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エブエブとはなんだったのか?(いまさら)

今さらですが‥‥みました。
そして、泣きました。

なぜ泣いているのか?
これはなんの話なのか?
良くわかりません。
そして、主人公の設定とは全く違う私ですが、
なぜか見終わったあとにはっきりと
"これは私たちの物語だ"
そう思いました。

どうも、えだまめです!
一昔前のブームに平然と乗っかる人です!
今回は今さらですが、「エブエブとはなんだったのか?」を思うまま書きたいと思います!


アカデミー賞を総なめした話題作

少しでも映画が好きな方であれば、知っとるわ!という方も多いかと思いますが、一応作品の概要を説明すると‥‥
エブエブとは、「エブリシング エブリウェア オール・アット・ワンス」という映画の略称です。

昨年アカデミー賞最多7部門受賞。
史上初、アジア人女性が最優秀主演女優賞を獲得した話題作です。


監督は、ダニエル・ラドクリフを

死体兼モーターボート役に起用した奇才


監督はダニエル・クワンとダニエル・シャイナート。2人合わせてダニエルズと名乗っています。知る人ぞ知る名作、「スイス・アーミー・マン」を製作した監督です。

少し本題から逸れますが、「スイス・アーミー・マン」とは、ハリポタシリーズでおなじみのダニエル・ラドクリフ(またダニエル)を死体兼おならで発進するモーターボート役に抜擢した奇才です。

意味が分からないですよね。
私も分かりません。

ですが、私は以前この作品を見て、世界観の虜になってしまいました。奇妙なストーリーライン、際どい下ネタ、繊細な心理描写、いちいちドラマティックで愛らしい画ー。
これは夢か現実か?もうどっちでもいいか。そんな風にゆるゆると暖かい沼にはまっていくような映画です。

まさか、この映画の監督がエブエブを撮っていたとは。エブエブおもしれ!となってから監督のことを知った私は、そりゃハマる訳だわ。と妙に納得したのでした。


またもや奇妙なストーリー

そして、本作。
ざっくり設定を纏めると以下のようになっています。

主人公はアメリカで生活する中国人のおばさん。夫、娘、父親の4人家族で、夫婦でコインランドリーを経営しています。
旧正月のパーティーの準備とランドリーの業務、父親の介護で大忙しの中、税務署に経費の申告(たぶん)をしにいくところから、物語は始まります。

ここまでは、特別奇妙でも無いのですが。
ここから急に、SF要素とカンフーが加わります。笑

※ここからは、ネタバレが入りますのでご注意ください。





おかしな行動をすると、平行宇宙の自分が持ってる能力を使うことができる


本作のレビューは賛否両論です。
否定的な意見の方は大概、ストーリーが良くわからなかったという意見です。
確かに最初の15分は我慢が必要かもしれません。
しかし、監督曰く、日本のアニメに影響を受けて描かれた本作。日本のSFアニメのとんでも設定にある程度慣れた方であれば、そう難しい内容ではありません。

要は、平行宇宙が無数に存在している世界で、各宇宙に様々な能力を持った自分が存在しており、ピンチになるとその能力を手に入れられる、という設定です。

人は、人生の中で常に選択をしています。
主人公の場合、結婚するかしないか等の大きな選択から、経費のレシートを右のノートに貼るか、それとも左のノートに貼るか等の些細な選択まで‥‥。
そして、選択を行う度に、その先に続く未来が分岐します。そのどの世界も消えずに存在し続けるため、膨大な数の宇宙が同時に進行していくこととなります。

主人公のエブリンは何の特殊能力もない普通のおばさん。ですが、別の宇宙のエブリンはカンフーの達人。または有名女優。またはスーパーシェフなどなど。
各宇宙のエブリンの能力を使って、敵に立ち向かう訳ですが、そのためには通常では考えられない"おかしな行動"をとらなければ、その能力は手に入りません。
そのおかしな行動とは?
是非映画をご覧ください。
本当に変です。


これは何の物語?

設定は大体分かったところで、この映画が何をメインテーマにしているのか?
それは、私も良くわかりません。
映画では名言されていませんが、主人公のエブリンはADHDを患っているという設定だそうです。
とすると、これはADHDの症状と戦う話?
それとも、アメリカで暮らすアジア人の苦悩の話?子育ての難しさの話?夫との絆の話?

扱っているテーマの多さ、さらには多元宇宙を行き来するという設定が加わりもはやカオス!B級映画ギリギリのところを上手いこと纏めているのが、やはり俳優の素晴らしい演技。また、どこを切り取っても印象的で、いちいちドラマティックで愛らしい、独特な映像表現です。

たしかに、ごちゃごちゃしていて分かりにくいいストーリー。しかし、人生はカオスです。
劇中でエブリンの夫役のキー・ホイ・クァンも言っています。
"毎日毎日、何が何だかわからない。"
エブエブとは、まさに人生のようにカオスで慌ただしい映画です。


"私たちみたいに愛らしくない女が
世界を動かしてる"

そして、胸を打つのは登場人物たちの紡ぐ言葉。誰に向けて、どのような意味を込めて言っているのか定かでない台詞もありますが、何故か深く胸に刺さります。

序盤に敵として登場する、税務署の怖い白人のおばさん。アジア人から見ると体も大きく、言葉も上手く通じません。
"これは経費で落ちません!"とキレられる主人公達からしてみれば、移民をいじめる敵ですが、彼女にもドラマがあります。
仕事のし過ぎで腕にテーピングを巻き、夫婦の不和に悩む日々。そんなボロボロの彼女が物語の終盤、同じく打ちのめされてボロボロになった主人公、エブリンに言います。

