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フィンランド記

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【全文訳】 公共イノベーションラボ(公共組織内デザインチーム)はいかに正統性を確立するか?―ダイナミクス、アプローチ、知識創造

IASDR(国際デザイン学会連合)カンファレンスで2023年10月に発表した森一貴および岩嵜博論による共著論文「How do PSI Labs establish legitimacy?: Dynamics, approaches, and knowledge creation(PSIラボはいかに正統性を確立するか?―ダイナミクス、アプローチ、知識創造)」がオンライン上のプラットフォームに掲載され

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「わからなさのデザイン」イントロダクションを公開します。

「わからなさのデザイン」イントロダクションを公開します。

先般2023年5月28日、アールト大学デザイン修士課程の修士論文「Design within Uncertainty: Gathering, generative process, unexpected event」を提出しました。ともにわけがわからなくなってゆくための、「わからなさのデザイン Design within Uncertainty」について探索した論文です。そのイントロダクション(日

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リーダーもマネジャーもいない、フィンランドのデザインエージェンシー

リーダーもマネジャーもいない、フィンランドのデザインエージェンシー

今日はヘルシンキのデザインエージェンシー・Reaktorへ遠足に。

・企業紹介にビジョンもミッションも出てこない(し、社員も知らない)
・株は社員内でシェア
・案件は社員の興味・関心で決まる
・ほぼ完全にフラット。リーダーも部長もプロマネもいない。

と、なかなか尖った話を聞かせてもらいました(ちなみにホラクラシーだねえ〜と言ったら、なにそれ?と言われた)。

Reaktorは'00に設立された

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近況報告:フィンランド公共領域におけるデザイン組織の展開とそのエコシステムに関するリサーチをしたり

ちょっとした報告。

最近はフィンランドの公共領域における、デザインや共創など新たなアプローチの展開とそのエコシステムについてリサーチを行っています。

この領域においてはイノベーションファンドであるSITRAが最も有名だと思いますが、他にもヘルシンキ市は2012年にワールドデザインキャピタルに選ばれて以降、ヨーロッパ初のChief Design Officerを採用し、行政内にデザイン組織を持っ

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さらさら。くしゃくしゃ。ぺこぺこ。

異なる言葉を使っていると、言葉のことを考える。

日本語で表現できない"かんじ"を表現できたとき、あ、少しだけ英語ができるようになった、と思う。It really matters(それが重要なんだよ). とか。it depends(それは状況によりけりだね). とか。

同時に、自分が英語で表現できないもののおおきさを感じる。お腹ぺっこぺこ!って、言いたい。きっともちろん英語でだって、留学生同士の

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わたし、あなた、よわさ vulnerability

「みんなで舞台に立とう」の取材に行ったときのことを思い出す。

こうすべき、ではなくて、自然とそうであること。いやなことはいやであり、恥ずかしいときは恥ずかしいのであり、楽しいときは楽しいと表現すること。それを隠して、よく振る舞うことが「社会的である、社会性がある」と見なされる世の中。おそらく、そうではないこと…感情がそのまま表出してくることは、Vulnerableだ(ここではそれを"よわさ"と呼

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思考のスタディ:日本と顔文化

*このnoteはまだわからないことをとりあえず書いてみる用のnoteです。コメントなど、なんらかの形で感じたこと、思ったことを届けて頂けるとより嬉しいです。

日本は顔文化だなと思う。

*

これはフィンランドに来てから初めて気づいたこと。上記の元ツイートで指摘されているような「農家が顔を差し出さければならない」ことをはじめ、なにかしら「親しみ」「あたたかみ」を示すことが求められる際に、日本では

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アアルト大学大学院デザイン修士課程(CoID)では何が学べてどんな感じなのか書く

アアルト大学大学院デザイン修士課程(CoID)では何が学べてどんな感じなのか書く

はじめまして、フィンランド・アアルト大学(Aalto University)の大学院にて、Collaborative and Industrial Design(協働・工業デザイン)の修士課程に在籍(2021-2023)している森一貴です。

デザインスクールはイギリス・アメリカの大学群(RCA、パーソンズ、MIT…)がランキングのトップ層を独占します。が、アアルト大学はその中でも、イタリアのミラ

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こおろぎ

もうすぐフィンランドに来てから一ヶ月が経つ。一ヶ月経ってからこの言葉を使いたかったけれど、まだ来て3週間だ。

一人でいるときはずっと考えごとをしているので、一ヶ月ほど、僕は長い時間、考えごとをしていることになる。仕事が忙しいときなんかもそうだ、世界を溶けるように捉えるではなく、分けるように分けるように捉えていく。その2つの捉え方の性質は実のところ、実数空間と虚数空間くらい違っている。実はこちらに

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非指向型(non-oriented)世界と未来予想試論

海外留学の授業前から、Pre-assignmentとして、400語くらいの文章をつくりなさいみたいなお題が出たんだけど、いきなり「未来の主要な要素はなんですか」みたいな問いで、マジメに悩み込んでしまった。

色々考えた結果、やはり非指向型(non-oriented)世界観へのパラダイムシフトが極めて重要な気がしてきた。

non-orientedについては以下に(漢字、自分の中でまだ定まってない)

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ポーランドと戦争 / ワルシャワ記録

ポーランドと戦争 / ワルシャワ記録

ポーランドと戦争200万人のウクライナ人ポーランド、個人、コミュニティ、政府

ヘルシンキから見るストックホルム / ストックホルム記録

ヘルシンキから見るストックホルム / ストックホルム記録

Walkable Cityストックホルムのインターナショナリティスウェーデンのジェンダー

アアルト大学でまなんでいる3つのこと―多元論的デザイン、社会変容のためのデザイン、サービスデザイン&UX/UIデザイン

アアルト大学でまなんでいる3つのこと―多元論的デザイン、社会変容のためのデザイン、サービスデザイン&UX/UIデザイン

こんにちは。フィンランド・アアルト大学(Aalto University)の大学院にて、Collaborative and Industrial Design(協働・工業デザイン)の修士課程に在籍(2021-2023)している森一貴です。

本記事の目的以前、アアルト大学への出願を検討されている方に向けた記事を書きました。しかし、内容が仔細にわたる割に、結局森自身が何をまなんで(まなべて)いるのか

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"あいだ"にある国家、フィンランドとウクライナ

"あいだ"にある国家、フィンランドとウクライナ

2月24日のほぼ同時刻、フィンランドの首相サンナ・マリン氏および大統領のサウリ・ニーニステ氏は、ウクライナへの侵攻を強い言葉で非難する投稿を行った。

フィンランドにとって、現在ウクライナで起きている出来事は、決して対岸の火事ではない。

以下の図を見てみよう。青色がNATO加盟国である。ご覧の通り、フィンランドは2022年現在、隣国スウェーデンとともに、NATOには加盟していない。

ロシアが戦

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