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オリジナル小説「アスタラビスタ」

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人を殺めようとした紅羽を止めたのは、憑依者と呼ばれる特殊体質の男だった。キャラが憑依し合うヴィジュアル小説!
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#アスタラビスタ

アスタラビスタ 6話 part4

アスタラビスタ 6話 part4

 突然、部屋中にブザーが鳴り響いた。身体が固まった。電話や玄関の呼び出し音ではない、明らかに警報音だった。

どこで鳴っているのか目で追うと、パソコンの置いてあるデスクの奥に、小さな赤いライトが点滅する機械を見つけた。おそらく、その機械からブザーが鳴っている。

 ソファーで眠っていた雅臣は、ブザーで目を覚まし、飛び起きた。掛けていた毛布が舞い上がるほどの勢いだった。ぼさぼさの前髪は目にかかり、表

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アスタラビスタ 5話 part1

アスタラビスタ 5話 part1

 あれから動悸や吐き気、眩暈に襲われることはなくなった。不安になる要素もなくなり、抗不安薬を飲むのもやめた。

  本来あるべき健康な生活を、私は取り戻しつつある。しかしそれでも、心にぽっかりと穴が空いている状態は変わらず、未だ喪失感は消えない。

 雅臣と薙刀で手合せをした後、私は彼ら三人に問い詰められた。薙刀での私の動きが、ただならぬものであると感じたらしい。

 私は初めて、別れた彼

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アスタラビスタ 4話 part7 4話完結

アスタラビスタ 4話 part7 4話完結

彼と河川敷へ夕日を見に行ったのは、たった一度きりだった。のちに私は彼から別れを告げられる。
 私は彼を忘れるために、彼の好きだった茶色の髪を黒く染めた。彼の好みに合うよう、今まで髪を染めていたのだ。自分の茶色の髪を見ていると、彼の理想に近づきたいと努力していた自分が、容易に思い出された。
 だから髪を真っ黒に染めた。塗りつぶすように。
 着飾ることもやめた。彼の隣で輝くという目的を失った私は、

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アスタラビスタ 4話 part6

アスタラビスタ 4話 part6

「ねぇ、聞こえてる?」

 私は「聞こえているよ」と彼に返事をした。いくら風が吹いていても、こんなに近くにいるのだから、彼の声が聞こえないはずがない。

「寒くない?」

 彼は私の手の甲を優しく撫でた。彼の手はいつも汗ばんでいる。「汗、かいてるよ」と私が言うと、彼は「ごめん」と微笑み、洋服の裾で手を拭って、私の手の上に自らの手を重ねた。

 夕暮れが広がる空の下。私たちは河川敷の芝生に座ったまま

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アスタラビスタ 4話 part5

アスタラビスタ 4話 part5

 誰も動こうとはしなかった。まるで時間が止まったかのように、道場の隅で審判をしていた清水も、その様子を見ていた圭も、目を見開いたまま動かなかった。雅臣は面の中から私をじっと見つめていた。彼の瞳に、もう攻撃の意思はなかった。ただ、何が起きたのか、頭の中で今までの試合の流れを反復しているようだった。

 止めていた呼吸を、私は再開する。粗い息遣いが道場の中に響き渡った。もう、決着はついた。審判である清

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アスタラビスタ 4話 part4

アスタラビスタ 4話 part4

 私はメンを狙う。私の身体はスネを打った時の前傾姿勢を保つのが、今の筋力では難しい。そのため、雅臣にスネを狙われた時、防御も回避もできず、生身を打たせる結果となった。ならば、無駄な体力を使う必要はない。執拗にメンを繰り出せばいい。そして、おそらく、雅臣も私の動きを見て、私がスネを苦手としていることに気がついた。

「そうだ紅羽! 生意気な雅臣をぶっ潰せ!」

 応援にしては汚い言葉で圭が私に叫ぶ。

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アスタラビスタ 4話 part3

アスタラビスタ 4話 part3

 私は頭を働かせる。彼との今までのやり取りを、私は分析する。

 ある程度予想はしていたが、彼の力は私とは比べものにならないほど強い。想像より遥かに打撃が強かった。なるべく彼の技には触れたくない。薙刀で受けるのも危険だ。あの重たい一撃を薙刀で受けたとして、もし連続技で立て続けに違う場所を狙われたらどうする? 重い一撃を受けてから彼の速い攻撃を防ぐには、今の私では防御が追いつかない。彼のペースにはま

