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(小説)solec 3-3「ハバロフスク上空」


 「第一次攻撃は成功したようだ。」

国境線を超えて、ハバロフスクへ入る。シミュレーション通り、夜明けの空をいくつもの光の筋が・・・横切らなかった。

「おい、ヤシガニの再突入、まだかな。」

「時間的に、もうしてるんじゃないか?」

高度40,000フィートから当たりを見回すが、再突入時の光は見当たらない。

「朝日に隠れてるんじゃないか?」

それに、雲海が広がっていることも気になる。

予報では、快晴のはずだ。この雲だと、下は猛烈な嵐だ。

「そんなことより、大変だ。本部に連絡が通じない!」

「どうなってる?」

「おい、落ち着け、中佐、本部から操縦してんだろ。ちょいと出て話聞いてきてくんないか?」

「無駄だぜ。小隊長、オフラインだ。」

無人機はみんな最初からそうであったと言わんばかりに自立飛行している。

「静かになったな。」

鳥肌が立った。戦争が始まった。


 状況を整理しよう。俺たちオリオン小隊はソレク軍主導の東日本との戦争に参加している。本来ならば天気は快晴。第一次攻撃により敵の対空兵器はその大半が消滅、そこへヤシガニ到来、日本各地の基地を始めに叩く。足りない部分は我々航空戦力で補い、上陸部隊および西日本からの地上軍を支援する。ウラジオストクは我々の最初の目標だった。

 だがハバロフスク上空40,000フィートで我々は孤立化した。第一次攻撃の効果は満州のあたりではあったらしいが、ここへきてやたらとロックオンの警告が増えてきた。今はアンチロックシステムのおかげで攪乱できているが、ジャマーに探知されれば、いつSAMの餌食にされるかもわからない。連絡が取れるのは短中距離光通信の通じる見通しの良い半径150km。これも地球の曲率の関係で高度による制限がある。雲海の下はどうなっているかもわからない。本部とも連絡が取れない。唯一の救いは空中補給機と無人機の支援兼電子母機と装備の付け替えも可能な特殊補給機の3機が自立飛行モードでこちらの命令通りに動くことだ。だが、小隊長の私にはこれらにどう命令を送れば、どうなるということがさっぱりわからない。これでは宝の持ち腐れ。戦えない。残りの燃料は少ない。・・・戻るか。

だが、甘かった。SAMを失った満州の防空を誰がやるのか?

「6時より不明機多数。距離190km日本海上空。」

「指向性レーダージャマーを探知。SAM、直下、来ます!」

「全機、用意はいいな?こいつが初陣になるやつも多いと思うが、まずは無人機をデコイにして逃げるぞ!いいな。全力で回避、回避して逃げまくれ!それだけだ。」

了解!の返事の代わりにすべての無人機がひっくり返り直上してくるSAMと交戦する。オリオン小隊有人の18機は3機の補給機を護衛しながら、ひたすら戦闘空域から逃げる。

「速さなら負けない!」ここがスクラムジェットエンジンの見せ場だ。特に初陣の隊員は補給機を置いてアフターバーナー全開で逃げる。

「おい!待て!」

「大丈夫、あいつらにはHADSがついてるよ。」

「そいつはヤシガニにだって付いてたろ!そのヤシガニが降りてこねえってことは・・・」

初陣たちはすでに見えないところまで行ってしまった。

「坊やたちをレーダーで追え。それからのろまな補給機!速くならねえのか?」

「小隊長知らないんですか?そいつは隊長に付いてきますよ!」

「じゃぁ俺が先に逃げるべきだったってことか?」

「そうです!」

「あぁ全く。」

アレックスがアフターバーを入れると補給機もアレックス機を追い加速を開始した。

警告音。6時から!SAMじゃない。長距離AAMだ。

「距離、150km!来ます。」

「実況はいいから!散開。」

レーダーを見ると先行した初陣たちの姿が消えていた。

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