
だからこそ、嵐の前の静けさであるとはいえ、定子さまとききょうさまの場面は温かく、しあわせな思いに溢れているのではないでしょうか。
その一方で。
■うるわし男子列伝…?
■思い出を共に語るもののない孤独を
第23話では、一条天皇の孤独がぎゅぎゅっと押し出されていました。
定子さまはききょうさまと「あの頃のこと」を語り、微笑むことができる。でも、一条天皇は。
「あの頃のこと」を共有していると思ったからこそ、蔵人頭行成に、彼が献上した『古今集』を手にしながら語りました。でも、一条天皇のいるのは、それさえも「政略」とされる場所だったのです。
もしかすると、一条天皇にも最側近である蔵人頭の行成を自分の側に引きとどめておく意図はあったのかもしれません。
ですが、どちらにしろ、一条天皇は一挙手一投足が「私人」あることを許さない場所に、ひとり置き去りにされていることを思い知る結果となったのです。
また、このとき道長どんが、心情的に一条天皇へ傾きかけていた行成を自分の側から離さなかったことが、後の「立太子」に響いていきます。
そんな伏線が、今からこんなところにひっそりと張られているのを見て、ぐぐぐと泣きたくなったワタクシなのでした。
■ほんとうに大切なのは君だけなんだ
私が、第23話でものっそいうれしかったのは、定子さまがご出産になったとの報に触れ、一条天皇は「中宮は無事か?」といの一番に定子さまの身を案じられたことでした。……超よい夫さんだ……
一条天皇は、定子さまがいちばんたいせつだし、実は定子さましかいらないと思っていらっしゃることでしょう。だからこそ、何をしていても定子さまに繋がってしまう。
なのですが。
帝の務めのひとつに「自分の血統をつなぐ」ことがあります。だから、帝には、入内した女性たちのもとへきちんと通うことが要請されるのです。
たとえば。
円融天皇(坂東巳之助さん/詮子さまの夫君)も、男皇子(懐仁親王=一条天皇)ができるまでは、詮子さまの元にもきちんと通っていました。どれほど、遵子さま(公任さまの姉君)を大切にしていようとも。
だからこそ、生まれたあとは、子を産んでいなかろうとも遵子さまを「皇后」にし、詮子さまには見向きもしないなんてことにもなったのですが。
なんにせよ、この段階では、一条天皇にはまだ男皇子がいません。
だからこそ、今「円融天皇―一条天皇」のラインの皇統が危うくなっているのです。
■ここで「敦明親王」爆誕が効いてくるのです
第1話から皇統争いってひそかにあったのですが。この時期の天皇家は「両統迭立」の状態でした。
①、②の先頭にある「第62代 村上天皇」は同一人物です。この村上天皇から始まって、①のラインと②のラインで皇統を争っている状態が続いているのです。
現在は、②のライン上にいる一条天皇が帝位にいます。が、次の天皇は①のライン上にいる「居貞親王」の即位が決まっています。つまり、三条天皇です。彼は現在の皇太子ですから、そこまでは確定しています。
問題はそのあとなのです。
両統迭立の原則に従うならば、居貞親王が「第67代 三条天皇」として即位したら、皇太子に就くのは一条天皇の男皇子です。ですが、まだ一条天皇には男皇子はいません。
その一方、第23話で明らかになったように、居貞親王のところには「敦明親王」が爆誕しています。そりゃもう、居貞親王が道長どんににやりと笑うのも理解できようというもの。
だって、一条天皇が男皇子を持たないまま「退位」なんてことになれば、三条天皇即位から、敦明親王立太子となりますもの。
つまり、両統迭立は解消され、皇統は①のラインで確定してしまうということ。まぁ、結局は、一条天皇に男皇子が生まれ、三条即位時にはその子が立太子するのですが。
駄菓子菓子。
そんなにすんなりと行かないのが、このころの政治でして……かわいらしい敦明親王もこの後もれなく政争の波に飲み込まれて行きます。
ちなみな話。
ナレーションでもちらっと言っていましたが、居貞親王が即位したところで、道長どんの権勢は変わりません。なぜなら、居貞親王のお母さんは、道長どんのもう一人の姉ですから。兼家パパりんには二人の娘がいて。
どちらの皇統に転がっても大丈夫なように、布石は打ってあったのでした。さすがぱぱりん、抜け目がない。
■まとめにかえて―日野の杉むら埋む雪
越前でもいろいろ波乱は起きているようですね。
都もいろいろ波乱が続いています。定子さまとききょうさまの静かな時間が続くことを願いますが……第24話ではそれもどうやら破られるようです(泣)
兎にも角にも。第24話には公任さまもいらっしゃることを、ほんのり期待しながら。またご一緒に楽しめたら、とても嬉しいです。
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