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小説「solec」

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2022年1月の記事一覧

(小説)solec 3-3「ハバロフスク上空」

(小説)solec 3-3「ハバロフスク上空」

 「第一次攻撃は成功したようだ。」

国境線を超えて、ハバロフスクへ入る。シミュレーション通り、夜明けの空をいくつもの光の筋が・・・横切らなかった。

「おい、ヤシガニの再突入、まだかな。」

「時間的に、もうしてるんじゃないか?」

高度40,000フィートから当たりを見回すが、再突入時の光は見当たらない。

「朝日に隠れてるんじゃないか?」

それに、雲海が広がっていることも気になる。

予報

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(小説)solec 3-4「列島消失」

(小説)solec 3-4「列島消失」

 「日本列島、消えちゃいましたね。」

分析の結果、列島を包み込んだ雲はジャミングのような効果を持っているらしい。これにより、攻撃対象はおろか、列島の姿さえ確認できなくなっている。まるで日本列島全体が巨大な要塞のようだ。
(始めから閉じていたようなものだが。)

「ここで見る限り北京は大丈夫そうですよ。でも南がね・・・。全滅に近い。第四機甲師団って確か有人部隊でしたよね。しかも四川省の各地で市街地

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(小説)solec 3-5「プティ・クーデター」

(小説)solec 3-5「プティ・クーデター」

 

 「全地球的ジャミングですね・・・。」
 第二作戦室には大勢の人が詰めかけている。みんな、普段は別の仕事をしているソレク軍のお偉い方だ。
「フレアを活用したんだろう。うまいな。」
宇宙研の委員長が言う。あの、使い物にならなかったヤシガニの設計もここだ。感心している場合ではない。
「15分前、テンシャン山脈に不時着したパイロットからホットラインです。報告によると、120機近くの爆撃機が西方へ移

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(小説)solec 3-6「赤い空中要塞」

(小説)solec 3-6「赤い空中要塞」

「アレックス小隊へ、私はヒイラギ。まず日本へ。」
「あいよ。もしか君が武士道ちゃん?」
もう通信が切れてる。少人数のメンバーで世界中の部隊に指示するのは恐ろしく大変なことだろう。

かくして、プチ・クーデターはすぐに成功した。

「ヤシガニ、第2射発射シーケンス入りました。発射2分前。」
「静止軌道上の攻撃衛星を準天頂軌道に移動完了。これで間髪入れずに敵を蒸し焼きにできます。」
「よし、宇宙研のみ

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(小説)solec 3-7「補給」

(小説)solec 3-7「補給」

「敵の対空兵器が衛星攻撃によって無くなった今、制空権はこちらにある。ヤシガニが上陸した今、こちらの勝ちは決まりだろう。せいぜい3日かな。そうだろ、ロレンツォ君。」トゥラーティは聞く。

「僕がこいつら相手に三日もかけると?6時間で十分だ。それに、第2射のヤシガニはすべて物資輸送に使うつもりだから。戦闘では使えないんだよ。多脚戦車はさ。あんたらの考えた隠し兵器とやらはさ。」

「武士道ちゃん。ダイヤ

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(小説)solec 3-8「とどめ」

(小説)solec 3-8「とどめ」

 本丸、東京。すでに工作部隊により水門は破壊されている。江東ブロック、品川ブロック、墨田ブロック、港ブロック、新港ブロックの水攻めが完了している。さらに各地インフラを掌握し、都内各地でガス漏れによる火災を発生させた。これにはある一つの目的があった。

それは、どこかにあるはずの本丸を見つけるためだ。

「まぁこの程度の状況はおそらく敵も予想はされていたでしょうね。最悪の予想でしょうが。国費を軍備に

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(小説)solec 3-9「戦争の後始末」

(小説)solec 3-9「戦争の後始末」

「作戦コードSDCε–1だ。武士道ちゃん。」
「はぁ?そんなもんありませんよ。」
「今考えた。」
「で?」

「作戦コードSDCε–1」別名「不都合な真実」。あえて、残すということ。篭城させたままにするということ。そして世界中にその醜態を晒すということ。もう死んだ政権であるということを彼ら自信がその屍をもって証明する。論より証拠。不確定な歴史的事実よりも、腐った実体だ。政治の標本を見せ続けることで