"私たちみたいな愛らしくない女が、世界を動かしてる"

毎日ボサボサの髪で家事をして、ダサイ服を着て赤ちゃんの世話をする、日々を必死に生きるボロボロのクサクサ女の私に、深く胸に刺さった言葉です。


冴えない夫の戦い方

そして、最初から脇役でしかなかった冴えない夫が、ラスボスに屈しそうになるエブリンに言った台詞。

"優しくならなきゃ
お願いだ
優しくなって
自分を見失ったときは特に
自分を戦士だと思っているね
僕も戦士だよ
僕なりに戦ってる"

毎日毎日、家事に仕事に税金の処理‥‥。
一人で戦う戦士であるエブリンですが、楽観的で頼りない、冴えない夫も戦う戦士でした。
夫なりの戦い方、それは「優しくなること」。それが、最終的にエブリンがラスボスに打ち勝つ鍵となります。


娘とのほんのわずかな大切な時間

物語の最後では、ずっと分かり合えなかった母と娘が対峙します。
絶望の淵に立つ娘が頻繁に口にする言葉、「本当に意味のある時間なんてない」。この言葉の意味がここでようやく分かります。

母から見ると、アメリカという苦しい環境で一生懸命育てたのに、全く思い通りにいかない娘。母に反抗して、勝手にタトゥーを入れて、白人の彼女を作って‥‥。
"もう別々の道を行きたい"。そんな風に言う娘に向かってエブリンはこう言います。

"よりにもよってこんな世界で
あんたと一緒なの?
あんたの言う通り
意味がわからない。
なぜ何があっても
一緒にここにいたいのか。

わたしはいつも、
いつでも、
あんたとここにいたい。"

ぶつかり合っても、分かり合えなくても、一緒にいたいと言う母に、娘が問います。

"だからなに?
他のことは全部無視?
どこでも行けるのに
どこか他のー
マシな娘のいるところへ
ここにはほんのわずかしか‥‥
本当に意味のある時間なんてない"

一生懸命戦う母。愛も、優しさも忘れて、毎日忙しく目まぐるしく過ぎていく日々。
この家には、本当に意味のある会話をしたり、お互いを分かり合い、絆を深めるような家族の時間なんて無い。娘はそう言っているように私は理解しました。

しかし、今までのエブリンとは違います。夫の戦い方を学んだ彼女は、娘に向かってこう言います。

"なら大切にするわ
そのほんのわずかな時間を。"


この物語は、「私たちの物語」

この映画を見て、自分の夫のことを思いました。そして、母のこと、子供達のことを思いました。

頼りなく、無口で、言われないと動かない我が夫。でも改めて考えると、家族思いで優しい人です。仕事と子育て、そしてうるさい嫁に囲まれながら、夫も夫なりに戦っているのだと気がつきました。

私の母は結婚7年目でようやく産まれた娘を0歳から保育園へ預け、フルタイムで働いていました。母は常にイライラし、私たち子供との時間を大切にする余裕などありませんでした。
しかし母にもドラマがありました。母は私と同じく「愛らしくない」一人の女であり、そんな母が「世界を動かして」いたのは紛れもない事実です。

私は現在育休中で、来年4月に仕事へ復帰する予定です。そんな私の悩みの種と言えば、「仕事と子育てがちゃんと両立出来るか」。
でも、悩めど悩めど、結論は同じ。エブリンが出した結論と同じように、子供との少ない時間を大切にするしかない。だけどそれが難しい。
上手くいかなくても、ぶつかることがあっても、「あなたとの時間を大切にしたい」という思いだけは、子供に伝えよう。そう思いました。

たとえ側にいなくても、家族がいない人はいません。この映画見たときに、自分の家族を思い浮かべた人は私だけではないはずです。
そして、エブリンと同じように、誰かの娘であり、母であり、女である、そんな「私たちの物語」であると勝手に感じてしまうのでした。


冒頭のワンシーンに残された謎

この映画にすっかりハマり、2回鑑賞して気がついたことは、その散りばめられた伏線の多さです。
どれも比較的分かりやすいので、ストーリーが分かっている2回目は、伏線探しを楽しみながら鑑賞しました。

しかし、分からないのが映画冒頭に数秒だけ流れるシーン。
小さな鏡に写るのは、家族3人で楽しげにカラオケで歌っている場面です。ほんの2、3秒で画面が切り替わり、そこから本編が始まります。
おそらく使っているカラオケ機は、"経費で落ちません!"と怒られた例の物。
本編では、主人公一家にはカラオケを楽しむ時間的余裕など無いようでしたし、家族の関係も良くありませんでした。

これは別の宇宙でのワンシーンなのか?
それとも、家族が和解した後の未来の風景?
そしてなぜ、突然に冒頭に流すのか?

個人的には、製作側が最初から「この映画は2回以上鑑賞されるであろう」と予想し、挿入されたシーンではないかと考えています。
ラストの希望を残した結末と、そこから繋がるように映る、冒頭の家族団らんシーン。
この映画は、監督の思うがままに作られたようにも思えるストーリーですが、実は練りに練られたものであることが分かります。

さいごに

私は現在、0歳と2歳の子育てに日々奮闘しています。なかなか映画を見る時間がない中で、久々に映画を見ました。
だから、より感じ入ってしまう部分もあったかと思いますが、控えめに言って‥‥

エブエブ、最高でした!

現在Netflixでも公開されていますので、気になる方は是非ご覧ください。

お読み頂きありがとうございました。

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