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財前ぜんざい@オリジナル小説
2021年9月29日 23:29
気を取り直したように、雅臣は私に説明し始めた。「他の憑依者はここに住んでるんだよ。ここは組織の本部でもあり、憑依者の寮なんだ」 彼らの姿を見送った雅臣が、私に教えてくれた。「ここにいれば家賃はかからないんだが、なんせ住んでる人間たちが特殊な奴らばかりだ。だから俺と清水はここを出た。亜理や晃も」 私は今の彼らを見て、雅臣と清水がここを出た理由が分かった。もし私がここに住めと言われて
2021年9月20日 21:32
「佐々木、清水がよろしくって言ってたぞ」 雅臣が清水の言葉を伝えると、彼は呆れたように笑った。「直接言えって伝えろ。誰のお陰で身体提供者になれたと思ってるんだ」 雅臣の近くに来た男は、雅臣よりも背が高かった。スリムな体型だったので、遠目ではそこまで大きく見えなかったが、近づいてきた男は思った以上に大きく、私は首が痛くなるほど見上げた。「俺は伝書鳩か」 雅臣は眉間に皺を寄せて、男に不満の表
2021年9月2日 20:24
雅臣の運転する車に乗り、彼らに連れて来られたのは、東京駅近くの大きなビルだった。 私はこの近辺に訪れたことがある。夢と希望を持って上京したとき、私が初めて降り立った駅が東京駅だった。 彼らの組織の本部だというビルは、人目を嫌うように外壁も窓も黒く、数社の企業が入っていてもおかしくないほど大きなものだった。 私はビルを見上げ、雅臣に尋ねた。彼はこのビルには自分たちの組織しか入っていないと答え
2021年3月6日 18:52
翌朝、目が覚めると、昨夜の感情は嘘のように消えていた。カーテンの間から入り込む日の光が心地よいと感じるほど、私の心は穏やかさを取り戻していた。 そして、昨夜、自分が寂しさから雅臣に電話をかけたことを思い出し、恥ずかしさで頭を抱えた。 なんてことをしてしまったのだろう。愚かすぎる。私は雅臣の声を聞くことだけを目的に、電話をした。意味のない電話なんて、相手への好意を示しているようなものではないか
2018年8月19日 23:20
道場の中央に集まった雅臣と清水、亜理と晃は、互いに向かい合い、手合せをする上でのルールを確認しているようだった。 私と圭は道場の隅で体育座りをして、彼らの様子を眺めていた。私がこの手合せを傍観するのは分かる。だが、圭も私と同じように端で見ているだけというのは、あまりにも寂しすぎる。「あの……圭さんは」 思い切って、聞いてみることにした。「その、つまらなくないですか? 見てるだけだな
2017年5月27日 00:14
彼と河川敷へ夕日を見に行ったのは、たった一度きりだった。のちに私は彼から別れを告げられる。 私は彼を忘れるために、彼の好きだった茶色の髪を黒く染めた。彼の好みに合うよう、今まで髪を染めていたのだ。自分の茶色の髪を見ていると、彼の理想に近づきたいと努力していた自分が、容易に思い出された。 だから髪を真っ黒に染めた。塗りつぶすように。 着飾ることもやめた。彼の隣で輝くという目的を失った私は、