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(小説)solec 4-1「廃墟」

(小説)solec 4-1「廃墟」

 ソレクからアンガローニ202で7日、終着駅ルーアンに流れるセーヌ川の上流約100kmに位置する都市「パリ」。かつてはヨーロッパ最大の都市であったこともあり、あらゆる文化が行き交っていた。イタリアのフィレンツェを継ぐ芸術の都としての栄光のみならず、市民革命の原点であり、世界を変える中心地となった。その中でも、17891年の革命と1870–1871年のパリコミューンは、その後のソレクの登場と社会主義

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(小説)solec 4-2「再会」

(小説)solec 4-2「再会」

 私は何も変わらない朝の街を放浪している。

 病院が決めた日課で、私は毎日決められたルートを散歩しなければならない。ソレクの街並は直線と曲線が規則的に・不規則に混じり合うので、おかしくなりそうだ。そんなことを考えながら歩いているとふと、広場に人だかりができている。どうしたのだろうと見ると。彼女である。彼女を見るのはオレンブルクの事件の日以来である。忘れるわけもないが、あれからいろいろあって、遠く

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(小説)solec 4-3「理想のもとで」

(小説)solec 4-3「理想のもとで」

 彼女の家は「外周居住区画」にあった。まぁソレクの住人のほとんどはここにすんでいるのだが。廊下も閉鎖的で、窓もないのでここがどのくらいの高さになるのかもわからない。エレベータの表示は42階を指していた。

断ることもできた?というか普通に家にお呼ばれしただけだ。断る理由も無い。

「ここだよ。」
彼女のトーンが下がる。まだ全裸で広場にいたときのほうが元気だった。

彼女がドアノブに手をかけると、ド

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(小説)solec 4-4「アンガローニ202」

(小説)solec 4-4「アンガローニ202」

 こうして私たち2人はソレクを出て、パリへ行くことにした。当然、第1段階への旅客航空便はないし、旅客専用列車もまた存在しない。第1段階へ行くための手続きは困難の連続というか不可能であったが、私には不幸にも維持隊とコネがあった。なんとか昔の研究仲間に知られずには済んだ。室長に知られるとまずい。心が痛まないと言えば嘘になるが、私は彼女を守らなくてはならない。

アンガローニ1日目

「アンガローニに乗

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(小説)solec 4-6「ガタガタガタガタ」

(小説)solec 4-6「ガタガタガタガタ」

アンガローニ5日目。

飽きた。何もかも飽きた愛おしい彼女の顔も姿さえも、飽きた。
朝食はじゃがいもペーストと黒パンから選べる。選択肢はそれだけ。

「ねぇねぇ、お姉ちゃん。・・・好き。」
ブハッ。また飽きたーとかいうかと思いきや。
朝食の冷めたコーヒーを吹いてしまった。

「ゲホッゲホッ。あんた狙ったでしょ。」

もういい加減、同じ部屋に5日間もいて、2人ともおかしくなっているんじゃなかろうか。

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(小説)solec 4-8「アナーキスト」

(小説)solec 4-8「アナーキスト」

 安藤水子の経営する小さなギャラリーla musée comme medias(メディア美術館)」は文字通り、あらゆるコミュニケーション媒体をテーマとしたギャラリーである。
 ソレクには各研究機関によるシンクタンクの集合体という側面はあるが、あらゆる情報を何かひとつの媒体を通して見ることは不可能だ。そうなると、一個人としては「見たいと思った情報」しか享受しなくなる。必然的に学業の分業化のみならず、

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(小説)solec 4-7「メディア・ギャラリー」

(小説)solec 4-7「メディア・ギャラリー」

 ギャラリー「la musée comme medias(メディア美術館)」はパリ・モンマルトルの斜面にある古い酒場跡を改装して開いた安藤水子の経営する小さなギャラリーである。遠くに古ぼけて萎れたエッフェル塔が見える。

 開業するにはルーアンとパリ市の検問を抜ける必要があったが、維持隊の協力も得られ容易に入国(都市)できた。市中では出てゆくことはあっても、外部から上段階の人間が来ることはまずない

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