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先生は本と映画です。

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タイトルの通りです。本や映画という先生から感じたことを書いています。
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#コンテンツ会議

誰かの今を美化する、という生き方

誰かの今を美化する、という生き方

人生はない物ねだりの連続である。

今自分が手にしているものの尊さや素晴らしさに気づかずに、そこにはないものに手を伸ばしてしまう。どうして手に入ると色褪せて見えてしまうのだろう。あんなに買うまではワクワクしてた十数万のコートが、3回目あたりから慣れてしまうのはなぜだろう。嫌だった職場が、離れた途端よかった場所かもしれないと思うのはなぜだろう。どうして、目の前の現実より、記憶や想像のショーケースに入

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個人的な話が社会問題と繋がるから映画は面白い。2022年の映画ベスト10

個人的な話が社会問題と繋がるから映画は面白い。2022年の映画ベスト10

2022年公開の映画の中でベスト10を。

カモン・カモン(脚本・監督 マイク・ミルズ)子供は写し鏡。

もしも、明日から9歳の甥っ子を預かるとして、その子とうまくコミュニケーションを取れるだろうか。9歳は、「9歳の壁」という言葉があるくらい、子供の成長発達段階において大事な時期な一つで、イヤイヤ期とも呼ばれる。

本作はラジオジャーナリストのジョニー(ホアキン・フェニックス)とそんなイヤイヤ期真

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「なんとなくモヤモヤ」を解消する「幸せのメカニズム」について

「なんとなくモヤモヤ」を解消する「幸せのメカニズム」について

同じ仕事をしているのに、仕事が楽しいという人とそうでない人がいる。たくさんお金を持っているのに不満そうだったり、逆にそこまで贅沢をしていなくても幸せそうな人がいる。

誰しも不幸になりたくて生きているわけではないのに、その差はどこから生まれるのか。何より、自分も日々を「幸せ」に過ごしたい。

なるべく誰もが取り入れられそうな幸せになれる方法はないのだろうか。

そんな疑問から、幸福学について研究さ

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批評ができると、人生が面白くなる。「批評の教室」北村紗衣 著

批評ができると、人生が面白くなる。「批評の教室」北村紗衣 著

映画のレビューアプリ「Filmarks」を見ていると、たまに「すごい深読みをしているな」というレビューに出会うことがある。物語で描かれている小物や流れている音楽、監督の趣向など、知らなくても楽しめるけど、知ったらより楽しめるようなことについて書かれているレビューを読むと、自分もそういったレビューが書けたらいいのになと思う。

「批評の教室」は武蔵大学人文学部英語英米文化学科准教授の北村紗衣さんによ

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視野に限界はあるが、配慮に限界はない / 朝井リョウ「正欲」を読んで

視野に限界はあるが、配慮に限界はない / 朝井リョウ「正欲」を読んで

朝井リョウの「正欲」を読んだ。

この本は、昨今当たり前のように聞く「多様性」をテーマにした小説だ。多様性とぱっと思い浮かべるのは、ジェンダーや国籍、健常者と障がい者などが同じ空感で共存している様子だろう。前提として、こうした共存が可能になっているのはとても素晴らしいし、尊いことだと思っている。

だが、朝井リョウはマジョリティが作った「多様性」という言葉では包括できない存在をとりあげ、僕らが言っ

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生きづらさを抱える人にオードリーの若林さんの新著を。

生きづらさを抱える人にオードリーの若林さんの新著を。

オードリーの若林さんの新作エッセイ「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」を読んで、希望と絶望が同時に押し寄せてきた。

この本は、彼がキューバ、モンゴル、アイスランドについて書いた紀行文だ。「すべらない話」を聞いているかのような面白さ、時折出る人間くささ、そしてハッとさせられる含蓄のある名言がミックスされた最高の文章たちで綴られている。

そして、「生きづらさを抱える人」への手紙でもある。

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今年観た120本の映画からベスト10を選んでみた。

今年観た120本の映画からベスト10を選んでみた。

2020年が始まった時「映画を100本見るぞ」と意気込み、無事達成したので、その中でも特に印象深かった作品を10個選んでみた。

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編原作は知っていたし、無限列車編のあとがどうなるかも知っていたけど、それでもなおグッとくるものがあった。あんなに映画館の空気が一体化するんだなと。

観た人の多くが感じたと思うけど、やっぱりラストシーンの描き込みはえげつない。あのシーン作るだけ

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100%でわかり合えたら幸せなのか——「I Am Human」