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アスタラビスタ 4話 part2

アスタラビスタ 4話 part2

 単純な技だけでは、彼に勝つことはできない。何か大きな作戦を組み、時間をかけてそれらを敷いて行かなければ、勝利に辿り着くことはできないだろう。

 あぁ、なんでこんな時に。

 また動悸がした。強いものではなかったが、少し気を緩めば先ほどのように呼吸が苦しくなるような気がした。

 なぜ、なぜ私は、いつもこうなるのだろう。何かをしようとした時、必ず私の心臓は邪魔をする。私の心臓は私の行動を制限する

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アスタラビスタ 4話 part1

アスタラビスタ 4話 part1

「よし、紅羽。準備はいいか?」

 面をつけて立ち上がり、薙刀を持つと、私は十二メートル四方のコートに足を踏み入れた。まだ動悸がしている。苦しい。面をつけた視界は狭くなり、顔を守っている面金はまるで牢屋の鉄格子のように見えた。

 コートには先に雅臣が準備をして待っていた。防具を付けた長身の彼は、やはり迫力がある。薙刀を本格的にやっていた現役時代の頃、私は何度か男子と手合せや試合をしたことがあった

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アスタラビスタ 3話 part8 3話完結

アスタラビスタ 3話 part8 3話完結

 準備体操を終え、道場の隅で防具を付け始めた私は、既に顔から血の気が引いていた。少し身体を動かしただけで、動悸と冷や汗が止まらない。道場の床に座っているというのに、地面が揺れ動いているように感じた。こんな状態で、本当にできるのか。不安が大きく私の心を支配していく。

「そうだ! 雅臣が言ってた『剣道の防具じゃ足りない』って、一体何が足りないんだよ!」

 道場の真ん中にいた圭は、私にではなく向かい

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アスタラビスタ 3話 part7

アスタラビスタ 3話 part7

 稽古着に着替えて戻ってくると、圭が道場の中を裸足で意味もなく走り回って遊んでいた。その様子は、到底同い年とは思えないものだった。

「お! 紅羽が戻って来た!」

 圭が走り回っているスピードのまま、私のところへ駆け寄って来た。

「それが薙刀の道着かぁ! 袖、剣道の道着に比べて短いんだな!」

 指摘され、私は自分の腕に目をやる。半袖の道着にはゴムが入っており、二の腕で自由に調節できる。

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アスタラビスタ 3話 part6

アスタラビスタ 3話 part6

「ここは区営体育館だ。武道場は地下一階。第一武道場は畳だから、俺たちは板張りの第二武道場を一般公開で使う」

 雅臣と私が訪れたのは、彼らのマンションからほど近いところにある区営体育館だった。とても新しいとは言えず、外壁は所々剥がれていたが、温水プールもあり、設備は充分整えられているようだった。

「い、一般公開ってなんですか?」

「要するに団体貸し切りじゃないってことだ。この券売機で券を買えば

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アスタラビスタ 3話 part5

アスタラビスタ 3話 part5

 手に持っていた書類を机に置き、立ち上がった雅臣は清水を見下ろして言った。

「清水。疲れてるところ悪いが、圭と一緒に組織まで行って、薙刀と防具を持って来てくれないか?」

 頼まれた清水は口を開けたまま「う、うん」と頷いた。しかし、返事はしたものの首を傾げ、雅臣が何を考えているのか理解しきれていないようだった。

 私も何が起きているのか分からなかった。突然で脈絡もなく、察することもできない。す

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アスタラビスタ 3話 part4

アスタラビスタ 3話 part4

「ただいま。紅羽連れてきたぞ!」

 結局私は彼らのマンションへと来てしまった。

 圭は履いていたスニーカーを乱暴に脱ぎ捨て、部屋の中へと入って行った。私も続いて靴を脱ぐ。屈んで自分の靴を揃えると、脱ぎ捨てた圭のスニーカーが目に入った。靴が玄関に散らばっているのを知っていて、このまま部屋の中へ入っては、私の品格が問われるような気がした。仕方なく奴の靴に手を伸ばす。触ると生温かかった。

 気持ち

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