100%でわかり合えたら幸せなのか——「I Am Human」

記事を書くとき、頭に浮かんだ文章がそのまま目の前のテキストエディタに書き起こされてくれたらなとたびたび思う。

例えば、脳に電極チップが埋め込まれているとする。自分の思考の刺激に合わせ、チップが何を考えているのかを信号で理解してくれて、それを勝手に書いてくれたりしたら、どんなに楽なことか。

映画「マトリックス」では、主人公のネオが自分の格闘スタイルをアップデートするために、カンフーの型が脳にアッ

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ジョジョ・ラビットは、「愛にできることはまだあるよ」と教えてくれる

ジョジョ・ラビットは、「愛にできることはまだあるよ」と教えてくれる

友達の誰かが「最高!」と言っていたことだけが頭の片隅にあった「ジョジョ・ラビット」を観た。

本当に「最高!」だったので、まだ観てない人は今すぐ劇場に足を運んでください。

舞台は第二次世界大戦まっただ中のドイツ。

ナチスに傾倒し、心の中に空想上のヒトラーを友達として持つ10歳の少年ジョジョ。彼が青少年集団ヒトラーユーゲント(ナチスへの心棒を深める大人の陰謀マシマシのボーイスカウト)のキャンプに

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インタビューは一方通行じゃあないよ

インタビューは一方通行じゃあないよ

僕の仕事は編集者だ。だから、仕事で色々な人にインタビューをする。インタビューさせていただくのは起業家の方であることが多く、毎回毎回準備してもしたりないと思っている。それでもなんとか時間を見つけて、過去に出ている記事はもちろん、余裕があればTwitterを遡ったりする。そうしてやっと同じ目線で話すスタートラインに立てる。

なんでもかんでも準備が9割なので、準備の大切さは強調しすぎることはない。これ

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平成最後のあまちゃんヒーロー「ULTRAMAN」は"等身大"だから強い

平成最後のあまちゃんヒーロー「ULTRAMAN」は"等身大"だから強い

戦隊シリーズ、仮面ライダーシリーズ、ウルトラマンシリーズ。

平成30年の中で、たくさんのヒーローが生まれてきては、その時の子供達に元気や希望を与えてきた。しかし、現実世界では、彼らのような物理的に強いヒーローはもはや必要とされない。誰もが臨む「皆のヒーロー」は現実離れした存在になりつつある。

そんな平成最後のこの時に、これからのヒーローについて考えさせれる一つの作品が公開された。

光の"等身

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ロジカル・プレゼンテーションから学ぶ、伝わる文章を書くための基盤の作り方

ロジカル・プレゼンテーションから学ぶ、伝わる文章を書くための基盤の作り方

「良い文章とは何か」

人によって答えは様々だろう。だが、人が文章を書く目的は自分の主張を誰かに通すためである。自分だけが読む日記は含まれないかもしれないが、Twitterのつぶやきから会社で提案する企画書、世の中で売れているベストセラーまで、全ての文章の目的は書き手の主張を読み手に伝えることだ。

文章を書くことは、他者を動かさんとする”力の行使”なのである。

これは、プロのライター古賀史健さ

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「悩む」って本当に悪いことなのか

「悩む」って本当に悪いことなのか

社会人になると、「悩むことは時間の無駄だ! 悩むくらいだったら動いて失敗したほうが良い!」という声を聴くことが多くなった。

Googleで「考える 悩む 違い」と検索すると、「悩むのは悪いこと」という意見が目立つ。一般的に「悩む」ことにはネガティブなイメージがついている。辞書で「悩む」を調べてみると、いたみ苦しむ。病む。こまる。などの解説が出てくる。

だけど、そんなに各方面からバッシングされる

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なぜフレディは、多くの人の心を癒したのか

なぜフレディは、多くの人の心を癒したのか

あなたの本名がフレディ・マーキュリーではなく、ファルーク・バルサラだと知ったのは、映画「ボヘミアン・ラプソディ」がきっかけでした。

あなたは死んでなお、多くの人に愛され、あなたの全盛期を知らない僕みたいな若者ですら熱狂する映画の主人公として、伝説のロックシンガーとして、今も語り継がれています。

なぜ「ボヘミアン・ラプソディ」が、ここまで年代を超えて多くの人を胸打ったのか。それはあなたが一重に、

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